ひやむぎ、お江戸に行く~2日目~
どうも、私です。
今日は、「姉妹揃って、異界送りされた話」をします。
いえゆい のぼめの れんみり よじゅよご
はさてかなえ くたまえ
めちゃくちゃ長いです。
お付き合い下さい。
(↓前回はこちら)
◆
父と姉が、ドハマりしたRPG。
それは、『FINAL FANTASY Ⅶ』だった。
2人は休日になると、それぞれにプレイし、どこまで物語が進み、どんな召喚獣を手に入れたのかを競っていたりもした。
まだ幼かった私には話が理解できなかったけど、父と姉の真剣で楽しそうで、キャラクター達と一喜一憂する姿がとても印象に残っていた。
それを皮切りに、父はⅦ~Ⅸ、姉はⅥ~Ⅹ-2、Ⅻをプレイ。
そして、2人のプレイする様子を見ているだけだった私も、大人になって、Ⅵをプレイした。
(↓私の奮闘記は、こちらのマガジンからどうぞ(突然の宣伝))
そんな日々を過ごす私達に、1番の衝撃を与えたのが、『FINAL FANTASY Ⅹ』。
CG技術が向上したのもあって、映像が今まで以上に綺麗。
何より、キャラクター達が喋る。
こんな経験は、初めてだった。
姉が1番好きだというのも、Ⅹだ。
姉「物語性も含め、全部が美しいし、泣いちゃう」
と何度も言っていた。だから、今回上演される新作歌舞伎のチケットを取ろうと思った。
「とはいえ、東京ですからね。当たればラッキーくらいの気持ちでいいでしょう」
の結果が、あの姉妹大爆笑事件だったわけだけど。笑
というわけで迎えた(?)、2日目の朝。
人生初のゆりかもめに揺られること、数分。
姉「おー……」
私「辿り着きましたな……」
風にたなびく出演者の皆様の名前が書かれた幟。
出迎えるように貼りだされたポスター。
それらを記念に撮影する人達。
本作上演を持って、ラストシーズンを迎える『IHIステージアラウンド東京』は活気に満ちていた。
私達もポスターや幟を撮影し、チケットを受け取った後、会場の中へ入った。
今回の劇場は、360度客席が回転するのに合わせて、作品が展開される。
なので、客席は円形に設置され、それに沿う形で舞台があった。
私「あっ!」
姉「これは!」
円形の客席と舞台の間を遮る幕のように設置されたモニターには、キャラクターデザインを手がけた野村哲也さんによるオリジナル描き下ろしのイラストが表示されていた。今回の『FFⅩ歌舞伎』に合わせた、和装のメインキャラクター達が描かれていて、会場に入った人達はそれぞれにため息を漏らし、記念に撮影していた。
私達姉妹も、最初で最後かもしれない本作の思い出にと、撮影し、その時が来るのをじっと待った。
前編・後編(休憩時間含む)通しで、9時間を要する超大作。
幕が開いた先に待っていたのは、姉がプレイするそばで何度も見ていたザナルカンド、そしてスピラだった。
※ここからは、ネタバレによる異界送りにご注意下さい。
23代目オオアカ屋による歌舞伎講座
開幕して間もなく、「オオアカ屋!」という大向うが響く中、23代目オオアカ屋(中村萬太郎さん)が登場。
姉「本物だ!!!!!」
その立ち振る舞い、話し方が完璧すぎて姉の期待値が爆上がりする中、
「歌舞伎を見たことある人ー?」
「FFⅩをプレイしたことある人ー?」
「どちらも、今日が初めての人ー?」
と質問され、客席では私達を始め、全員が各々の該当する質問に手を挙げた。
その後、オオアカ屋が口上役として本作の概要を説明した後、歌舞伎を見るときのポイントを丁寧に説明。
「見得は、こうやります」
「この音は、ばったりと言います」
「見せ場では、思いっきり拍手しましょう」
最後にオオアカ屋によるお手本の後、客席で全員揃って見得を切ったとき、よく聞く「ばったり」というツケの音がついて感動した。
これで、私も歌舞伎役者です。←
再現度がやはり高すぎる出演者の皆様
今から、『シネマ歌舞伎』で鑑賞した『ナウシカ歌舞伎』、『ワンピース歌舞伎』と全く同じことを言おうと思う。
スゥーーーーー……(吸)
実写化を企画するときは、『FFⅩ歌舞伎』を見てからにしようぜ!!!!!
