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『寝酒』

『寝酒』
R6.12.6
寝酒ぐいと淋しき夜の入口に
          窪田ゆふ
テレビ消し監督辞めろと寝酒注ぐ
          平山灰海
碁に負けし寝酒の義父をなんとせん
          湯屋ゆうや
酒飲まぬ石屋の父の寝酒かな
          幸田梓弓
寝酒干す次男のことを忘れたい
          世良日守
五十の恋肩肘付いたまま寝酒
          広島じょーかーず
優しさが甲斐性なしの我が寝酒
          甘泉
寝酒待つ妻の長湯は今日もまた
          大型犬の夫
寝酒かな夫に内緒で金貸して
          西川由野
寝酒沁むまた謝ればすむだろう
          江口朔太郎
寝酒してどうせ眠れぬ夜を洗ふ
          木ぼこやしき
愚痴る汝の寝酒の杯を洗ひやる
          稲畑とりこ
ともかくも屋根ある暮らし寝酒せり
          綾竹あんどれ
よく生きてよく働いてよい寝酒
          なしむらなし
佳き日なり小さく寂し寝酒注ぐ
          舞茸ご飯
寝酒てふ火種真暗き胃の底へ
          靫草子
孤独てふ穴へ寝酒を注ぎけり
          家守らびすけ
R6.12.13
寝酒呑む風が耳底ことことと
          鹿本てん点
風ばかり荒ぶる夜の寝酒かな
          彩汀
アトピーが煮え滾るほど浸む寝酒
          阿野泰己
小児病棟の売店に買ふ寝酒かな
          ナノコタス
寝酒ちびちびB寝台は背に硬し
          にゃん
消灯の車窓寝酒のスキットル
          中村くまねこ
トラックの中や寝酒の金曜日
          ユキト
交代の珈琲交代の寝酒
          珊瑚霧
九龍の夜景寝酒のグラスかろん
          久森ぎんう
月はもう熟れただらうか寝酒酌む
          三月兎
我が世とぞ思ふ寝酒を満たすとき
          澤村DAZZA
孔明の北伐寝酒の養命酒
          凡鑽
放哉になれず寝酒の一含み
          沼野大統領
こんな日はきつと漱石でも寝酒
          のなめ
寝酒すこし谷川俊太郎すこし
          西野誓光
ふと寝酒欲しき向田邦子かな
          めろめろ
寝酒かよ太宰気取りの下宿人
          三隅涙
『天』
寝酒せむ山幸彦が泣くやうに
          宵嵐
ツナ缶へ注ぐ寝酒の万年床
          ツナ好

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