2021年5月の記事一覧
なにかとてもうつくしいもの
「ママにいいものあげるよ」と、息子が言った。夕食の支度をしているあいだ、なにかを必死で書いているのは横目で見てわかっていたけれど、なにを書いているのかはわからなかった。絵を描くのはもともと好きだった息子だから、なにか絵を描いたものをくれるのだろうかと思ったけれど、最近はひらがなを覚え始めて、それを使ってみたい盛りだ。もしかしたら、なにか手紙なのかもしれない。
「いいものって」と、わたしは食卓に夕食
ぼくは今まだ生きている
ぼくの詰め込まれたその貨車は、どうやら本来動物を運ぶために使われていたものらしく、凄まじく不快な臭いがして、それでなくともぎゅうぎゅう詰めで息苦しかったので、胸が悪くなって、道中吐き気を堪えるので必死だった。生唾を飲み込む。どこかで嘔吐するうめき声が聞こえる。胃液が喉元まで込み上げてくる。
ようやく生きた心地のしたのは、蹴落とされるように貨車から降りて、外気を胸一杯吸い込んだ時だったわけだけれ
君がどんなに間違ってても、わたしは君を肯定する
息子の小学校から着信があると心臓が止まるんじゃないかといつも思う。いつかきっと本当に止まるだろう。もう二度とこんなことは起こらないでほしいと、何度思ったことだろう。そして、それが何度目であろうとも心臓の止まる思いがする。また呼び出しだ。息子がなにか問題を起したのだろう。それが何度目であろうともため息は出る。
「はあ」そして、電話に出て、電話を切り、またため息。「はあ」
その姿を見ただけで、同僚
傷ついた一角獣の子ども
「これは一角獣だな」と、彼は言った。「一角獣の子どもだ」そう言いながら、そのうずくまって小刻みに震えている生き物の目と目の間を指差す。「ほら、少しふくらんでる。ここから角が生えてくるんだよ」
ぼくは恐る恐るその生き物に近づいた。家族で行った動物園にいたポニーに似ていたけれど、もっと華奢で、触れたら折れてしまいそうだった。ぼくが顔を近づけると、その生き物は身をこわばらせた。
「ごめん」と、ぼくはそ