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【創作小説】林檎の味

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「カオルとカオリ」という連作形式の小説の第一部にあたる「林檎の味」が完結しましたので、マガジンにまとめました。札幌郊外を舞台にした十代の少年少女の切ない初恋物語です。 あらすじ:…
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#チェロ

【小説】林檎の味(一)

 カオルとカオリは幼なじみだった。  二人が知り合ったのは小学四年生の頃のこと。カオルが…

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【小説】林檎の味(十)

 「ただいま……」  久しぶりの我が家、カオルは小さな声で居間に入ると、真っ先にピアノに…

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【小説】林檎の味(十五)

 チェロケースを背負ったカオルが廊下を歩いて来る。このままではさすがに居場所がなくなって…

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【小説】林檎の味(十六)

 何となく二年生に進級していた。何となくとしか言いようのない、砂を噛むような毎日だった。…

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【小説】林檎の味(十七)

 放課後、カオルはチェロケースを抱え、久しぶりに音楽室へと向かった。このままでは自分まで…

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【小説】林檎の味(十八)

 談笑しながら下校する生徒たち。カオルはその群れからいつものように一人外れている。今日は…

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【小説】林檎の味(十九)

 無機的な風景が広がる郊外。国道は家路を急ぐ家畜の群れのような車で渋滞気味だ。そのすぐわき、ポプラの大木に守られた緑地と創成川の流れは、小さなオアシスのよう。並木道はまっすぐまっすぐ北に延びる。夕日に照らされながら、言葉もなく歩くカオルとカオリの遠景。しつこく居座る足元の残雪に、二人の長い影が落ちる。大きなチェロケースを背負い、足を引きずり引きずり歩くカオル。その一歩先をいたわるように歩むカオリ。カオリは林檎をほおばっている。  「先に行けよ」  「早く帰ったっていいことない

【小説】林檎の味(二十・最終話)

 堤防の桜並木、降りしきる桜吹雪、自転車を飛ばすカオリ、カオルは遅れまいと必死について行…

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