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大切な本㊴「戦争は女の顔をしていない」
「小さき人々」の声をすくう
昨年、急遽年度途中で異動があり5か月だけ福祉相談センターでの勤務があった。同庁舎内に国際プラザ(多文化共生センター)があって、国際交流や外国文化に特化した図書コーナーもあり、そこでコミック版「戦争は女の顔をしていない」を手に取ったのがアレクシエーヴィチに出会うきっかけだった。
恥ずかしながらそれまでアレクシエーヴィチという名前も、彼女がノーベル文学賞作家であることも知らなかった。コミック版は正直イラストのテイストがあまり好みではなかったのだけど、その後すぐ取り寄せた原著に綴られる従軍女性たちへのインタビュー…彼女たちの記憶の情景一つひとつが目に浮かぶように思われたのは、先にコミック版を読んでいたことが功を奏したのかもしれない。
彼女の言う「小さき人々」の声を求めるとは、マイノリティや社会的弱者の声をすくいあげることと通じているように思う。高名なひと、偉大な功績を残した人の著書もよいけれど、市井に生きる人々の個人的でささやかな日常や思いを描く作品にも惹かれる。そしてそれらが積み重なったときに新たな歴史や文化が生まれるのだろう。
社会のうねりに吹き飛ばされそうな「小さき声」こそ見逃さないように、耳を傾けていきたい。
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