LAMP IN TERREN『FRAGILE』 俺的名盤レビュー④
「ど真ん中」ってどうだろう。
人間誰しも「ど真ん中」を選んでみたり、あえてそこから外れてみたり。
人生はそういう選択の連続。
俺はど真ん中なモノって結構好きで、今日もオアシスを聴いてたし、VANSならオールドスクール一択だし、映画も普遍的なテーマを扱う王道なストーリーが好きだったりする。とはいえショーシャンクをベストに挙げる人のあまりの多さにはたまに飽き飽きするけど。
そんなわけで8月、マジでめちゃくちゃタイプなバンドを発見してしまった。それがLAMP IN TERREN。元々Enfantsが好きなのは前から記事にしてたけど、そのギターボーカルの人が別に組んでたバンドらしい。
どれどれ…と思い、試しに最新ALの#1『宇宙船六畳間号』を再生。
これが久々にブッ飛んだ。
RadioheadのKid Aを彷彿とさせるイントロ、BUMPのorbital periodの影響を感じるような歌い出し、これ全部俺が中高生時代に聴いてきた音楽なんですね。洋楽と邦楽それぞれいちばん聴いてきたバンドだったからこそ、1曲目から感動が止まらない。
#2『Enchante』も比較的穏やかな曲調。曲調としてはピアノ・ロックというかシンセ・ポップというか。その辺を得意とするGalileo Galileiよりは結構バンドサウンド寄りだけど。そして何より歌メロがめちゃくちゃいい。
#3『ワーカホリック』は間違いなくこのアルバムのハイライトの1つ。アップテンポなカントリー・ロックだから、彼らの音楽性の広さがここで一気に伝わってくる。…急にNICO Touches the Walls思い出してきた。
まあこの曲は歌メロやコード進行はもちろん歌詞がマジで良いです。大人になってからふと感じる疲労とか退屈とか空虚さとか、憂鬱とか葛藤とか、それらをすごい解像度で唄う。結構普通のことだけど、語感がいいのと表現が独特で本当いい。
二十歳になって地元に帰ってきてからこういう曲聴くと胸が痛くなる。めっちゃいい意味で。
#4『EYE』は6/8拍子のゴスペルっぽいロックバラード、#5『風と船』#6『チョコレート』はアコースティックとエレクトロを混ぜたようなバラード。多彩なサウンドが鳴るけど基本的には歌モノだから、ボーカル松本さんの歌唱力がすごく活きる。音数も多いし、簡単にできる編曲じゃないと思う。ナチュラルすごい。
#8『いつものこと』は暫定1位。今月聴いた曲でトップかも。
これもテーマ自体は『ワーカホリック』と似てるけど、アコースティックだからより胸にくる。というか本当にグッとくる曲つくるのうますぎる。結局、メロディ歌詞コード演奏アレンジが全部まとまっていて、全部に意味と説得力があって、全部が連動してる機械というか生き物みたいになるこういう曲が一番すげえやってなっちゃう。
そのままアップテンポなロックナンバー#9『ホワイトライクミー』とピアノバラードの#10『Fragile』で、このアルバム44分間の旅も無事着陸。長いようであっという間だった、短かったけど濃かった、そんな音楽体験ができた。これ本当の名盤でしか味わえない体験。
そういうわけで、LAMP IN TERREN『FRAGILE』のレビューでした。ちなみにFragileは「壊れもの」って意味で、まさにそういう人に宛てたアルバムであることは言うまでもない。これがリリースされたのは2020年、コロナ禍でHSPとかそういう言葉が注目され出した時期。人も社会も何もかもが壊れかけてたあの時代に、絶対に必要だった音楽だったと思う。
「壊れやすい」心の抱える感傷、孤独、葛藤、生きづらさ、そして希望の見つけ方を確かなソングライティングと演奏力で表現・導いてる類稀なる傑作だし、紛れもない名盤。
ちなみに翌年にリリースされた髭男の『Editorial』ってここから影響受けてる?ってつい思ってしまうほど、テーマも音楽性も似てる。音楽による心地よさ、美しさを味わえるのは当然、それ以上にセラピーとしての側面が強い2枚だと思う。
LAMP IN TERRENは今は実質的な活動休止中だしその存在はオルタナティブだけど、彼らの曲はいつでも「ど真ん中」そのもの。人間、壊れそうなときほど普遍的なものを選びたくなるじゃん。仕事帰りのサラリーマンが「オーナー、いつもの😮💨」って頼む姿が想像できる。
LAMP IN TERRENの『FRAGILE』はそんな一枚。「壊れもの」なあなたに向けた「ど真ん中」を。って言ったらなんかカッコつけてるけど笑、本当にそんくらい推したい音楽です。
俺のフォロワーの皆さんもぜひ聴いてみて。
それでは。