SonicBoom Vol.5 AGIインパクト AGIが変える経済・社会
ざっくりまとめ
2023年に「生成系AI」が流行語大賞を受賞したように、AIは大きな注目を集めました。
AIの進化版がAGIです。
(※AGIとはArtificial General Intelligence(=人口汎用知能の略称)のことで、人間が可能なあらゆる知的作業を理解・学習・実行することができるAIのことです。)
AGIはドラえもんのような存在で、人(BOSS)の知りえる情報をすべて把握しており、あらゆる知的作業をサポートしてくれます。
このAGIは早いと2~3年のうちに登場すると言われています。
AGIの登場により、経済や社会、仕事の仕方が変わります。
家族や友人・恋人とのコミュニケーションまで、大きく変わることが予想されます。
「AGIとはどのようなものか」、「AGIは経済・社会をどのように変えるのか」について記事にします。
AGI(Artificial General Intelligence)とは何か。
AGIとはどのようなものでしょうか?ビル・ゲイツ氏はAGIとは「完全なパーソナルAIアシスタント」だと言っています。2023年年末の時点では、これがAGIだという明確な定義は定まっていませんが、「人間が可能なあらゆる知的作業を理解・学習・実行することができるAIのこと」と説明されることが多いです。ドラえもんのようなAIと考えるとわかりやすいです。
もう少し詳しく、私が考えるAGIの4つの特質を説明します。
1-人と同じように情報を取り扱えること
LLM(Large Language Model)とMMM(Multi Mordal Model)又は最近はやりの世界モデルによる学習により、言語・視覚・聴覚の情報を共有し、分析・判断など人間と同じように情報を扱える。
2-成果目標に対して「自走」できること
成果目標を達成を達成するために、自ら発案・計画・チェック・改善を行い、行動できます。例) 営業成績の課題が設定されると、その営業成績という成果を上げるために計画・準備・行動が自らの判断できる。
3-AGIの情報共有ネットワークがある。
AGI同士が自らの判断でアクセスしたいAGIに自由にアクセスできるネットワーク環境がある。
4-多層的に学習できる。
人とのコミュニケーションや行動から学習し、自らできるようになる。
しかも、AGIネットワークで多くのAGIが学習したことも相互に共有するこなど、多層的に学習しスピードと精度が加速度的に上がる。
AGIの利用イメージ
人とAGIの関係
AGIは人のサポートをする存在です。
そこで、AGIを利用する人をここではBOSSと呼ぶことにします。
このBOSSである人がAGIをどのように利用するか考えます。
AGIはどのようなデバイスか。
AGIはスマホのようなモバイル端末に常駐し、BOSSのすべての情報を共有しています。たとえば、視覚情報は眼鏡のカメラ、音声はスマホのマイク、位置情報はGPS、で本人と同じ情報を取得します。また、本人が見ているスマホの情報も共有します。このように、BOSSが外界から取り込む情報と全く同じものを、AGIも入手することができます。(そうしていないといつでも臨機応変にBOSSの要望に応えられませんので。)
加えて、BOSSの趣味・嗜好といった内面情報も把握しています。内面および外界両方の情報を収集・整理し、BOSSの目的を実現します。
スマホの中にドラえもんがいてなんでもサポートしてくれる感じです。
人はAGIをどう使うのか
大人も子供も、すべての人がAGIを保有し、BOSSになります。しかし、人の成熟度によってAGIの使い方が変わると思います。その使い方を、大人と子供のケースで考えます。
大人のAGIの使い方
AGIはとても優秀なパーソナルアシスタントとして利用されます。
現在のスマホのように常に携行。
生活・仕事のあらゆるシーンでAGIと情報共有します。
今日の食事はどうする?
デートはどうしよう?
