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読書記録_001【香料の都PETRA 薬草療法士ライラの物語】
◆ 詳細
出版社:フレグランスジャーナル社
著者:ワンダ・セラー
訳者:バーグ文子
【出版社URL: https://www.fragrance-j.co.jp/book/b470586.html 】
◆ ポイント
・比重としては【ストーリー≧世界観>登場人物】
・紀元前3世紀頃のペトラ(ヨルダンの世界遺産)史実をもとにしたフィクション(創作)
・たぶんファンタジー小説やRPGが好きで、中東の文化や歴史、薬草、ハーブ、アロマテラピーに興味がある人にはグッとくる内容。
・冒頭のエピソードと結末の繋げ方がかなり秀逸。(飛ばし読みや結末だけ先に読むのは絶対に止めた方がよい)
◆ 感想
普段はアロマテラピーや自然療法、美容に関する出版物を扱っている出版社から発行された異色の小説。
出版経緯は分からないが、著者のワンダ・セラー氏が同社からアロマテラピーや香料関係の書籍を出している。しかし畑違いともいえる小説でここまで壮大な物語を紡げるとは驚きで、かなり綿密な取材と強い思い入れがあってこそのものだろう。
訳を担当されているバーグ文子氏もアロマテラピー関係の学校や翻訳で活躍されている。今回は小説だが、全体を通してとても丁寧で美しく、読みやすい翻訳だと感じた。
内容的にはご都合主義的な爽快感はなく、主人公の波乱万丈な人生に胸が痛み、時に非常にハラハラさせられる。だが「自分の行いは良いことも悪いこともきちんと返ってくる」「人生には何事も意味がある」というテーマが個人的にとても好感だった。
冒頭でライラが盗んだトパーズは、彼女を予期せぬ長い長い旅へといざなう。読み終えた後、自分も長い長い旅を終えたような気分で心地よい疲労感と達成感があった。
ヨルダンのペトラ遺跡といえばエル・カズネ(宝物殿)が映画「インディー・ジョーンズ/最後の聖戦」でロケ地になったのは言わずもがなであり、自分もいつか海外旅行で行ってみたい土地の一つである。
旅行による移動や人との関わりが制限されている今だからこそ余計に、異国情緒と香料の香りが漂う物語に存分に溺れることが出来た。