【フィギュア】宇野昌磨を待ちたい

フィギュアスケートのグランプリファイナルが終わり、祭りの後の寂しさを感じている。見どころが非常に多い大会で、何を書けばいいのかわからない。

盛り上がった女子に対し…

今回面白かったのはやはり女子。紀平選手・ザギトワ選手のトップ争いは、言うまでもなく素晴らしかった。さらにジュニアのおそるべき才能達。4回転ルッツをはじめ圧倒的な技の難度を誇るトゥルソワ選手を、驚異的な完成度と美しさを見せたコストルナヤ選手が抑えるという展開。女子フィギュアの歴史が大きく動いていることを感じさせる。

一方で男子は、ややもどかしさの残る内容だった。ネイサン選手と宇野選手の僅差の争いだったが、両者ともポテンシャルを十分に発揮したとは言い難い。特に宇野選手はかなり自分を追い込んでいる感じがして、勝手ながら心配になってしまった。心配していたら、アマゾンでポチっていた。

前置きが長くなったが、今回はこの話をしたい。宇野選手の弟、宇野樹さんの著書。この本を書いたのは、伝えられている宇野昌磨像が、彼の知る兄の姿と違っていたからのようだ。

私にとっての宇野昌磨像は、ストイックで責任感が強いが、徹底した合理主義者というものだった。つまり、スケート以外はひたすら好きなゲームをして、無駄なことを一切しない。一読してその印象が根本的に覆ることはなかったが、想像以上のスケートバカだと感じたのも確かである。

濃密な10分間

宇野選手はジュニア時代に疲労骨折をしたことがあり、当然練習を休まなければならなかった。しかしある日の夜中、突然起き出した彼は壁を叩きながら叫び続けた。弟の樹さんは「練習ができないのが、こんなに苦しいことなのか」と思ったそうだ。

どこの病院に行っても練習を許可してくれる医者はいない。それでも希望を求めて病院を回るうち、「1日10分だけなら滑っていい」と言う医者が現れた。そして、その10分で凄まじい密度の練習をした。結果的に怪我の完治に時間がかかってしまったが、樹さんは「練習ができない時間が続いていたら、心が壊れていたんじゃないだろうか」と振り返る。

彼にとっては、スケートで苦しむことよりも、スケートを取り上げられることの方がはるかに辛いのだろう。「したがって、今回の試練も乗り越えられる」という理屈にはならないが、私は期待して待つ気になった。2位で「残念」と言われてしまう選手の逆襲を見たい。

『兄・宇野昌磨 弟だけが知っている秘密の昌磨』の見どころ
・山田・樋口両コーチへの思い
・負けず嫌いを示すエピソード
・2016世界選手権で涙した話
・独特な音楽の捉え方



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