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秋の終わり、バラ香るBotanical healing🌹お散歩「神代植物公園」


好きな季節はいつかと聞かれて、自分の誕生月のある季節を答える人はどのくらいいるのだろう。

「秋がいちばん好き。だって誕生日があるから。」
小学生の自分がこう言っていた記憶がある。

年々上がる夏の気温、酷暑をどうにか乗りきる頃に訪れる、ふと気がつくさわやかな風が吹く日。
地面にひとつめのどんぐりを見つける日。

それでも今年は木々の葉がなかなか色づかなかった。
ようやく赤や黄色の風景に囲まれると、秋生まれとしてはそろそろバースデーケーキはいちごに白いクリームか、それともチョコクリームかと昔と変わらず気持ちが浮き立ってくるのだ。

冬に咲く存在感のある椿より、その少し前、晩秋から花をつける山茶花が好きだ。
花びらが八重になっている形がいいのだ。
何かを大切に幾重にも包んでいるようではないか。

バスの中で見かけた「秋のバラフェスタ」のポスターのバラたちも、その真ん中に小さな宝物でも隠しているように、何枚もの花びらがほころび重なり合いながらひらいていた。

神代植物公園「秋のバラフェスタ」リーフレット



バラは暑さが苦手な植物のため、段々に寒くなる秋のバラは、涼しくなればなるほど元気に立派に咲き、春に比べて長く楽しむことが出来ます。
形は引き締まり、色は深みを増します。「クイーン・オブ・神代」などの赤いバラは、黒みがかって見えるほどです。

神代花だよりNo.349号より


都内唯一の植物公園として「神代植物公園」が開園したのはは1961年のことである。
もともとは東京の街路樹などを育てる苗園と呼ばれる場所だったそうだ。

ジンダイ、という名前に聞き覚えがあり、幼い頃に「深大そば」という有名なおそばを家族で食べに行ったのをうっすらと思い出した。
植物公園の隣には、東京で最も古い浅草寺に次いで2番目に古くからの歴史を持つ深大寺がある。
そしてその周辺には名物深大そばのお店がたくさん軒を連ねているのだ。

こうして、春より香りが強いのだという秋バラと、懐かしいおそばの味を確かめに武蔵野の森へ出かけることになった。




植物園の最寄りのバス停を降りてから入り口まで
数名のガーデナーによるガーデンギャラリーが並ぶ
絵画を鑑賞するように作品としてガーデンを楽しむ


薄紫の小さな庭を眺めていたら現れたちょうちょ
もしや〝Blue bottle〟と呼ばれる方でしょうか


ようやく正門に到着
木の影が切り絵のよう



1歩を踏み出すともう吸い込まれそうな
針葉樹園


てっぺんを見上げて首をのけぞらせると
ひっくり返りそうになるくらい背の高い木々
〝エント〟ってこんな感じだと思う

エントは、J・R・R・トールキンの「指輪物語」などに登場する木に似た巨人のような姿をした種族。樹木を守る木の牧人である。

Wikipediaより



木漏れ日を踏みながら進んでいってもいいけれど
この先は行きどまり




森から出るとダリア園があり
大切に育てられた花たちが
晴れ姿を披露している

それぞれの花は名付けられており
忘れられなかったこのこの名前は
〝Autumn〟



そして
名前通りの花の姿をしていた
〝moon〟




バラ園はもうすぐそこで
バラフェスタの賑わいが伝わってくる
キッチンカーにはバラのソフトクリームがあり
カフェテラスではバラのカクテルまで



見渡す限り色とりどりのバラの花園
午前中のやわらかな日差しの中で
バラそのものの色がよくわかった



花びらの白さと
葉の赤みに惹かれて
秋バラの香りを
確かめる




翼を広げたような大温室



1984に完成した大温室には熱帯花木室、
熱帯スイレン室、ベゴニア室、ラン室がある。
長居をしたのはベゴニア室で、
ブーケを吊るしたような知らない種類の
美しいベゴニアたちに魅了された。


白い花が好きなのは
白にもいろいろな色があると
教えてくれるから



誰がベゴニアを水に散らそうと言い出したのか
水を張った石は柩の形のようにも見えて
人や涙が花に姿を変える神話を思い浮かべた
(この写真は同行したSが撮影)




大温室の高い天井窓が水に映って
揺蕩う睡蓮たちの水の下は隠される


綺麗なところしか見せないなんて
狡いと思いながら見惚れてしまう





バラ園の前に立てられていた
「世界バラ会連合優秀庭園賞」の記念碑
フレームにもバラがあしらわれている


ロンドンに本部を置き、世界40か国のバラ会が加盟する「世界バラ会連合」によって、バラ園の育成、維持管理、展示様式が高い水準に達しているバラ園に贈られる賞です。

神代植物公園ホームページより



深大寺門にもバラの装飾があり
誇り高いバラ園の存在を感じた



深大そばを求めてお昼どきの通りには人が増え
行列もできはじめている
あんこや野沢菜をはさんだそばパンや
こんがり焼いた串団子に甘酒も



数軒めに見つけたお店
〝雀のお宿〟へ入ることに



建物も家具も古いものを大事に使い続けている


子どもの頃に過ごした祖父母の家と似た雰囲気で
不思議な気分になった
ここにもバラの絵が飾られている


本日のお品書き

天ぷらそば
くず餅付き




日が傾くまで広い園内を歩いた




暦の上で立冬を迎えても、季節は秋だと言い張っていた。
せっかく錦のように染まった木々の葉は次々と落ちていき、冷たい風に震えたある朝、もう冬がそこまで来ていることを知る。
なんて短くはかない季節なのだろう。
それでこそ、だからこそ秋なのか。

日毎に強まる寒さに秋の終わりを実感する。
秋の残り香を探しながら、そろそろ自分のためのケーキを選びに行こう。



チケットの写真を見て思い出す
その日は16,912歩も歩いたのに
パンパスグラスを見逃したのだ
大人の背丈を悠に越し
大平原という名を持つ
パンパスグラスの見頃は秋まで




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mu
ここまでお読みいただきありがとうございます。 思いのカケラが届きますように。