(主に)下吹きの話
今回は、人に向けて話すために考えていたことなので敬語・口語体で書こうと思います。
少し、合奏で考えなければいけないことを話したいと思います。
僕は高校生の頃、吹奏楽部に入っていて、1個上の先輩にまぁとんでもなくデカい音で吹く先輩がいました。吹奏楽をやってた人なら分かると思うんですけど、吹奏楽のパート割って何管とか考えてないから、複数人が同じパートを吹くことも多いし、何より別のパートでも全く同じ音ばかり吹いてることも多い。そしてとにかく管楽器と打楽器しかいないのでソロでもない限り自分の音が立ちづらい。ホルンは直管じゃないし、その先輩というのがやはりいつでも爆音で吹くので、僕は自分の音があまり聞こえなかった訳です。だから自分の音を立たせるために息を多く吹きこむことだけを考えながら吹いていたし、多少音程がずれる方が浮いて聞こえると思っていた(というか浮かせる様に自然に音程をずらしていたみたいです)。演奏する時に耳に頼って体の使い方を軽視していたというのも、ここから来ていた様な気がします。
大学に入ってオーケストラに入り、演奏する曲の参考音源としてプロの録音を聴く機会が増えましたし、実際に演奏会に足を運ぶことも多くなりました。曲の雰囲気を掴むためにこれらを聴いていた一方で、プロの演奏と自分たちの演奏の、大きな違いはなんだろうと考えるようになりました。
しばらくして、それはセクションのまとまり方だということに気付きました。ホルンなら4人で、木管楽器なら大方8人で、トロンボーンなら3本で、浮いてる人が一人もいないのです。それまでは自分のリハーサルの録音を聴いていても、自分の音がどういう風に聴こえているのかということばかり気にしていましたが、これに気付いてからは、どれだけ「馴染めているか」を気にする様になりました。
それなりに楽しくやる方向性のアマオケ、特に大学オケの管楽器では首席奏者とか上吹き下吹きを固定することは少ないと思います。数回の演奏会で、トップを吹くこともあれば2nd以下を吹くこともある。トップを吹くのは引っ張っていけばいいけども(まぁ他の楽器と合わせるということを考えるとトップの方が難しそうなんですが)、2nd以下の時はどう振る舞えばいいのか。個々人がこれを考えることによって、セクションはすごくスマートに聴こえるようになるでしょう。これはアマオケの演奏会に足を運ぶ、半分近くのクラシック音楽にまだ浅い人達に、分かりやすく凄さを伝えられるものではないでしょう。分かりやすい凄さってのは、早い指回しとか、情熱的なソロとか、変拍子いっぱいとか、知ってる曲とか…それらに敵わないことは確かですが、しかし決して軽視できないのがこの「まとまり」という指標だと思います。
そして「まとまり」が大事な理由は演奏の質の向上以外にもあって、しかしこれは逆説的なんですが、結局先述のようにトップを吹く割合が全体の半分以下になるのであれば、ソロがない2nd以下を吹く価値ってなんでしょう?みんなと同じとこで一緒になって出るだけで、さらにメロディも少なかったら、演奏のモチベーション向上の要因になりづらい訳です。しかし「まとまり」を大事にするなら、やはり2nd以下の仕事も非常に大切にしなければいけません。
例えば、チャイコフスキーはよくホルンにオクターブの重ね合わせの音型を使います。1st, 3rdがオクターブ上、2nd, 4thがオクターブ下というのが多いですね。これがメロディだった場合、実際に全員で演奏してみると1stと3rdがメロディを吹いていて、2ndと4thがオクターブ下を重ねてる、という形式になります。上の方が音域として通りやすく、作曲家もそちらをメロディと想定して書いてる訳です。じゃあ、オクターブ下は要らないのでしょうか?しかし要らないのなら書かない(か全員同じ音域にする)はずです。オクターブ下を重ねることによって、全体としてメロディがどんな音に聴こえてほしいと作曲家は考えたのでしょうか?それには概ね、プロの演奏が答えてくれています。オクターブ下を、上のメロディと音程もアーティキュレーションもカチリ合わせることによって、厚みを増したいのです。この辺はピアノを弾く人の方が分かりやすいのかと思います。作曲家も、多くはピアノを弾きながら曲を作るので、想定されているのは同じ手の違う指が、一定の間隔を保ったまま動くことによって2つの音型がぴったりと合って、構造としては下が上を支える訳です。これが下が少しでもずれてしまうと、それらはただの2つのバラバラな音にしかならないのです。むつかしい。。。
そう考えてみると、2nd以下も決してつまらない譜面ではないのかと思います。特にホルンは4本が基本なので、トップを吹ける回数は他の楽器よりも限られてきます。一番救いがないのは休みが多すぎる譜面です。休みが多い上にリハも多い本番は最悪ですね;;
最初に僕の昔話を書いたのは、上にぴったりつけるにはどうすればいいのかという方法論まで話すつもりだったからなんですが、長いのでいずれの機会にしようと思います。ここまでは、とりあえず下吹きの心算というもの、について4年間で考えてみたことを書き留めておきます。