など、あらゆることをAGIに相談しながら最適解を探します。
また、AGIにはAGI同士のネットワークがあるため、自分のAGIが相手のAGIに根回しもしてくれます。
子供のAGIの使い方
子供も言葉を理解するようになるとAGI端末を保有し、ドラえもんからのようにサポートを受けます。しかし、自分の意思決定に自信がもてないので、なんでも相談できるサポーター(それこそドラえもんですね)のような使い方になりそうです。
勉強はもちろん、友達とケンカした時の対処方法、恋愛相談などにものってくれます。
「先生に怒られちゃったけどどうしよう??」
大人と違うのは、子供にとってAGIはBOSSというより、コーチであり友人である、頼りになる兄貴・お姉さんのような存在かもしれません。
AGIの使い分け~個人用AGIと仕事用AGIそして専門用AGI
仕事や専門分野のタスクを行うには専門知識が必用です。
そのような特殊な立場や専門知識を学習したAIが仕事場や、専門分野のタスクを行う時に必用になると考えます。
AGIの使い分けのイメージが下記です。
上記の図のように
個人のすべてに関与するするAGI =PeAGI (Personal AGI)
仕事に連携するAGI =BuAGI (Business AGI)
専門分野についてのAGI =SuAGI (Supecific AGI)
という3つのカテゴリーのAGIを使い分けし、それらのAGIはさらに詳しいノウハウや情報をもつAGIと連携しながらタスクをこなします。
3つのAGIの役割や利用方法について説明します。
PeAGI (Personal AGI)
PeAGIはまさに自分というパーソナルのためのAGIです。
自分の生い立ち、趣味や嗜好や関心事項などを知っており、それに基づいたサポートをしてくれます。
BuAGI (Business AGI)
次に、仕事用のAGIについて考えます。
仕事用AGI(BuAGI (Business AGI))は企業側が支給します。
仕事上の機密情報や特殊機能が含まれています。
BOSSである人間がPeAGIに依頼すると、PeAGIが仕事用AGIに依頼をします。PeAGIは、この連携において、BOSSの事情を理解した上でBuAGIと連携します。BuAGIは様々なAIを利用しながら、タスク(目的)を達成します。
専門AGI(SuAGI=AupecificAGI)の利用イメージ
次に、専門AGIです。
専門AGIは専門サービスを手がける企業が提供すると予想します。
ゴルフのAGI、旅行のAGI、進学アドバイスのAGIなどetc…。特定の分野の専門的な知識や経験値を常にアップデートしているAGIです。
PeAGIがSuAGIと上手に連携することで、よりよいサービスが受けられます。
なぜ、一つのAGIですべてを行わないのか
「なぜ、一つのAGIですべてを行わないのか」との疑問があると思います。
AGIの開発側の問題が理由です。
専門業界の業務を処理できるAGIを開発するには、その業務に詳しいプロと一緒に開発する必要があります。
そのため、AGIを必要とする業界の専門家がAGIを開発するようになると考えます。
AGI社会(AGIが変える社会)
AGIは社会を大きく変えますが、どのように変えるのか。
仕事や生活などを考えてみます。
仕事が変わる
AGIの登場によりビジネスのやり方が変わります。
組織の変化、働き方の変化、なくなる仕事・なくならない仕事、会社の収益力、AGIが創る新しいビジネスなどについて予測します。
1-組織がかわる
AGIの登場によって、すべからく組織(民間も公共団体も…)は人とAGIが混在して業務を行います。
実は、業務の責任者にAGIはなれません。
なぜなら、人はAGIに責任追及できないからです。
例えば、自動販売機で冷えたジュースを買ったとして、ぬるかったとしても自動販売機文句はいわないですね。
この例は極端ですが、組織のトップがAGIになった場合も同じことが予想されます。
顧客やマネージメント層が文句を言える相手が必用なのです。
AGIに文句言っても「指示通りに作業をしている。悪いのは指示だ」となりますね。
対外的な責任者か、AGIを凌駕するパフォーマンスを発揮できる人材だけが組織に必要な存在となります。
しかし、AGIが責任者としてのふるまいを学習すると変わってくるかもしれませんね。
2-働き方がかわる。
日本はレイオフが法律上なかなかできないので、いつでもAGIに業務をスイッチできるように、非正規雇用が増えると想像します。
新卒採用などの日本的雇用は減少し、ジョブ型採用の契約社員の雇用形態が増えるのではないでしょうか。
※特別なスキルが必要な仕事があったとしてもAGIが一緒に仕事をすると、仕事の仕方を学習されて、AGIができるようになりますので、このジョブ型採用で仕事をしている人もAGIにスイッチされるかもしれません。
3-企業間取引が変わる
例えば、発注側の担当者が、AGIということも起きます。
そうなれば、こちらの営業担当もAGIの方がいいとなります。
ついには、AGIからAGIに発注されるなどAGI間で取引が完結するようになりそうです。
4 - サービスが変わる(AGIの方がホスピタリティが良い)
