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「平造夫妻」4 お役目編 「仮面の忍者赤影」青影・陽炎の両親のお話 R18 1949文字
門番は障子の閉まった御伝に、殿達の身内の集まりで和やかな雰囲気に早い食事の賑やいだ様子に、主君達のいる場所とこの門では遠くに離れていても羨ましい気持ちと、馬がいつもよりいなないている事に気を取られていた
今日は客人もおり、家臣達が気にかけている事はわかってはいても、よくいななくなと思いながら、やや風の吹く中、門に続く一本道の左右には美しい桜がある道で、まわりの桜から降り落ち風に舞う桜、日が暮れようとしていたが、まだまだ明るい夕の空の下
「まあ、今日明日は殿の計らいでご馳走との事だ。この後の食事が楽しみだな」
「あゝ、早く交代してほしいな」と、中で今食事を口にしている仲間を、羨ましいように門番達は言い合っていた
向かって左の門番は、この時期の門番は役得と、今一時の美しさを目にできる事に、一昨年さもしい気持ちで道に打ち捨てられていたように道転がっていた自分を見つけ、拾い上げ、農村が忙しい時は農民の田畑を手伝わせられていたが、自分はそんなに嫌いでない
雑用ばかりだが、普段は四季がゆるりと見れる門兵として仕えさせてくれた主君の事を尊んでいた
山の地形を利用した城は、桜の道もその一つ
堀の橋を渡ると、左右の桜の一本道を少し下れば雑木林が広くあり、沢がある
その沢は川に続き、そこから更に平地の川沿いをずっと歩くと、行き止まりの濃い雑木林に囲まれ対流する川は、川沿いので浅瀬であってもそこ迄くると深くなっており渦を巻き、龍が生まれる場所として知られている川であり、いつも風が吹いている場所であり、無風の日が少ない場所であった
風の強い日は、背の高い雑木林の幹が風につられ幹が斜めに傾く様は、自分の眼前で巨大な龍が横を張って行き止まりの雑木林に向かって、通っていく様を見るようであった
そう誰もが、その場所で強い風が吹くと、雑木林の幹が斜めになり、風が渡っていく様に龍の姿を思い、つい見える訳でもないのに、つい顔をみようと思うも、龍の頭を本当に目にすると思うと、そら恐ろしくなり、正面を見る気持ちを止めてしまう時間でもあった
門番は、今朝の幸先のよいと思わせる雪のせいか、龍が生まれる川がある事でも知られていることを、自慢のように思い出していた
風が、また流れ出した
この時間、一時風が強く流れ木々や塀、馬小屋に御殿に風があたり音がする
また、山の空気が一段と冷たく感じられ、日が段々暗くなっていく
桜が満開と言っても、今日の朝は雪が軽く降った朝、昨日に続き寒い風に山の風と思い、再度桜に雪が積もった光景を思い出しては、寒くとも門番は心が和むものの、もう一人の門番も、御殿が気になるようで、御殿の方に顔を向け、耳を澄ましている
馬がいななくのと風で音がする以外は、静か
何人かの急いで走る音に、御殿の引き戸、障子が開く音が大きくしたと思うと、その後は静かな静寂
門から御伝は遠い、大きく響く音でなければ聞こえない
人の声がしなくても、何事もなければ戻ってくる足音がしてもおかしくはない
むしろ、気を張って耳を澄ませていた
風で聞こえなかったと、思っても
先輩の門番も塀の向こうを気にするそぶりを何回かしたと思うと、指笛が大きく響く
自分も指笛はできるが、ここ迄大きくできないと驚く
続けて二度吹き、その後間を置いて更に三度を二回吹く
教えて貰った指笛、左右の桜の一本道は、緩やかな坂は雑木林に続く山道と雑木林を見回ってる、城お抱えの忍び達への合図
山の夜、この時間の風は強い
風向きによっては、引き戸や障子を開けると、風が一気に強く流れ込む
思いっきり開けたと思う引き戸や障子の音に、大きな声が家老や殿、上の家臣達から一喝あっても、聞こえてもおかしくない
特に、御家老の声はお年といえど、雷のごとく響く
戦で味方に指示をするのに、敵を威嚇するのに
、非常に役に立ったと聞く
口笛を吹いた門番が、待てと左の門番に合図をする
門番は、不思議でいた
御殿には、家臣や小姓以外にも警護の忍びが二人、城も一人はいて、まして今日は殿の御兄弟家族、正室、側室が揃い、また陰陽師玄流斎のお付きが二人、なかなかの手練れと聞いている
何も、音がない
御殿の中にも警護の忍び二人、何かあったら一人がこちらに来ていても、なんらかの合図があってもおかしくなく
この静けさは、と思い不安に思ってる所に、
「一人は、一緒に御殿へ行け」
と小さくはっきりと声が聞こえた瞬間、黒い影が一つ、塀を飛び越え塀の中に消える
その後黒い影が、橋の手摺り木々に塀に三段跳びのように飛び、塀の中に消えていく者、軽々橋の手摺りから塀を飛び越えたり、飛び乗り、次々塀の中に消えていく
この時左の門番は、初めて忍びを見感心し
「自分が行きます」と言い、門の横の扉から入っていき、一人の忍びが口笛を吹いた門番と一緒に、その場に残った
続く→
「平造夫妻」5