あいつが死んだ―「新橋寄銀座10円恋物語」
これから書くのは、60余年前に終わった貧しい恋の物語だ。裕次郎張りに銀座の恋の物語には違いないが、すこし新橋寄りになる。鴬谷から有楽町までは初乗りで10円だった。新橋まで行くと20円になる。だからあいつは彼女と待ち合わせる時は必ず山手線有楽町の新橋寄りベンチにした。まだスマホも公衆電話もない時代である。客の都合でお店をでるのが遅くなる時は終電までしっかり待った。そんな時代の10円恋物語だ。
この物語は、さいしょ継続の500円として書いた。その為に見出しも付けた。でもこのコロナ不況だから100円に値下げした。そのかわり単品売りだ。2000字から3000字の予定である。前に付けた見出しにはこだわらない。もう85歳だからコロナでなくともいつ死ぬかわからない。いまのうちに、書き終えたい。あいつの墓標として。
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718字
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満85歳。台湾生まれ台湾育ち。さいごの軍国少年世代。戦後引き揚げの日本国籍者です。耐え難きを耐え、忍び難きを忍び頑張った。その日本も世界の底辺になりつつある。まだ墜ちるだろう。再再興のヒントは?老人の知恵と警告と提言を・・・どぞ。