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「平造夫妻」13 お役目編 「仮面の忍者赤影」青影・陽炎の両親のお話 R18 2565文字 

自分の張りついている表情がわかるのかと思うも、墨のような暗さの中、時折覗く月の明るさ互いが見える事で気持ちは救われてはいたが


時折、月が雲から覗くと言っても
この暗さに、覆面で見えぬ顔であるはずなのに、しかし言われ気づく
自分のギョロギョロと動く目、頰が上がり覆面に張り付いたニタァとした口元に気が付き、主君を嘲った笑い顔が自分に張り付いてる表情がわかる


「悲しいな」


そう声が聞こえ、土に手をついた男はドサっと頭が土につく


月が見え隠れする暗闇の中で、数々の刀の音に、次々と地面に倒れる音に、隔たりのある鈴の音に、時折の月の明るさがもあっても、どんなに疑視をしても見えない目のまま、たち吉を抱き抱えたままの動けない兄貴分の門兵

そして、すっと二つの鈴の音は消える
火でもあれば、明るさで見えたであろう
しずと平造が木の枝に高く吸い寄せられるように、ふぁっと木の枝に飛び乗るのを
静は手の中の鈴を握り音を止め、平造は刀の柄に紐でついた鈴を柄と一緒に握っていた
互いに、闇の中ぶつからぬようにと距離を教えて鈴の音

里の者達と寝ていた忍びが、どれだけ気づいただろうと思う
毒蜘蛛の言っていた事を思い出す、平造と静

「音はしても、然程大きくはありません。御殿の庭で使うならば、雑木林の入り口迄音は響かないでしょう、まあ陽炎様なら別ですが」と、
言っていた土蜘蛛



🏯
「ん、つぅ、ぅ」
板の間に倒れているのに気がつき
(何故、何、どうした)と、
下忍の小太郎は身を起こしざっと周囲を見回し、天守閣から見える大きな火柱が目に映る
天に高く上がる、天に登ろうとしてるかのような炎に一瞬唖然と驚く(何がっ)と

天守閣の中が、いつもより明るいと思ったのにも納得する
廻縁まわりえんの前で、頭領飛影の妻月白つきしろが立っていた
後姿だけで分かる立ち姿に、息を飲む小太郎


「目が、覚めましたか」と
月白が、振り返り声をかける


「はい、月白殿。あの火柱は」
火事の心配から、自分はどうしていたのかを後にして聞く小太郎


「わかりません。私も下で倒れている自分に気がつき、天守閣迄上がってきました」
月白の涼やかな声に、焦る気持ちが引いていく小太郎
今日は、階一人づつ。源流斎殿がおられると言う事で。いつもはこの時期は、せいぜい一人か二人


影魔かげまも倒れていました。香炉に眠り薬ねむりやくでも仕込んであったのでしょう。目が覚めて良かったです。毒薬であったら、油断を招きましたね。一体誰やら」


「私では、ありません。何か、口にした記憶はありませんし、やはり香炉の可能性高いのでしょう」と
小太郎は、さっと考え言った。


「小太郎の事は、信用しています。誰が手垢がついたのかは、今は後です」


「はい。あの火柱、火事の心配はないのでしょうか?」


「私が見た時には、もう火柱でした。小太郎が目が覚めるのに、そう時間は立ってません」

巨大な炎に心配はあれど、安堵する小太郎

「もう半数近くは、駆けつけてるはずです。心配は心配ですが、眠り薬受けた体では、敵方の餌でしかありますせん」


「それは、ここで見ていろですか」
と、小太郎はつい口にする。
眠り薬で倒れているのを見られて恥ずかしかったのと、少しぼーっとした頭で言葉が出ていた。その時


「月白様。大丈夫でしたか。
何度も指笛を致しましたが、返信がないので心配致しました。お分かりと思いますが、御殿の庭で火柱が立っております。半数近くが向かうと思いますが」
白雪の命を受け、城の月白殿と連絡を取れと言われた中忍が二人、階段を駆け上がり天守閣に上がっての言葉
共に足の速い二人、距離があろうにも息が乱れておらずであったが、天守閣から見る火柱の炎に、息を飲む二人


「白雪は、雑木林ですか?」

「いえ、桜並木入り口手前です」

「そうですか」

「何が、ありました?
二階で影魔が倒れており、今目が覚めたといった感じでした」
小太郎、中忍二人は、月白の後ろに見える天変地異のように見えていた火柱が、小さくなっていると思うも、それ以上にいつも不思議に思っていた。月白殿は、どんな状況でも焦ったり慌てたりする事はないのかと。火事の心配もあるのにと


「香炉に、眠り薬のようです。量が少なかった為か、浅い眠りのようで目が覚めた所です。少し前に」と、月白の声


(いつも思う、この方のお声を聞くととても落ち着き思考が回る。皆この方に指示をされると、素直に聞いてしまう。さすが前頭領の娘と思う。男なら確実に頭領の器と思う者も多い、継いだ飛影殿が頭領の器でないと言うのではない。また月白様は、時折人心に長けているのではとも思う事もある)と、小太郎は思う


「佐助、ニニにいに、来た早々ですが、御寝所に。私も一緒に行きます。大きな火柱を上げる者は内紛とは思えませんが、手垢のついた者達が多くいるやもしれず。殿一家縁者の安否を。もう行っていると思いますが、足止めや何か問題が起こっているかも知れません。



「はい」
と言う佐助にニニにいにに、目を向ける月白

「小太郎、影魔と一緒に。この城を守りなさい」

「はい」

「眠り薬を仕込んだのは、御殿に近いこの場所から来られたくなかった事と思いますが、お願いします」

「はい」
ここに残れは戦力外と言われたようにも思うが、城を空にするわけにもいかずの小太郎の返事

「影魔は薬が、相当効いたようですね。いまだ上がって来ないのは」


皆んな、はっとし階段に目を向ける
みな一瞬、影魔は振りをしてどこぞに退散したと心冷ややかに思い、(違ったか)と一瞥の空気が流れた


「申し訳ございません。遅れまして」
と、そこへ影魔が音もなく現れる
少し、ふらついているように見える事に、疑念を思う佐助、ニニにいに


「・・・影魔と私が城に残ります。相手が誰かはわかりませんが、まずは殿達と玄流斎殿の安否です。こちらは、何かあったら鐘を叩きます」と月白。
非常用に、鐘が各階に置いてあり
火柱は急速に消え、雲に見え隠れする月の明かりに、天守閣の角にある一本の蝋燭の灯り


「はい」と皆答え
玄流斎の名前を言われ、みんなにぴりりとした空気が流れる

「火事の心配はなかったでいいでしょうか」
とニニが、月の明るさの中言う

「そう、思いたいですね。火事でないなら、三度指笛を」
そう月白は、言い放ち

佐助達は返事をし、天守閣に月白と影魔を残し、下に降りて行く


続く→
「平造夫妻」14  お役目編


あとがき 

一つ前の「平造夫妻」12は、静と平造が相手の忍達との戦いですが、 そのノリは
「化物語」「UNDEAD」の曲のノリです🌟
特に平造は、このノリです。
私では、ノリを書き出す事できなくて残念です
「平造夫妻」12のあとがきに、この事書かなかったのは、見た人が全然イメージと違うと憤慨しそうなので。私は「UNDEAD」のノリで書いてました🤍

読んで頂いてる方、ありがとうございます🩵


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