読書記録_003【花の魔法、白のドラゴン】
◆ 詳細
出版社:徳間書店
著者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
訳者:田中薫子
【出版社URL: https://www.tokuma.jp/book/b503137.html 】
◆ ポイント
・イギリスに似た異世界が舞台
・「ハウルの動く城」の原作者の作品
・少し厚みのある本だが、ジョーンズ作品が好きな方や英国ファンタジー好きであればすぐに物語や世界観に没入できるので無問題。
◆ 感想
以前に読んで、久々に読み返した。
個人的に確信しているのだが、やはり英国ファンタジーの女王はダイアナ・ウィン・ジョーンズだ。
異論はあるかと思うが、チェスになぞらえるなら、キングは問答無用でトールキン、ナイトは「果敢に英国ファンタジーを世界中に知らしめた」という意味でJ・K・ローリングだと個人的に思っている。
ジョーンズ氏は女王であると同時に魔女でもある。
好きすぎて感想が迷走してしまって申し訳ないが、魔女でなければこんな物語を描けるはずがない。
この物語で好きなところはたくさんあるが、とくに主人公のロディが魔法を継承する部分の描写が特に素晴らしい。
他人には説明の難しい脳内や思考のイメージを、作者はロディの口を借りてコンピューターのファイルになぞらえ「ファイルひとつひとつに花の名前がついている」とのたまう。読者の脳内スクリーンに一瞬のうちにそのイメージを映し出してしまう語り手の手腕は、魔女の魔法のようである。
ロディが受けついた魔法(ファイル)の中には悪い魔法も存在する。しかしそれは「だれかに悪い魔法を使われたときにどう対処したらいいかの参照用」である。
善い魔法使いとして生きていくために、善い魔法だけを知っているだけではいけない、というのは、なんだか我々魔法を使えない現代人にも共通してはいないか。実際に詐欺を行うわけではないけれど、詐欺の方法を知っていれば対処できるのと同じように。
ああ、こちらの世界もあちらの世界も同じなんだな、と思わせてくれるのも、ファンタジーの世界に没入させてくれる魔法の一つなのかもしれない。