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うそをはく(117)

1匹の猫が2つの穴から同時に出てきた。あまりににゅうっと出てくるので、よく分からなかったが、確かに穴を通るときにはどちらも通っていた。悶々としてまた穴を通るのを待っているのだけれど、どうやら素麺のほうが好きらしい。

隙間を通るのは確かに好んでいるようなのだけれど、どうやら素麺のほうが好きらしい。

青ざめた猫は苔色の毛を見つけてはマトリョシカのように中に丸め込まれていくので、どんどん膨らんでいって今ではまるで枕のような大きさだ。

大麻を食す羊は体内時計が正確らしく、鳴き声が時報に使われている。夢だけを食べて生きている構成作家が書いたというその時報の台本にはしっかりとセシウムの元素記号が刻まれている。セシウムはお砂糖でパンパンだ。弟子ではないのに。雑魚でもないのに。

次元が足りないので、ひとまず時報はここらで切り上げてまたの機会にするとして、チューリングテストに移った。猫は確かに見事なキーボード捌きだけれど、偶にシの音で鳴くので、AIに認定されてしまった。

AIに認定を受けた猫はビジネスの分野で活躍するようになって、今では認定をしたAIのほうが目を見張るほどだ。

AIが見張っている時間帯に穴を通ったので、僕は直接見ていないのだけれど、猫は確かにまた1匹で2つの穴を同時に通った。コンセントみたいな奴だ、まったく。お醤油がよく染みている。

それでも色は変わっていない。ひまわりは咲く。肥えずに丸め込まれていく猫の財布事情は厳しい。ベルトとの間に子が生まれた。


実家の猫はもふもふさせてくれない。

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