ハルムス「水色ノートNo.10」
赤毛の男がいた。男には目も耳もなかった。髪もなかったから、赤毛の男とさえ言えないかもしれない。口もなかったので話すことができなかった。鼻だってなかった。
手も足もなかった。腹もなく背中もなく背骨もなく、内臓もこれっぽっちもなかった。なんにもなかった! だからそもそも誰の話をしていたのかよくわからない。
もうこの男について語るのはやめにしよう。
1937
赤毛の男がいた。男には目も耳もなかった。髪もなかったから、赤毛の男とさえ言えないかもしれない。口もなかったので話すことができなかった。鼻だってなかった。
手も足もなかった。腹もなく背中もなく背骨もなく、内臓もこれっぽっちもなかった。なんにもなかった! だからそもそも誰の話をしていたのかよくわからない。
もうこの男について語るのはやめにしよう。
1937