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"産まない"と"産めない"は違う。治療と妊孕性のジレンマ。

どうも。むぎちゃです。

病院実習を回っている中で心に刺さった言葉があったので、それについて語っていこうと思います。


生殖医療について学んでいる際、
先生が患者さんに妊孕性(妊娠できる機能をのこすかどうか)についてのお話をする場面に立ち会いました。

患者さんは20〜30代女性で未婚。
がんでした。

しかし、治療が進むにつれて妊孕性は低下していきます。
最悪の場合、妊孕性が残されないこともあります。

女性の卵子の数は決まっており、
お母さんのお腹の中にいる時からどんどんと減り、
残りが1000個を切り始めると閉経します。

閉経すると排卵しなくなるので、
卵子凍結や卵巣凍結などを行っていなかった場合
妊娠はできなくなってしまいます。


患者さん本人は
今は治療で頭がいっぱいという様子でした。

卵子凍結や卵巣凍結は今は保険が効かず、
自由診療となります。

凍結するだけでなく、検査や保存も全て自費です。

治療がある程度完了するまで妊娠許可が出ないので、ある程度の年数、保存更新料を払い続ける必要があります。

がんの種類や妊孕性温存の方法によっては
再発リスクがあったり、
がんの治療をSTOPさせなければならなかったり
(死亡リスクも上がる)、
やっても効果がなかったり
確実なものではありません。

自費。つまり、自由なのです。

自由とは残酷なもので、選んだ責任を
自分自身に感じてしまいやすい
のです。


先生は患者さんに伝えました。

どうするかは自分の自由だ。
今はいらないと思っているかもしれない。
けれど、"産まない"ことと"産めない"ことは似てるようで全然違う。
あとで自分の選択に納得できるようによく考えてきてください。

子供を欲しいと思ったことがない人、
既に子供がいてもう十分だと思っていた人でも
いざ、絶対にもう妊娠できない状況になると
産みたいと思ったりするものだそうです。


更年期に突入している母でさえも、
産みたいと思ってしまうかもしれないと言っていました。


しかも、この患者さんは20〜30代
周りが結婚していき、子育てをしていく。
病気のせいで、ただでさえ皆んなと違う状況だというのに
治ってからも一生自分ががんであったことに向き合い続けなければならない。

医者に求められるのは
単に説明した今この瞬間、納得できているか
だけでなく
患者さんが一生、納得して生きていけるか
に向き合うことなのでしょう。

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