見出し画像

大切な本㊲「精神病とモザイク タブーの世界にカメラを向ける」

映画から精神医療を思う

想田和弘監督が岡山県にある「こらーる岡山診療所」の日々を追ったドキュメンタリー映画「精神」。一作目は山本昌知医師を訪ねる患者さん、第二弾は山本医師のお連れ合いにもスポットをあてられている。いずれも音楽も特別な演出もなく淡々と日々を映し出す作品なのだけれど、だからこそか、登場人物のお人柄やあたたかな品性のようなものが静かに強く伝わってくる。そしてカメラのこちら側にいる想田監督の真摯なまなざしも。

精神科病院の廃絶を最初に訴えたイタリアの精神科医・バザーリアを描いた「むかしMattoの町があった」、フランスにあるユニークな船上のデイケアセンターの日々を追った「アダマン号に乗って」。どの映画にも共通するのは、ありきたりなことばだけれど「やさしさ」だと思う。治療が必要だとか、他害の恐れがあるとか、ルールは守らねばとか、社会で生きるうえでは制約はどうしてもつきものだ。それはわかる。わかるけれど、一番大切なのはやっぱり人としてのやさしさだと思うのは子どもじみた理想論なのかな…

この本のタイトルには「タブーの世界に」とあるけれど、タブーとしてるのは社会の勝手な都合で、精神病も精神科医療も本来タブーでも何でもないはずだ。弱さも悲しさも辛さも絶望も、社会に(そしてそこに生きるひとりひとりに)あたたかでやさしいまなざしがあればきっと和らぐと信じてる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?