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【オリジナル怪談】三叉路の鳥居

あれはまだ俺が浪人してた頃の話なんだけど。
当時浪人生のくせに予備校で知り合った女の子と付き合っててさ、
毎週週末は2人で地元の街を散歩してたんだよ。
ここでは彼女の名前はCってことにするね。

俺らの地元は結構古い街でさ、
寺社仏閣だったり、観光地が多くて、
散歩するだけでも結構楽しいんだよね。

その頃の話で、確かあの日も蝉がやかましく泣いてて、
夕立とかに備えてビニル傘を持って歩いてたから、
7月か8月ぐらいだったと思う。

その日も日曜日だったから、
朝地元の駅でCと待ち合わせして、
朝ごはん兼昼ごはんを2人で食べて、
日中暑いからってカラオケBoxで涼んでから
15時ぐらいにカラオケを出て、散歩始めたんだよね。

普通に地元の大きな商店街を抜けて、
観光地エリアについてからベタな観光地を回って、
童謡の発祥の神社あたりを回った。

それから裏の住宅街を歩いてて、
その日はいつもと違う通りになぜか入っていったんだよ。

深い意味はなくて、毎週散歩してるから
新鮮さが欲しくてよく道を一本ずらしたりしててさ。

そしたらポツンと山というか、
木が生い茂ってる丘みたいなとこに出くわして、
俺らが歩いてる通りに繋がる小道が
丘に向かって伸びてるのを見つけたんだよ。

まだ夕方で空がオレンジがかってはいたけど
まだ明るい時間帯だったと思う。

そんなとこに丘があるなんて、
地元に長いこと住んでたけど
その時まで知らなくてさ、
「ちょっと行ってみようぜ」ってなってね。
その丘に入っていったんだよ。

丘についてみると、
階段が丘の上に向かって伸びてて、
登ってみることにしたんだけどさ、
木ってすごいんだよな。

その丘に入って少し登り始めたらもう、
丘の中は薄暗いんだよ。

ところどころ、木の葉の隙間から
夕方の空の赤さは見え隠れするんだけどさ、
ちょっと不気味なんだよな。

で、俺は持ってた傘を杖のように地面につきながら
彼女と登ってて、
そろそろ頂上かなというところで、
俺の後ろを登ってきた彼女が
「あれ?これなんだろう?」って
上を見上げて俺の奥を見て言ったんだよな。

俺は若干の暑さと、いきなりのプチ登山で
下を見て登ってたけど、
その声で彼女の視線の先の方を見たら、
頂上手前あたりで道が三つに分かれてる三叉路になっててさ。

変なのはそのそれぞれの道にさ、
真っ赤で朽ち果てかけたちょっとボロい鳥居が
それぞれの道の入り口に一個ずつ建ってるんだよ。

その先はそれぞれ奥はよく見えなかったと思うんだけど、
(道が曲がってたのか、木の影になってたのか思い出せないけど、
とにかくそれぞれの道に赤くて朽ちた鳥居があったことだけ覚えてる)

うわぁ、なんか不気味だなと思いつつ、
彼女の手前「ビビってねーよ」って振る舞いたかったけど、
俺は本能レベルでこれは進みたくねーなって思って立ち尽くしてたんだよな。

そしたら彼女が
「この左側行ってみない?」って俺を抜いて進もうとしたところで、
絶対に行ったらいけない気がして、
「おい、C多分やめた方が良い、降りようぜ」
って言ったんだけど、

「え?怖いの?意外。いつもなら率先して行きそうなのに」
って、Cはまだ行きたそうにしてるけど。

絶対的な違和感が俺の中にあって、
それをCに言ってみた。

「だってお前気づいたか?
この森に入ってからさ、蝉の声聞こえなくね?
あんなに鳴いてた蝉がこんなに木に囲まれてる森の中で
聞こえないの変だろ。
なんか嫌な予感するから降りようぜ」

って伝えたら、彼女も渋々応じてくれた。

丘の階段を降りて、
森を抜けたら、空は夕方だけどまだ明るくて、
蝉の声もやかましかった。

なんかその明るさと蝉のやかましさが、
あの鳥居の周囲の異常さを際立たせる気がして、
不気味に感じてね。

こんなところに丘があって神社なんかあるなんて不思議だね、
なんて話しながらも、
その日はそそくさと駅の方に歩いて帰ったんだけどさ。

やっぱり気になって、
そのあともう一回あそこ確かめようぜって話になって
何度かその周辺を歩いて探してみたんだけど、
なかなか見つからなくて、
ネットでもそれらしき神社の情報がヒットしないんだよな。

ある日、やっと「この丘じゃね?」って丘は見つけたんだけど、
俺らが登ったはずの場所に道なんかなくてさ。

大きい建物と塀が通りと丘の間に建ってて
丘へアクセス出来ないんだよ。

その後その子には10月ぐらいに振られちゃってさ、
この話もこの間まで忘れてて、
久しぶりにGoogleマップで条件の合う神社ないのか探したら、
3つの鳥居があって、
3つの異なる神社が丘の上にあるのを見つけて、
「なんだこれかあ」って思ったんだけどさ。

その神社は鳥居が3つ横並びで
その奥に本殿というか社が並んでて、
何より鳥居は石造りの白色なんだよな。

何よりすごい綺麗で
あの鬱蒼とした雰囲気がなくてさ。

俺があの日見た鳥居は三叉路で横並びじゃなく、
しかも朽ちかけてる朱色の鳥居だから
やっぱり違うぽいんだよな。

あれはなんだったんだろう。
という夏の思い出。

ちなみにその彼女とは別れたのに、
お互い第一志望第二志望おちて、
同じ大学の同じ学部に進学するという腐れ縁を持ってしまったという笑い話もある。

まあ、向こうがもう関わりたくないっていうからそれっきりになったんだけどさ。

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