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定年からの人文系大学院生~定年後の生き方を考える(その3)

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したいことを絞り込む

そして、50代半ばになってからの話に戻る。定年後に何をしようか考えていた中に、高校生の頃から興味を持っていた言語学も選択肢に入るかもしれないと思い始めた。仕事の時間管理がしやすい立場になっていたこともあり、平日夜間に開講されている理論言語学講座に通い始めた。最初に受講した「言語学入門」の講師の先生が講義の目的として、言語学を概観することの他に、大学院入試対策を挙げておられた。それまで言語学で大学院に行くということを考えたこともなかったが、これを聞いて、「もしかして自分にもそのチャンスがあるのだろうか」と思った。

それで、講師の先生に少し時間を取ってもらって、自分のような中高年の社会人が大学院に入って学べる可能性があるか尋ねてみた。「それはちょっと……」と言われるかと恐る恐るの相談だったが、先生は大学としてはそのような学生も特に差別することはなく、入試に受かりさえすれば可能であるという趣旨のことをおっしゃった。これで大学院進学が選択肢として私の頭の中に位置づけられた。

その後は、本当に自分が残りの人生でやりたいことなのかどうかを考えながらいくつも講義を受講していった。昔やった勉強とは違って単純に面白かったし、レポート作成には四苦八苦することはあったが、仕事とは違ってつまらないことをやらされているという感じはなかった。そして、定年後には大学院で言語学の研究をしようという意思が固まっていった。

また、社会人で大学院に入った人の経験談を書いた本なども数冊読んでみた。そうした本を書くくらいなので当然かもしれないが、充実した大学院生活が描かれていた。自分もそうなりたいとの意を強くした。

大学院に行こうと決めて

大学院に行こうと決めて、どうすれば入学できるのかを調べ始めた。さまざまなウェブサイトに体験記や大学院予備校などの情報が出ている。もちろん、各大学の大学院学生募集要項をしっかりと読み込むのは基本である。

その結果、大学院の入試は、学部の入試とは大きく違っていて、大学院入学にあたっては次のようなことが重要だとわかった。

大学院の指導教員はそれぞれ専門分野があり、自分が研究したいことと教員の専門が合致していること。これがずれていると十分な指導が受けられないし、それが理由で入試に合格できない可能性も十分考えられる。

これを確かめるためには、手始めに大学のウェブサイトに出ている教員の専門分野を確かめることだ。そのうえで、その教員の著書や論文を手に入れて読むところまでやればまず間違いないだろう。自分が指導を受けたい教員の論文を読んでおくことは、入試に合格するうえでも効果的だと思う。

後述するように大学院入試では面接があるが、そのやり取りで教員の研究内容に具体的に言及できれば、志望の本気度も伝わるし、入学後のミスマッチを防ぐうえでの安心材料にもなるはずだ。

また、専門分野が合っているだけでなく、入学後の研究指導においては、人としての相性も重要であること。大学院の研究指導は1対1に近い関係になるので、指導教員と反りが合わないとボタンの掛け違いのようなことになり、場合によっては研究も進まなくなって修了が危うくなり精神的な不調を来してしまう惧れもあるという。入学する前に可能な限り指導教員となる人に直接会って話をして、うまくやっていけそうかどうか確かめるのがよい。

入試では研究計画書の比重が大きい。研究計画書は、アカデミックなお作法に従って書かなければならない。自分が研究者としてやっていける素養があることを示す重要な資料になる。

「研究計画書の書き方」のような本が何種類か出ているので読んだ。基本的な考え方はわかったが、こうした本はそれぞれ著者自身の専門分野を前提に書かれているので、自分にとって痒い所に手が届くものではなかった。それでも読まないよりは読んだ方が絶対に良い。

一般社会の業務資料とは全く違うスタイルで作成する必要があるので、何が求められているのかを良く理解する必要がある。ウェブサイトでも研究計画書の書き方を指南するものがあるので、参考にするとよいが、やはり単行本ほどは詳しく書かれていないので、本も読んだ方がよい。

そして、筆記試験は、それぞれの大学によって出題傾向が大きく違うので、過去問チェックは必須である。過去問がウェブで公開されていたり、通信販売で買える大学もある。直接大学まで閲覧しに行かなければならない大学もある。早めにこのあたりも確認して行動しておきたい。

筆記試験の出題は、内部進学者(同じ大学の学部から直接大学院に入る学生)を想定して、学部の専門科目で学んだ内容を問う問題が多いようだ。外部からの入学者が内部進学者と同等のレベルにあるかを確認する意味もあるだろう。志望する大学のウェブサイトでシラバスが公表されていたら、学部の専門科目の授業で使われている教科書を調べてみるとよいだろう。


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この後、大学院入試の実際などをアップしていきます。お楽しみに!
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ム・イムー
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