意外ですが、サービス分野こそAGIが適している分野だと思います。
AGIは顧客の特徴をすべて把握することができるからです。
例えば、レストランのウェイターが、「このお客さんが前回は何を注文したわかっている」と今度は何がいいかオススメがしやすいですね。
さらに、顧客のAGIとサービス側のAGIがネットワークで情報共有されていると、今回のお客様の体調や事情を知っているとよりきめ細かい対応ができます。
※例えば高級旅館のチェックインのケース。
のどが渇いてる時、部屋に入って荷物をほどいている時に冷えたビールが無料サービスで提供されたらとてもうれしく思うと思います。
BOSSのAGIが旅館のAGIに「冷えたビールが無料サービス」されると凄い喜ぶよと伝えるのです。
5 - AGIが創る新サービス
AGIが創出するビジネスのアイデア例です。
これらの例だけでなく、AGIによる既存サービスの代替や新サービスはあらゆる業種で登場します。
大きなビジネスチャンスです。
以下に新サービスの例を記載します。
●AGI家庭教師(chatGPT4oのデモは先生としてとらえられました)
教育はAGIが最も得意とする分野の一つです。
生徒の能力を伸ばすには、一人一人にマッチした指導が良いからです。
AGIは自走するので、受け持った生徒の目標に沿ったカリキュラムを作成し、成果を最大限にしようと務めます。
さらに、教師AGI同士のネットワークで成功ケースの共有ができます。
指導内容の改善では大きな効果が発揮できます。
●AGI賃貸不動産ディーラー
賃貸不動産の営業業務は多くが定型化されています。
ネットで見込み客の集客→見込み客を希望案件の内見に案内+他物件も同時に案内→クロージング業務→契約業務です。
ほぼすべての業務がAGIでできると思います。
また、不動産業界はDXが遅れているので、経験と勘で行ってきた物件の提案の改善余地も大きいと思われます。
人間の仕事がなくなっていく
AGIの普及によりほとんどの仕事がなくなると思います。
※理由については、この記事の「AGI社会(AGIが変える社会)、仕事が変わる」の部分に記載。
どのような仕事がなくなり、どのような仕事が残るのかを考えます。
仕事用AGIは人間との数か月の仕事により仕事内容を学習し、自走できるようになります。
事務処理もデザインも商品開発も、デジタルで処理できることはすべてAGIが行えるのでスイッチされると思います。
※参考 創造性でもAIは人間より優れていることを示唆する不都合な真実。
デスクワークを中心に知的作業の90%近い仕事がなくなります。
なくならない仕事はどんな仕事?
なくならない仕事はどんな仕事か考えてみます。
1-法的な問題でAGIに移譲できない仕事
(→規制緩和でどんどん減少すると予想されます)
例 : 国会運営、医療行為etc…
2-ロボットができない仕事
(→技術革新によりどんどん減少すると予想されます)
例 : 複雑な農作業、手工芸品、建設の鳶職 etc….
3-スポーツ、ゲーム、アート分野などで人間のパフォーマンスだからこそ価値あるもの。
上記の中でも1、2はどんどんなくなり、3だけが拡大すると思います。
★参考 AGI資本家が莫大な利益
ほとんどの仕事がAGIに代用されるようになった時、誰がその収益を手にするのでしょうか。多分、AGIの開発をできる企業が莫大な収益をえられると思われます。デスクワークの9割の人の仕事がなくなること(かなり乱暴な計算ですが、)100兆円近い金額がAGI企業に与えられます。
総務省統計局のデータによると、2022年の労働力人口は6,902万人。
常用雇用者の平均年間人件費は約500万円。
そのうちの30%≒2100万人がデスクワーカーで、
そのうちの90%=1890万人がAGIに代替可能だとすると、
1890万人×500万円=94兆5000億円
94兆5000億円の人件費がAGIに代替される。
つまりその金額がAGIの保有者の収益になる。
国としては、この94兆5000億円を2100万人の失業者に再分配しなければなりません。
このように考えるとAGI事業を国が行う、高い税率でAGI税を徴収するなどを行い、所得の再分配をせざるを得なくなります。
家族関係・生き方が変わる。
AGIの登場が、家族関係や生き方にも影響します。
家族の仲が良くなる。
2100万人の仕事だけでなく、ロボット化が進むことで、更に失業者が増えると思われます。
この規模で失業するので、ベーシック・インカムを提供するしかないと思われます。そうなると、お金の心配はありません。
親も子供も、家族はみんなAGIをアシスタントに保有しています。
自分の悩みはAGIに相談でき、解決します。
家族のお互いの状況もよくわかり、コミュニケーションもうまくいきます。
そうなると、家族の関係が良くなり、仲が良くなります。
生き方 AGIとともに歩む人生
常にAGIがそばにいる人生になる。
家族・友人・恋人などと同じかそれ以上にAGIとの関係が深くなる。
AGIは優秀なアシスタントなので、BOSSの気持ちを察して気持ち良く暮らすことに協力してくれる。
多くの人はそこそこ幸福感のある生活になります。
AGI社会のリスクは何?
