おこっぺ牛乳

趣味は博士論文が元になった著作(通称・博論本)を読むこと。社会復帰に向けてリハビリ中。

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  • 書評まとめ

    いままでnoteに執筆・掲載した書評のまとめ

最近の記事

書評:小倉孝誠『〈女らしさ〉の文化史』(1/2回)

女性の精神疾患をめぐる語り方には、多くの点で、19世紀の転換期と21世紀の現代とで共通点がある。わたしたちは新しい時代を生きているわけではない。無自覚であるがゆえに、かえって同じ状況を反復しているように思われる。ここでは、女性にまつわる言説がいかに時代を超えて類似しているか、小倉孝誠『〈女らしさ〉の文化史』を読みながら、ヒステリーという病気の観点から簡単に書き留めておきたい。 前提:性別の科学的定義と男女観の疑似科学的説明 18世紀、男女の生殖器の差異が、性別の科学的な根

    • 書評:森銑三、柴田宵曲『書物』

      愛書家の思いは時代を越えて共通である 『書物』とぶっきらぼうに題されたこの随想集は、近世の書物研究に打ち込んだ二人の碩学の手による共作である。前半を森が、後半を柴田が執筆している。 読書行為から出版市場に至るまで、「書物」から連想される主題を、紙幅の限り縦横無尽に説き明かしている。戦中の執筆だが、現代と相通ずる部分も多い。愛書家の本質は、いつまでも不易ということだろう。蔵書が家を圧迫し、本の貸し借りが盗みを生み出し、蒐書が家産を傾ける。そして愛書家の願いは、後述するように

      • 書評:論理的思考は複数あることを示すスリリングで「哲学」的な論考ーー渡邉雅子『論理的思考とは何か』

        渡邉雅子『論理的思考とは何か』は、優れた哲学書である。哲学についての言及があるからではない。留学した時の強烈な異文化体験が、著者に、そもそも知的で論理的な文章とは何か、根底から問い直すことを強いているからである。 その構成は大きく分けて2つの部分からなる。ひとつは論理的思考が、西洋においても「論理学、レトリック、科学、哲学」の4つの「基本パターン」が多様にあるとする前半部分である。もうひとつは、作文教育の方法と目的に着目することで、複数の論理的思考を地域ごとに成り立たせてい

        • 書評:中川右介『クラシック音楽の歴史』についての走り書的覚え書

          ※2024年9月24日のAmazonレヴューから転載。 いつの間にか勉強になっている面白い読み物 中川右介『クラシック音楽の歴史』を読了しました。この本は西洋音楽史ではなく、あくまでクラシック音楽の歴史と銘打たれています。 つまり、西洋の古典音楽の歴史を一から十まで通覧したい人のための本ではありません。なんとなく日本語で「クラシック音楽」と呼ばれているものに興味をもっているけれど、基本的な知識がおぼつかず、歴史的見通しが立たない人のために書かれた本だといえます。 そう

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        • 書評まとめ
          6本

        記事

          いのっちの電話に発信してみて思ったこと

          ※4月10日にX(旧twitter)へ投稿した一連のポストから編輯・添削したものです。当時、以下の2つのリンクのように、炎上騒動が起きていました。この文脈において、私の投稿もされています。 坂口恭平さんはけっこうこわい 坂口恭平さんには、以前死にたくなったとき電話したことがある。 話題も気分も噛み合わなかったし、特別救われたわけでもないし、文字で読むよりぶっきらぼうな人だと思った。でも、時間もお金もかけて電話番号を公開する率直さの裏面が、ぶっきらぼうに感じられるんだろう

          いのっちの電話に発信してみて思ったこと

          書評:柴崎友香『あらゆることは今起こる』(シリーズ ケアをひらく)についての走り書的覚え書

          ※2024年10月5日にAmazonへ投稿したレヴューから転載。 私自身、コンサータを処方してもらった経験があります。なので、ADHDやASDについての経験を具体的に述べている前半部分には、共感するエピソードは多く、面白く読めました。ただ、その後のいくつかの内容に違和感をもち、読み進めることができなくなりました。本文から2つ引用します。 この2つの文章が一冊の同じ本の中にに印刷されていることは、私にとって、次のページに読み進められないほど著者への信頼を損なうものでした。著

          書評:柴崎友香『あらゆることは今起こる』(シリーズ ケアをひらく)についての走り書的覚え書

          書評:ティモシー・ウィリアムソン『哲学がわかる 哲学の方法』についての走り書的覚え書

          ティモシー・ウィリアムソン『哲学がわかる 哲学の方法』(岩波書店、広瀬覚 訳、2023年)(Philosophical Method: A Very Short Introduction, Timothy Williamson, Oxford: Oxford University Press, 2020) 読了 著者は哲学の出発点に「常識」を据える。その仮想敵はデカルトの追従者たち、つまり懐疑論者だ。「常識」の立場から懐疑論者を批判することがこの第1章の大目的である。だが評

          書評:ティモシー・ウィリアムソン『哲学がわかる 哲学の方法』についての走り書的覚え書

          自己紹介

          「おこっぺ牛乳」と申します。途中でなまえを変更するかもしれませんが、とりあえず「おこっぺ牛乳」で初めてみます。 体を壊して療養中です。社会復帰のためにしているあれこれについての日記や、趣味の読書・購書にまつわるレビューなど書いてみます。 好きな本のジャンルは哲学や批評ですが、それにとらわれることなく、好きなように書いてみたいと思います。そのうちに、方向性が見えてくるかもしれません。 すべてはリハビリだと思い、続けられるうちは気ままにやります。