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大切な本57「ペルーからきた私の娘」

宝物のような聞き書き・掌編

海外の小説をむ貪り読んでた20代はじめごろ、村上春樹さんや小川洋子さんらの影響で手に取ったリチャード・ブローティガン「西瓜糖の日々」。正直内容はあまり覚えていないけれど、「ウォーターメロン=西瓜糖」ってことばがとても魅力的で、内容よりもタイトルが印象に残っている。その翻訳をされたのが藤本和子さん。

斎藤真理子さんのおすすめで「イリノイ遠景近景」を読んだことをきっかけに、藤本和子さんが翻訳だけでなくたくさんの聞き書きやエッセイを書かれていることを知った。これは私の好みどんぴしゃりではないか…!!

新装版として今年新たに出版された「ペルーからきた私の娘」。表題作ももちろん素晴らしいのだけれど、収録されている「ウィラード盲目病棟」…今このタイミングで読めたことに運命的なものを感じるほど心に刺さった。

滝山病院事件のその後も気になるなか、精神保健福祉法改正施行に伴い今年度から始まった「入院者訪問支援事業」。精神科病院の閉鎖性を取り除きこれからどう広がっていくか期待もありつつ、アメリカの精神病院で60年も暮らしそして亡くなった日本人がいたことは、実状の一片でしかないのかもしれない。たくさんの問題が山積しているけれど、藤本さんご夫婦や長くかかわってきた看護師さんなど、彼に思いをよせる人が少なからずいたという事実のほうに希望を見出したい。

聞き書きといえばアレクシエーヴィチの作品なども思い出される。市井のひとのことばや物語から、ハッとするほどの運命的な出会いが突然巡ってくるから、やっぱり読書はやめられない♡


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