見出し画像

英語が得意なら国際学部?

【忙しい方は2項目目のあとからお読みください】

私は断固として英語で行われる授業を受けたくない。それを受けることは生命の危機に値するからだ。

私だって最初から英語の授業を嫌っていたわけではなかった。

【初回授業】

初めに授業を受けたときの話だ。当然のように、見ず知らずの教授が英語でぺらぺらと、よく分からないことを説明し始める。カナダのケベック州の歴史?そんなものに興味はない。しかし我慢して聞いている。異言語で話される全く興味のない話題、というものがどれだけ苦痛であるか、想像したことはあるか???耐えられるはずがない。20分後、私は全身のイライラを手を揉みしだくことで何とか解決した。まだ興味のないケベック州の話は続く。やがて時間は過ぎ、30分が経過した。まだ、授業は終わらない。そう、ここは大学なのだ。一授業は90分にも及ぶ。なのに、時計を確認する頻度は高くなった気がする。授業で使用する言語がせめて日本語だったら。60分が経過した。その頃の私にもまだ曲がりなりにも私は授業をちゃんと受けようとする意志があって、ノートを取っていた。ちゃんと内容を読み取れているのか、かなり疑わしいノートだったが。もちろん正しいかを確認する術もない。それでも、授業は続く。80分。もうすぐ授業が終わる。ようやく終わることに安堵の気持ちを募らせながら、画面に目を移した私が目にしたのはグループディスカッションを始めんとするために接続中のzoom画面だった。そこからは悪夢だ。私はぺらぺらとしゃべる留学生なのか帰国子女なのか分からない外国人たちに聞かれた質問にただ戸惑い、緊張のあまり英語が全く出てこないだけだった。私の意見は無かったものとされ、ほかの二人の意見が採用された。まあそれでも難は去った。やっと落ち着けるかと思いきや、教授がとどめの一言を発した。今から指名する学生にグループの意見のまとめを発表してもらう。私は混乱で二人の話が全く頭に入ってこなかったため、何も発表できることが無かった。「君はケベック州の何に興味をもってこの授業を取ったのかね?」教授が微笑みかけてくる。何の悪意など無い表情だ。「わ、私は、ケベック州のことを知りません。」ほかの班とは全く異なる意見だ。ほかはちゃんとした、それっぽい意見を述べていた。教授はあいまいな笑みを見せ、「あー、今度は班の意見の総括をしてくれ。」当然、私は答えられなかった。そもそもzoomで顔を出すのが嫌なのに、そのうえ慣れていない英語で話せなんて到底無理だ。耐え難い沈黙ののち、教授が二言三言なだめるような発言をし、悪夢のような授業は閉幕した。私は二度とこの授業には出ないと誓った。

【二回目の出陣】

私は初回の授業ののち、最初からそもそも存在しえなかった授業の意欲が粉々に砕け散ってしまったが、残りカスみたいな惰性とともにほかの授業を受けようと努めた。「あの授業は普通じゃなかったんだ。難易度が高めだったに違いない」そう言い聞かせて。しかし、結果は散々だった。授業開始15分で私のイライラは頂点に達し、「ここで授業を抜けたらどんなに気持ちが良いだろうか」と思った瞬間私のパソコンは閉じられていた。まるで悪魔をパンドラの箱に押し込んだ後みたいな満足感だった。私は満足げに微笑み、カフェラテを買いに外へ出た。

というのは今描いた妄想で現実では涙を流していた。授業に耐えられなかったことに、そしてこの苦痛をこれから何か月も、いや何年も受けなければならない、学部の選択を間違えた、などなど……ただただ混乱で満ちていた。自分ではどうしようもない現実が目の前に高く、そびえたっていた。私は目を閉じ、眠りについた。

それからの数日、私はぼんやりしながら過ごした。授業を無自覚に何個もすっ飛ばした。何もしたくなかった。思考停止させた。それからふいに、単位を取らなければいけないという事実に目を覚まし、まだ受ける資格のある授業(ほとんど残っていなかったが)を受けることにした。

ただ残念ながらこの話はハッピーエンドに終わらず、私はこの後唯一受講資格を得た授業も途中でバックれ、単位を取りやすい日本語授業もいくつか出席日数が足りずに落としてしまい、後期休学の末、留年する。

それが良いことか悪いことかはわからないが、私は自分の精神を守るのに精いっぱいだったし、必死だったのだ。私にとっては良いことだった。あの授業をもう一度受けなければならないのであれば退学したいくらいだ。両親が許してくれるとは到底思えないが。

誤解を招きそうだが、私は決して英語の成績が悲惨だったのではない。学部内での英語の成績はノー勉4時間睡眠でも平均くらいは取れたし、中高の全体成績は散々だったが、英語だけは都内有数の中高一貫校で優をとれるくらいには維持していた。

「英語ができること」と「英語が話せること」は違う。私は日本語でもできうる限り人と関わりたくないくらい引っ込み思案なのでそういった方には「英語で授業が行われる学部」は全く勧めない。コミュニケーションをしたいと思う意志と最低限のコミュニケーション力が必要だ。私は基本的に人が怖いと思っているのでコミュニケーションを取ろうにも、術がない。というところで、今日の所感を終える。

いいなと思ったら応援しよう!