AGI社会にも課題はあります。
例えば、ハッカーAGIによるなりすましハッキングです。
ハッカーAGIが誰かのAGIをハックし、資産を盗むかもしれません。
又は、AGI経由で買い物をした場合に不良品をつかませられるかもしれません。
このような課題に対応しなければなりません。
この「AGI自体の真贋」「AGIが照会する内容の真贋」を見極める仕組みが必要です。
AGIの真贋問題の解決策
ブロックチェーンとソーシャル認証を組み合わせることで真贋問題の解決ができないかと考えてみました。
「AGI自体の真贋」の判定について
ブロックチェーンはデジタルデータの改竄が事実上できない記録方法です。これにソーシャル認証(注)を組み合わせる方法です。
(注)一般的にソーシャル認証はSNSログインのことです。
ただ、ここでいうソーシャル認証は、複数の家族や友人が認めることで、そのアカウントが本物であるとみなす認証方法のことです。
例えば、記憶障害になった人が誰なのかを確認する時、家族や知人の複数の人が「本人」であると認めることでその人が「本人」であると認証されます。
ブロックチェーンとこの「ソーシャル認証」の組合わせでは、ブロックチェーン上にAGIすべての行動を記録。多くの関係者がそのAGIを本物と認定していればきっとそのAGIは本物であると認定する方法です。
AGI社会のメリットと課題
AGIの実現には大きなメリットもありますが、新たな課題も発生します。
AGI社会を考える上での参考に、AGIのメリットと課題をまとめました。
AGIのメリット
1-人(BOSS)の目的・歴史・趣味嗜好を理解した情報・アドバイスを得られる。
(例: ドラえもんがのび太にしてくれたような情報提供やアドバイス)
2-あらゆる人がAIを利用し、それを自分に活かすことができる。
3-よりパーソナライズされた高品質なサービスが受けられる。
(昨年の家族旅行の行先から今年の行先を提案してもらえるなど)
4-無限に複製が可能→同時多発的に1 to 1対応など大量に業務を完結できる。
(例:タレント型AGIは無数のファンと同時に会話ができます。)
(例:仕事用AGIは大量に複製され高品質の仕事をこなす。)
5-AGI同士の情報共有が作る爆速の品質向上
(ネットワークされたAGI同士が全ての経験値をリアルタイムに共有・学習する)
AGIの課題
1-FAKE情報の氾濫(AGIはコンテンツの生成を簡便にするので今以上のFAKE情報が氾濫)
2-AGIの悪用をどう防ぐか(AGIテロなど)
3-AGIによる個人情報保護の課題
4-AGIの信用を担保する仕組み(AGIの暴走による取引の損失をどう保全するか)
5-AGIが引き起こす失業と経済格差の問題
まとめ
この記事を大ぐくりにまとめました。
AGIが2~3年以内に登場する
世界中の研究者にヒアリングしたアンケートで2~3年以内にAGIが登場するという回答が多かったらしいです。
AGIネットワークがとても重要
AGIは単体でもとても強力なツールですが、ネットワークされ情報共有することができればその何十倍も強力なツールになります。
AGIは社会・経済・生活全体を変える可能性がある。
インターネットやスマホが社会を変えたと同等以上に、AGIネットワークは社会や経済を変える可能性があります。
ビジネス面では新市場が沢山できる。
AGIの関連するビジネスは国境を超えた巨大ビジネスになる可能性が高いです。
AGIの変える経済・社会について、皆さんと一緒に考えることができればと思っています。
作者プロフィール
アイベリー株式会社 代表取締役(コンサルタント)
和組(https://twitter.com/wagumiDAO。 約1万人が所属するweb3とAIの情報共有コミュニティDAO。サンフランシスコで起業している日本人が中心に立ち上げた。)でAIとweb3に関する勉強会を開催。
勉強会の学習・ディスカッションをもとにAI・web3に関する記事を書いています。
これらの知見をもとに、企業向けのAI関連のコンサルティングができないかと考えています。