味わって聞きたい日本語ラップ:「Poetry」GOMESS
むぅちゃんはスマホのMixリストに300曲以上の日本語ラップを入れていて、毎日車に乗ったり作業するときなどに聞いています。
だいたい2012年ぐらいから日本語ラップを聞いているので、かれこれもう12年になるのでしょうか…長いような短いような…
日々新たな音源が出るたびに一人で泣いたりニヤついたり興奮したりと気忙しくしているのですが、誰とも共有できないのが少し寂しいので、noteで勝手に語ろうと思います。
音楽に関する専門的な知識はなく、独断と偏見で感じた良さを語っていきますので、どうかご容赦ください…
今日のおすすめ日本語ラップ
今日おすすめしたいのはGOMESSの「Poetry」です。
私が「全てのラッパーの中で一番好きな人は誰?」と聞かれたら、「GOMESS」と答えることでしょう。
それほど大好きで、救われ続けてきたラッパーの一人です…
私からおすすめしたいポイントは以下の3点です。
GOMESSのアルバム三部作の一つの終着点に震える
あの頃よりさらに進化したポエトリーラップに心打たれる
不可思議/wonderboyからのサンプリングを噛み締める
それぞれのポイントについて、私なりに解説していきます。
おすすめしたいポイント
GOMESSのアルバム三部作の一つの終着点
(自分語りを交えて紹介させていただきます)
GOMESSとの出会いはまさに日本語ラップを聞き始めた2012年のこと。
自閉症のラッパーが第2回高校生RAP選手権に出て、準優勝したというのだから腰を抜かしました。
それから2~3年がたち、彼の「人間失格」という曲がYouTubeに掲載されたときの衝撃は今でも覚えています。
この曲を通じて彼の苦しみを知るとともに、彼とはまったく違うけれど、自分もまた周りの人に馴染めずに「同じ人間だと思えない」という瞬間を抱えていることに気づきました。
例えば、要領が悪くてなかなかバイト先に馴染めなかった自分の通勤路…。
例えば、嘘をつくのがイヤで行く気になれない就活イベントへの道のり…。
「私も"人に紛れてもうxx年"だわ」
イヤフォンから流れる彼の曲がずっと自分を励まし続けてくれました。
それは「あい」というアルバムに収録されていた曲だったのですが、ほどなくして2015年に「し」というアルバムがリリースされました。
「し」には「LIFE」という曲が収録され、パニックに苦しむ彼の苦しみをより深く知り、「もっと知りたい」と思うようになりました。
(「あい」「し」ときたら最後は「てる」なんじゃないか…?)
と思いながら、「てる」をドキドキワクワク待ちましたが、なかなか焦らされまして。
待望の「てる」が出たのは2019年。
「よし!!!!!!!!!!」
そして、「てる」の代表曲としてYouTubeに公開されたのが「Poetry」でした。
これまでの代表曲である「人間失格」や「LIFE」と比べると、「Poetry」は霧の合間から晴れがのぞいたようなすっきりとした明るさのあるトラックになっています。
そして、以前にも増してハッキリとしたメッセージが耳に入ってきました。
夢の意味を忘れたり、いつかのことを思い出したり。
いつか死ぬなんてことを考えると、なんだか無駄にしているように感じる「今」。
それでも、今を歌えるのは明日でも昨日でもなく今しかないのだから、今を歌うために生きていく。
これまで「人間失格」や「LIFE」では、自身の困難を開示することで、私たちに寄り添ってくれました。
心身ともに成長したGOMESSは、「Poetry」を通して、優しく、そして力強く、私たちの背中に手を差し伸べてくれているような気がします。
約5年の歳月を通して終着した「あい」「し」「てる」。
さまざまな困難を経ながら、GOMESSの「今を歌い、今を生きる覚悟」に集結したストーリーの美しさに震えます。
なお、インタビューによると、「Poetry」では「自分のことをずっと励まそうとしてきた、死んだ自分に語り掛けている」のだそう。
ちなみに、アルバム「てる」の最後の曲順は「ai」「Poetry」「tell」ですから…
「Poetry」=「詩」=「し」=「死」!
すごい伏線回収だぜ…!
あの頃よりさらに進化したポエトリーラップ
GOMESSはラッパーの中でも、「ポエトリーラップ」というジャンルと言われています。
ポエトリーラップの明確な定義は分かりませんが、名前の通り詩を読むようなラップスタイルで、無理に韻を合わせるよりもストーリーを重視する人が多い印象を受けます。
これまでも解像度の高い情景描写や、言語表現の美しさにシビれてきたGOMESSですが、「Poetry」ではさらにポエトリーラップに磨きがかかっている気がします…!
「人間失格」でも歌っていた、人への馴染めなさに対する一つのアンサーともいえるこのシーン。
周りの人から見れば青い空でも、自分には赤く見える。
そんな自分に黄色を足して見せてくれるということは、「自分の見方を曲げなくていい」「そのままでいい」というメッセージのように感じます。
詩として伝えてくれるからこそ、頭の中でシーンを想像して心に深く染ませることができる…
直接的で粗野な表現であふれるこんな世の中に生きていると、GOMESSの詩がすごく救いになることがあるなーと感じます。
不可思議/wonderboyからのサンプリング
ポエトリーラッパーであるGOMESSがメディアに出始めたのは2012年。
実は、その前年に、日本のポエトリーラップの先駆者とも言うべき「不可思議/wonderboy」というラッパーが事故で亡くなっています。
GOMESSと不可思議/wonderboyは同じ事務所に所属していて、同じポエトリーラップというジャンルで歌っているわけですから、彼が意識しないはずはない。
この「Poetry」という曲を聴いたときに最初に思ったのは、不可思議/wonderboyの名曲「Pellicule」にちょっと雰囲気が似てるな…でした。
さらに、曲の冒頭では「Pellicule」のリリックとフローをサンプリングしています。
■ Poetry
■ Pellicule
不可思議/wonderboyへのリスペクトや、曲のつながりを感じることができてしみじみいいなぁ…と感じるポイントです。
ぜひ聞いたことがない方は「Pellicule」も合わせて聞いてみてください!
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「良いな~」「気になるな~」と思ったらぜひ聞いてみてください!
なお、GOMESSはライブだと基本的にフリースタイルで歌っているので、歌詞は不定形です。
それは彼の特性として「二行以上の文章を読むことが難しい」からですが、そもそもライブごとにまったく違う歌詞をゼロから紡ぎだせる能力がすごすぎる…
公式YouTubeチャンネルではAT渋谷道玄坂協会でのLIVEバージョンを聞くことができます。
魂を削りながら歌うGOMESSの熱を感じて涙が出るので、、よかったらこれも聞いてみてください、、