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父の仕事と海

私の父は、原油や鉄鉱石(資源)などを運ぶ船の船員だった。海外に資源の調達に行くため数か月間は家に居ない。家に戻ると数か月は休みという生活だった。

私が幼少期、父の船が名古屋港から横浜港まで運航するので母と一緒に乗船したことがあった。停泊している船に乗るのは何回かあったが、運航中の船に乗るのは初めて。

船内に入ると漂う原油の匂い。夜の海はライトに照らされ黒光りしている。

船が出港し、沖のほうに出ると急に船体が大きく揺れだした。船のデッキに出て暗闇の海を眺める余裕もない。私は酔い止めを飲んでいたが、全く効かずベッドで横になりいつの間にか寝ていた。

夜中に急にカンカンカンカンと大きな音が鳴りだした。窓の外を見るとサクランボほどの大きさのヒョウが降っている。父はその中でヘルメットを被り他の船員と共に作業していた。こんな悪天候でも仕事をしなくてはいけないなんて過酷である。

日本の社会インフラに必要な資源を運ぶ仕事。天気だけではない、海賊に襲われるかもしれない。急病になっても直ぐに病院に行けないし、今日は疲れたから居酒屋で一杯なんてこともできない。

船は無事に横浜港へ着き、父とはそこで別れた。

海での時間、それは荒波のなかで仕事をする父の姿を思い出し、そして父に感謝する時間である。

#海での時間

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