…言うたった。
デッカイ声で言うたった。
だってさ、
ティーダ(尾上菊之助さん)は活発で表情豊かだし、
ユウナ(中村米吉さん)はとにかく可愛いし、
アーロン(中村獅童さん)は渋いし、
シーモア(尾上松也さん)は歪んでるけど哀れみがあるし、
ルールー(中村梅枝さん)は色気がある姐御だし、
ワッカ(中村橋之助さん)は声から何からワッカすぎてやめれって感じだし、
リュック(上村吉太朗さん)がユウナのこと、「ユウナん」って呼んでるの最高すぎるし、
キマリ(坂東彦三郎さん)は通さないし←。
何なんだよ、この作品。
全員、本物じゃないか!!!!!
それだけならまだしも(?)、
シド(中村歌六さん)は最高の『トタギ』だし、
ブラスカ(中村錦之助さん)はやっぱり優しい父親だし、
ジェクト(坂東彌十郎さん)は強くて不器用な父親だし、
ユウナレスカ(中村芝のぶさん)はひれ伏すレベルで美しいし。
幼少期のティーダと祈り子(尾上丑之助さんの一人二役)は可愛いけどミステリアスな雰囲気もあるし。
何、この人達。
ゲームから、そのまま飛び出して来たんか!!!!?
そう思うくらい、全員がはまり役だった。
シーモア役の松也さん、ワッカ役の橋之助さん、キマリ役の彦三郎さんは、
「仕草は分かるけど、声まで似ているの凄くない!?」
と何度も思うくらい、本物だったし(?)。
ユウナ役の米吉さん、ルールー役の梅枝さん、リュック役の吉太朗さん、シェリンダ役の上村折乃助さんは、姿や声が可愛くて女方であるのを忘れるくらい女性だし(褒めています)。
ユウナレスカ役の芝のぶさんに関しては、
「え、歌舞伎の舞台って女性が立つのOKだった?」
と確認したくなるくらい、姿、声、仕草の全てが女性だった(褒めています)。
あと、忘れてはいけないのは、ユウナレスカの父であり、ティーダが生まれ育ったザナルカンドに大きな影響を与えた存在。
エボン=ジュ!!!!!
姉「菊五郎さんは、エボン=ジュだよ。絶対。賭けてもいいね!」
と姉は観賞前、菊之助さんのお父様である尾上菊五郎さんが声の出演をすると聞いたとき、エボン=ジュの独特な動きを手で再現しながら言っていた。
そして、その予想は当たっていた。
エボン=ジュが姿を現し、その声が響いた瞬間、鳥肌が立った。
賭けに勝ったのは、姉だった(?)
様々な父子の形
この作品には、
ジェクトとティーダ
ブラスカとユウナ
シドとリュック
ジスカル(澤村國矢さん)とシーモア
エボン=ジュとユウナレスカ
というように、様々な父子が登場する。
ジェクトとティーダの対決では、涙した人もいると思う。
そんな中、本作ではジスカルとシーモアの父子関係がゲーム以上に深掘りされていて、この場面に関しては、シーモアに同情せざるを得なかった。
私「ジスカルのこと、殴りたい」
姉「分かる」
という感想が出るくらいに、ジスカルの振る舞いによって翻弄されるシーモアと母(中村蝶紫さん)が見ていてつらかった。
そりゃ、世界のことを恨みたくなるよな。
ただ、しつこいけど←
そして、ここまで思わせる演技をなさったジスカル役の國矢さんは、凄い。
召喚獣
『FFシリーズ』に欠かせないもの。
それは、召喚獣。
本作では、シーモア戦に映像演出で一斉に登場した後、
ヴァルファーレ(澤村國矢さん)
イフリート(中村吉兵衛さん)
イクシオン(市川鳶之助さん)
シヴァ(尾上菊史郎さん)
バハムート(尾上菊次さん)
ヨウジンボウ(中村橋吾さん)
が召喚獣戦で獅子物をモチーフとした姿で登場。
彼らが生まれた由来や特徴が散りばめられた義太夫・長唄に合わせて、『毛振り』が見られるのだが、生の迫力に圧倒された。
また、イフリートとリュックが見せた『百回り』と『海老反り』も迫力が満点で、歌舞伎の醍醐味がこれでもかと盛り込まれていて、凄く感動した。
生って、やっぱり凄い。
あと、我が家で1番人気のあるシヴァが、「ダイアモンドダスト」の一言に合わせて、指をパチンと鳴らす仕草を見せたときは倒れるかと思った。
ありがとうございます←
姉は、ヨウジンボウが「好きな言葉は心づけ」と唄われるのを聞いて、思わず笑ったらしく、
姉「初めてプレイしてるときに、心づけのシステムを知ったときはコントローラーを握りしめて、は?って言っちゃったよね」
と思い出を話していた。
私も、「は?」って言うんだろうな。笑
衣装、音楽、演出が最高すぎて吐く←
今回は歌舞伎なので、登場人物達が和装で登場するのだが、
全員、ピッタリすぎ!!!!!
