綾野剛って役の数だけ声帯あると思うんですよ。
綾野剛がすごい俳優であることは今更言うまでもありませんし、役に対する情熱がとんでもないのも知られた話。
しばらく歯磨かないとか、数日飲まず食わずで頬こけさすとか、妻夫木くんと同棲始めるとか、とにかく本気すぎていい意味でクレイジー。
限られた時間の中で「役」そのものに魂レベルで近づこうとしているみたいです。
そんな中、わたしはあえて、わたし個人に刺さっている部分の話をしたい。
声です。
声がすごい。
声帯を入れ替えるんだこの人。
単に声の演技がすごいってことだとしても、とにかく役によって声(の印象)が違うと気付いた時の衝撃。
多くのオタクを「役者・綾野剛」に導いたみんな大好き「MIU404」の伊吹藍は、夏休み前のこどもみたいな、素直で無邪気な声で歌うように喋る。
一世を風靡した「怒り」直人は、限りなく薄い、春先の湖に残った氷みたいな声。少しでも触れたら割れて粉々になってしまいそう。
「アバランチ」の羽生ちゃんは紙やすりみたいにざらつき、すりがらすのように本心が見えない声で笑うの。
そんな綾野剛の変幻自在の声の中から、特に好きな声の人たちです。
「カラオケ行こ!」成田狂児
いきなり最近の綾野剛。
でもこの綾野狂児はほんとに、優しいと怖いのハイブリッド、良い声をしていました。
上の方はあったかいのに、下の方は冷たい水。昔のお風呂。
昔のお風呂って、今みたいな自動湯沸かし機能とかないから、上の方にあったかいお湯があり、よくよく混ぜないと下の方が冷たいままとかあったんですよ。
綾野狂児の声ってこれです。
親しみやすさのその下に、恐ろしく冷たいなにかがあるぞ、というのを声でわからせてくる。
聡実くんに対していつも大人の余裕でへらへらして、中学生に煙草の匂いをつけないようにするとか、夜危ないから送ってくとか、妙に常識的なこと言うから、こちらもつい聡実くんと同じように油断しちゃうんですよね。
ヤクザだなんて忘れるくらい優しくて、時々アホで憎めないのに、急に車のダッシュボード(?)から指出てきたり、バキバキの目で人間殴ったりするその瞬間に、あの声に感じていたおそろしさの正体に気付くのです。
下の方の水が冷たいなんてわかっていたはずなのにね。
あの有無を言わさない圧が常にうっすら横たわった声よ……。
「迂闊ですなあ……」をわたしも言われたい。
あんな声した、あんなお茶目なヤクザに声かけられたら断れないですよ。
出会って一言目の「カラオケ行こ?」の声でもう絡めとられているんですよ、こちらは。
あと脚長くて細身でスタイルがめっちゃいい。
インスタ見た母が「後ろ姿のシルエット、ちょっとジェシーみたい」って何気なく言った時結構ブチあがりました。
ところで「昔のお風呂」ってなに?
なんか他に気の利いた表現なかった??
なかったんです……😭
「リップヴァンウィンクルの花嫁」
安室行舛
すみません、本当にぶっちぎりで好きなんです、何度も話してすみません、マジで好きなんです。
どれくらい好きかというと、好きすぎてScentlyで概念香水を作りました。
声とキャラの設定、そして岩井俊二監督の世界観。
こちらでも一瞬ちらっと書いたのですが、
穏やかに意のままに相手を操れるタイプの声です。ベストオブ洗脳声の綾野剛。
なんの感情も乗っかってなくて、でもうすっぺらい優しさを出すのがうまいので、ずっと胡散臭いしずっとうっすら怖いんですよ。
糖衣のかかった得体のしれない薬。
わたしとか七海ちゃん(黒木華さん)みたいな、現状をどうにかしたいけど自分じゃどうにもできない意志薄弱気弱人間に、特によく効く。
用法容量を守っているつもりだけど気付いたら守れなくなっているの。
なんかあったらすぐ「安室さん!」って頼っちゃう。
怪しいけど、優しくて頼りになる。かと思えば、チョコレートにつられて自分の隣に寄ってきた七海ちゃんに
「この距離、あなたが詰めたんですよ」
と、プラスチックくらい無機質な声で、気を付けた方がいい、と忠告するんです。
普段の胡散臭い人当たりのよさが一気に掻き消えたこのシーン、本当怖くて大好き。
そしていつの間にか安室行舛の手の内です。
状況としてはろくでもないのに、美しい地獄絵にたどり着いてしまう。
そんな悪魔的な声。
暗闇で囁かれる悪魔の冷たくて優しい声です。
……今気付いたんですが、わたしがこのタイプの声、単純に好きなんだな。
優しげで穏やかだけど、底知れなくてちょっと不気味な声。
狂児さんと安室行舛の声ってちょっと似ているけど、それでも狂児さんやっている時の声の方が人肌のぬくもり感じるので、やっぱり綾野剛ってすごい。
安室行舛、キャラも大優勝しているので…。
悪魔って人間を惑わすために魅力的な姿をしていると聞いたことがありますが、その説得力を感じます。
会うたび姿も全然違うし、なにもわからない。
Not found安室行舛。
「綾野剛って声帯変えられる」
そんなことは所詮わたしの主観にすぎません。
どんな役を演じたとて、物理的に「同じ人間から発せられている声」に変わりはないので、実際はそんなに声は変わっていないのかもしれない。あるいはほんとに、その時の役の体型や筋肉とかの付き具合で多少は変わっているのかもしれませんが……。
そもそも、役によって声音や話し方を変えるなんて、新人ベテラン問わず、きっと俳優さんみんなされている。
それでも、「声帯変えられる」なんて思ったのは、ひとえに彼が言う「役を生きる」ということの体現に他ならないのじゃないかと思うのです。
オープニングの前から続き、エンドロールの後も続いていくその「役」の人生を、魂があるならその魂を、自身を依り代にしてその声帯から発せられているから、少なくとも、わたしには違って聴こえているのではなかろうか……なんて真剣に考えちゃいましたね。
綾野剛って、外側真っ黒、怖々覗くときらっきらの万華鏡みたいな人。
主演出演問わずたくさんの映像作品に出てらっしゃるので、実はわたしもその全てを見たわけではないのですよね……網羅しきれないというか……。
映画、ドラマはもちろんですが、CMもありますからね!
無害はCMだと「BAILA書店員」の剛が好き。
綾野剛至上最もあざと可愛い。女性客全員めろめろになるでしょうが。ほんと、ほんとにとっても可愛い。きゅるんきゅるんの剛。
色々見てみて、是非あなたのベストオブ剛を見つけてください。
わたしにも、世界観・ストーリー・キャラ総合1位の綾野剛いるので、また機会があれば……。
ちなみに綾野剛やってる時の綾野剛は「キュートで売ってます♡(きゅる)」とかやります。
甘いのが食べたい欲に負けて、生クリームたっぷりのクレープ食べて「おれは意志が弱い…(クレープは美味しい)」とかもやります。
かわいいですね☺️
「いっぱいお食べ……」とはもう気軽に言える年齢ではない、42歳。
どうか健康に気をつけて……。
これからもいろんな声色を聴かせてくれるのでしょう。
そのご活躍をそっと見守っていたいです。
無害