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『雪鳥』
R7.1.17
雪鳥や空は青いがなにもない
井上れんげ
青空より降り雪鳥となりにけり
中岡秀次
降り残す根方を雪鳥の番ひ
板柿せっか
雪鳥やほんのり飢ゑて器量よき
長谷川水素
雪鳥の雪を叩いて争へり
多々良海月
雪鳥に追ひ払はれて雪鳥は
小野更紗
雪鳥や小さき方を己とす
未茂李座
雪鳥の雪のにほひにふくらみぬ
きのえのき
雪鳥に告ぐ旨い実は右の木ぞ
さおきち
雪鳥の雪掘る嘴の雪まみれ
にゃん
雪鳥の眼の真中より昏くなる
古瀬まさあき
雪鳥の渦に漂白されたる死
古賀
雪鳥のしづかに飢ゑて淡き熱
常幸龍BCAD
雪鳥や火薬めきたる飢ゑに熱
熊の谷のまさる
雪鳥や戦はうたを紡げない
つまりの
雪鳥と雪とはつまり詩人と詩
司啓
雪鳥の群れは寂しき野の明かり
陽光樹
R7.1.24
雪鳥が鳴つてしなつて樹は楽し
おかまごはん
雪鳥やスタッカートは弱く跳ねる
しいちゃん
雪鳥の集ふ小さき古墳かな
飯村祐知子
雪鳥の束の間神籬の日向
沢拓庵
日だまりに雪鳥といふ飢渇かな
伊藤映雪
雪鳥のひかり滴らせつつ飢う
七瀬ゆきこ
雪鳥の渇きしままに眠りけり
山本先生
雪鳥や誰とも会はぬ日を三日
中島容子
遠くに雪鳥効かないロキソニン
花豆
雪鳥の啜る樹液のひかりかな
樋口滑瓢
みづ清し水鳥の喉通るとき
ひそか
雪鳥やひかりに塗れゐて濡れず
凡鑽
雪鳥を散らし重機は動きをり
無敵なおき
被災地やひしやげた桶と雪鳥と
富山の露玉
『天』
ひかり噴くやうに雪浴びの雪鳥
三月兎
教え・・・季語を立てるとは(R7.1.23 『一句一遊』虎の巻より)
他の季語だと成立しないか(季語が動かないか)を考える。
【例句】
雪鳥やスマホのズーム8止まり
田辺ささのは
・他の鳥(翡翠や白鳥)では成立しないか。
雪鳥やリュックに母の塩むすび
月夜田しー太
・この十二音の措辞を活かすのに、絶対に揺るがない季語となっているか。(遠足や花見ではどうか)
雪鳥や宿題はまだやってない
ユキト
・(冬休・夏休など)他の季語も入りそうだが、作者の現実と季語との出会いの一場面を表現することも悪いわけではない。
雪鳥や俺はポテチを食べている
かつたろー。
・雪鳥の本意(冬山に食べるものがなくなって人里に降りてくる鳥)に立ち返るのも重要。雪鳥と自分との対比が生まれるため、雪鳥との取り合わせに理由がある。
雪鳥や今年抱負は思いやり
日進のミトコンドリア
・観念として、季語以上に所信表明の方に句の軸がおかれている。
【銀曜日】
雪鳥よ嘴痛し脚痛し
白山おこ女
・雪鳥をまさに描写している
雪鳥のこゑみちのくをふるはせず
稲畑とりこ
・厳しさの中で飢える雪鳥らしさを立てている。