アーロンのサングラスを眼帯にしたり、アルベド族であるリュックとシドの特徴である渦巻模様の瞳を着物のデザインに取り入れたり、キマリの隈取に金色が取り入れられていたり、ユウナの着物の袖がキラキラしていたり。
衣装、メイクをデザインした人、天才!!!!!
あと、音楽。
オープニングでの『ザナルカンドにて』
異界送りでの『祈りの歌』
マカラーニャの森にある聖なる泉での『素敵だね』
など、物語を彩る音楽が和風にアレンジされているのがとても良かったのだが、1番ド肝を抜かれたのが、『Otherworld』。
ゲームでは、冒頭のブリッツボールの試合で流れるデスメタル調の曲。
私はこの曲がとても好きなのだが、和風にアレンジできるとは正直思っていなかったので、
私「どうするのかな」
姉「どうするんでしょうね」
私「お囃子さんが、唄うのかな」
姉「喉が死ぬでしょ。笑」
私「ぃよーっ!Go on, if you want it ♪」
姉「死んじゃう、死んじゃうwwwww」
私「wwwwwwwwww」
と観賞前に笑っていた。すると本作で、シーモア対アーロン戦では、伴奏が。ユウナレスカ対アーロン戦では、ゲームと同様に歌唱版が流れたのだ。
\Go on, if you want it ♪/
姉、私「!!!!!!!!!?」
不可能だと思っていました。
ごめんなさい。
また、『祈りの歌』も、
『いえゆい のぼめの れんみり よじゅよご
はさてかなえ くたまえ』
と異界送りの場面では流れるのだが、夢のザナルカンドで歌われるときには、
『祈れよ エボン=ジュ 夢見よ 祈り子
果てなく 栄え給え』
と歌詞に隠された本当の意味に直したバージョンの歌詞になっていた。
だから、天才かって!!!!!
そして、演出。
映像、光の使い方が凄まじかった。
異界送りは、先行公開されていた映像以上に幻想的に表現されていて、ユウナが段々と浮いていく様子がとても美しく、本当にゲームで見た異界送りの完全再現だった。
マカラーニャの森では、光を使ったスクリーンにブラスカやワッカの亡くなった弟・チャップ(尾上菊之助さんによる一人二役(ティーダとチャップが似ている為))が映し出され、まさに『幻光虫』の力で姿を現したような演出だった。
シーモアとの結婚式に臨むユウナを助け出す場面では、飛空艇から飛び出していくティーダ達の姿が躍動感溢れる映像で演出されていて、思わず「うわぁ……」と呟いた。
天才しかいないわ。この作品。
全ての『最高』と『天才』と『伝統芸能』をかけ合わせた結果、『FFⅩ歌舞伎』という壮大な作品になったんだろうな。
と観劇から数日経って思う今日この頃だ。
家に帰るまでが『FFⅩ歌舞伎』
終演後。
事前にアナウンスがあったように、カーテンコールの時間がやって来た。
オオアカ屋「音楽が流れている1分間だけ、撮影して下さい。そして、SNSで拡散して下さると嬉しいです」
という言葉を合図に、撮影が始まった。
出演者の皆様がポーズを取り、私達姉妹を始め、客席にいる人達は携帯電話を掲げて撮影した。
すると、
姉「あ、リュック……」
そう、リュック役の吉太朗さんがこちらまでやって来たのだ。
私達は思ってもみなかったことに、呆然としながら、吉太朗さんに手を振った。
吉太朗さんは、こちらに明るく手を振って、そして微笑んだ。
惚れてまうやろーーーーー!!!!!
ザナルカンド、そしてスピラを後にしたときには、もう夜だった。
楽しい時間が過ぎるのは、あまりにも早い。
姉「吉太朗さんが、来ると思わないじゃん」
私「あれは、びっくりしたね」
姉「めっちゃ、呆然としてしまった……」
私「気持ちは分かる」
惚れてまうやろーーーーー!!!!!
姉「ほんでさ」
私「ん?」
一人何役やってるの、出演者の皆様。
確かに。