北川 俊 / shun kitagawa

MEME Editor

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最近の記事

この世界にクリエイターは存在しない。

この世界にクリエイターは存在しない。いや、正確には”ひとり”だけいる。宇宙をつくったビッグバンだ。それ以降に生まれたすべてのものは、エディターにすぎない。  「ミーム」という概念がある。1976年に発表されたリチャード・ドーキンスの『利己的な遺伝子』の中で、「文化的遺伝子」という意味で提示された。「模倣」を意味するギリシャ語「mimeme」を語源とし、人類の文化が模倣によって紡がれてきたことを表しているそうだ。この言葉に出会って以降、何者でもない私は、自身を「ミーム・エディ

    • 趣味が合うからって価値観も同じだって勘違いしてない?

      マッチングアプリ(以下マチアプ)を利用するようになって久しい。マチアプ自体はコロナ禍以降に急激に利用者が増加した印象だが、思い返せば私が初めて「チャットアプリ」を利用したのは高校生の時だった。初めての「出会い」は、当時20代前半の歯科衛生士。1ヶ月ほどメッセージでやり取りし、ある日会うことになった。 「写真の顔と全然違う...」 私の最寄り駅に集合し、30分ほど立ち話をして解散した。 あれだけ文字では仲良く話していたのに、イメージしていた顔と違うだけで、早く帰りたい気持ちが抑

      • 技術は思想を伝達する道具にすぎないことを忘れたくない

        マクドナルドのポテト割引キャンペーンのCMにAI生成動画が起用され、炎上した。コメントの多くは、AIによって人間の仕事を奪われることへの恐れによる批判だった。相変わらずX(Twitter)はおしまいだ、と思いながらWebページのタブを移動し、"ジェネレート"ボタンを押す。数秒待つと空白だった画面に、公園で中年女性が縄跳びをしている画像が4枚並んだ。AIで仕事増えたな、と脳内で呟いた自分は、批判コメントを書き残す大衆と同じように、炎上は人ごとだった。  写真、映像、音楽、プロ

        • 他人を自分の所有物だと思ってる奴みんなイモータン・ジョー

          「久しぶり!何気に卒業式ぶり?よくインスタで何か作ってるの見るけど、最近なにしてるの?」 「おお、久しぶり!アニメで父権社会ぶっ壊したいんだよね」 同窓会でそんなことを軽はずみに発言すれば、なに言ってんの?、政治的な発言やめてよ、などと返答が返ってくることは容易に想像がつくので自粛すべきだが、正直そんな配慮している時代はコロナ禍と共に終わった。  長年の父親の度重なる不貞行為によって両親が事実的な離婚をしてから2年ほどが経ち、縁を切った父からは3ヶ月に1回ほどCメールが届くが

          3DCGアニメシリーズ『終末映写俱楽部』企画書

          【概要】<タイトル> 『終末映写倶楽部』 副題:“THE COSMOWIDE SPECULATIVE FICTION” 英題:Frozen Archive <あらすじ> 人類の絶滅に一役買ったのは、突然の大氷河期だった。 それから時が流れ、地球に新たな生命体が降り立つ。 冷凍保存された文明の跡をオマージュし、それらは瞬く間に都市「ディンナム」を築いた。 アカデミーに転校したハスイは、そこで「映画」に出会う。 「カメラなんて大キライ。でも――」 故郷で家族を失った過去

          3DCGアニメシリーズ『終末映写俱楽部』企画書

          エッセイコンペに出し損ねた文章

          #あの選択をしたから 留学で得たもの: ・英語 ・おもちゃ ・夢を語り合える国を越えた友人 ・一度に家族、パートナー、お金を失って養った精神 ・新興宗教やってるやつの見分け方 留学で失ったもの: ・お金 ・自分を棚に上げて子ども扱いしてくるヲタク ・トランクの中におもちゃスペースを確保するための衣服 (2018年12月10日投稿 自身のInstagram ストーリーズより) なにかを得れば、なにかを失う。 「お前はどちらを選ぶのか」 全ての出来事が、示し合わせたかのよ

          エッセイコンペに出し損ねた文章

          『色彩休暇』 最終話 モノクロの輪郭

          切間ひとつない曇天の県道。 新菜の母が運転するセリカの助手席で絵を描いている新菜。 新菜が母の顔を覗くと同時に色彩休暇が起こり、 その瞬間運転席側に車が追突。 エアバッグが作動し、新菜の絵が外に放り出される。 新菜の視界が暗闇に包まれる。 辺り一面モノクロの世界、一本の道路の上で寝そべる新菜の母。 その背後では、大きな炎を上げて軽トラックが炎上している。 逆さに転がったセリカの助手席に、 シートベルトひとつで宙吊りにされている新菜を発見する立花。 立花は新菜を固定していたシ

          『色彩休暇』 最終話 モノクロの輪郭

          『色彩休暇』 #8 群青のカラートップ

          「一度も使ったことなかったですけど、無くなったら無くなったでなんかちょっと寂しいかもですね」 学校教育での水泳の授業が正式に廃止になって以降、 4年間の放置を経てようやくプールの取り壊しの話が持ち上がった。 使用されることのなかったプールの底には、 地球の表面にコンクリートの突起を積み上げる人間のごとく、 我が物顔でひたすらに生しまくった苔が広がっている。 「まあいいんじゃない?あっても臭いだけだし」 プール一面に広がった緑の隙間を縫うように覗いた群青色の表面が、 夕日を反

          『色彩休暇』 #8 群青のカラートップ

          『色彩休暇』 #7 白銀の瞳孔

          財布も定期券も持っていなかったのに、 どうやって家に帰ったかすら覚えていない。 自分が帰宅したことをやっと自覚したのは、シャワーの水に流される、 わずかな血が脚を伝っていくのを眺めている時だった。 私は濡れた髪のまま、眼帯を薬局のビニール袋から取り出す。 実原先輩との再会と別れ、あの空間で起こった全てが現実であることは、 玄関を開けるまでずっと握りしめていた このフィルムロールが証明している。 ガコン。 一瞬にして私は、足元も見えぬほどの暗闇に包まれた。 部屋を唯一照らしてい

          『色彩休暇』 #7 白銀の瞳孔

          『色彩休暇』 #6 漆黒のバブル

          私と新菜は駐車場に車を止め、 ただ黙々と静寂が馴染みきった住宅街を進む。 住みやすそうな場所だね、家までは歩いてどのくらいなの、など、 この沈黙を埋める他愛もない話題を振ることはできたはずだ。 しかし彼女の綺麗に伸び切った背中は、 そんな沈黙など微塵も気にも留めていないように見えた。 中野駅から程近い住宅街に位置する3階建てのマンション。 キッチンが備え付けられた廊下を抜けた先にある6畳ほどの洋室。 よくあるタイプの間取りだが、そこには所狭しと様々な年代の機械部品などの”ジャ

          『色彩休暇』 #6 漆黒のバブル

          『色彩休暇』 #5 青緑のミニディスク

          小雨が降る中、 立花と新菜を乗せたホワイトのセリカ GT-FOURは山手通りを走る。 ごっそりと剥がれ落ちた「CELICA GT-FOUR」のデカール、 ハンドルは錆び、フロントシートには一部穴が開いているが、 こんな”アンティーク”が今もなんとか走行が可能であることから、 新菜のこの車への愛着が感じられる。 他人の車であることに加え、 自動車教習所でしか扱った事のないマニュアル車の圧力が、 立花の肩を硬直させる。 MDプレイヤーに接続されたスピーカーからは、 微かなノイズ混

          『色彩休暇』 #5 青緑のミニディスク

          『色彩休暇』 #4 RE-COLORED

          AIに人間が仕事を奪われるかもしれないという恐怖は、 もう何十年も前からフィクションによって散々と描かれてきた。 自分の仕事が取って代わられ得るものなのか、十分に考える時間はあったはずだ。しかし、ここ近年の技術革新と大衆化のスピードに追いつけない隣のデスクに座る上司という立場のこの男性は、ソーシャルメディアからコピペして繋ぎ合わせたかのような文章で、私に”説明”を垂れる。 人類は”分からない”に対して過剰に攻撃的になることは、歴史を振り返れば分かることだが、それをまざまざと実

          『色彩休暇』 #4 RE-COLORED

          『色彩休暇』 #3 警告色の節足動物

          立花が勤務する大手ゲーム会社「株式会社ビヨンド」。 その最上階に位置する第一開発室の中央には、内側に湾曲した8本の柱が円形に設置された装置が設置されている。 隣接した小柄な操作パネルの電源を入れ、それを起動する実原。 ネックレスを外し、パネルの中央から伸びる台座上で浮遊する。 「実原くん珍しいですね、残業ですか」 語尾が少し擦れる、低めのその声にハッとして振り向く実原。 ダークネイビーのセットアップスーツに身を包んだ男が、革靴と床との接触音をわざとらしく響かせ、近づく。 「少

          『色彩休暇』 #3 警告色の節足動物

          『色彩休暇』 #2 橙色の瞳孔

          朝起きたらまずカーテンを開けて日光を浴びましょう、なんて地上波の健康番組を流していたらよく聞くが、大通りに面したアパート2階に住んでいる私がそんなことをすれば、間抜けな寝ぼけ面を近隣住民に晒すことになってしまう。節約術やら下町紹介やら、一見庶民に受け入れられ易いように構成されたテレビ番組から流れる情報には、時折自分がそれを享受できる環境からすらも溢れていることを実感させられる。 そんな皮肉をつらつらを頭の中で考えながら朝食を食べてもシリアルの味は変わらないのだが、それでも付け

          『色彩休暇』 #2 橙色の瞳孔

          『色彩休暇』 #1 桃色のフィクション

          「君のその想像力は、いつかきっと命取りになる」 8ビットの電子音、ステンレス硬貨の摩擦音、隣のおやじの咀嚼音。 それらの騒音をいともたやすく潜り抜けて私の頭に響き続ける、 言葉の形をしたこれまた騒音。 西新宿にビルを構える本社に異動になって約半年、 退勤後に巣鴨駅の側に位置するアーケードゲーム専門ゲームセンターの地下一階でお金を溶かし、技術を得る。このなんとも単純なリスクとリターンに浸ることが、もはや私の日課となっていた。 「当然のことだよ。目の前の不条理にNOと言わないこと

          『色彩休暇』 #1 桃色のフィクション

          『架空』 あらすじ #ジャンププラス原作大賞 #連載部門

          幼少期に父親の暴力によって、見えない"糸"で空を架ける能力「架空」を発症した映画ヲタクの女子高校生シノアミ。 ある日街中でナンパ男に手を掴まれたことをきっかけに、その能力が暴走してしまう。彼女の能力とその過去について知る幼馴染のタキヤは、とある提案を持ちかける。それは、この世界のすべての害悪な男性達の"社会的去勢"だった。 #ジャンププラス原作大賞 #連載部門

          『架空』 あらすじ #ジャンププラス原作大賞 #連載部門