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甲斐・信濃の旅(3日目)

旅もいよいよ3日目、今日は、天澤寺→武田八幡宮→恵林寺を回ります。恵林寺は塩山駅からバスが出ていますが(本数は少ないですが)、天澤寺と武田八幡宮はタクシーでないと行けません。かなり山奥のようで、不安はありますが、そこは信玄公パワーでふっきります。不安ですが楽しみです。その前に、大浴場で入浴をして筋肉をほぐし、朝食をしっかりとってエネルギーチャージ。

湯上がりのホームランバー
見た目から美味しい小鉢

いやが上にも期待が高まりますが、この他にも卵焼きや焼き魚が供され、ボリュームも満点。もちろん完食して、ホテルを出ました。道路挟んで向かい側がタクシー乗り場なので、タクシーはすぐにつかまりました。天澤寺、メジャーではないようで、運転手さんはご存知なかったです。
 予想以上に山の中で、タクシーを降りて門の前に立った時は、感動よりも、「どうやって帰ろうか……」という不安がこみ上げました。が、ここは飯富虎昌公と山縣昌景公のいらっしゃる場所、呆然としている場合ではありません。意を決して境内へ続く石段を登ります。

念願の天澤寺

そこで棒立ちしていてもしかたないので、境内へと入りました。人の姿がなく、不安が募る一方でしたが、そこから眺める甲府盆地は素晴らしかったです!!

素晴らしい眺めです

しばしこの絶景に見惚れていると、背後で人の気配が。ふりかえれば、坊守さんとおばしき女性の姿、内心安堵しつつ彼女に声をかけました。私の姿を見て出てきてくださったのです。「こんな山の中までよくぞきてくださった」と笑顔でおっしゃる彼女に、山縣昌景公のファンであることを伝えると、墓所への道筋を教えてくださいました。すぐに見つかると思ったのですが、これがなかなかわかりにくく、最初は行き過ぎてしまい見つからず。引き返して、掃除をされていた男性に改めて教えていただきました。そして、虎昌公と昌景公の場所を無事に発見。

(感涙)

万感胸に迫るという表現がありますが、この前に立って手を合わせた時の自分がまさにそれでした。児玉清さん演じる飯富虎昌公と篠田三郎さん演じる山縣昌景公の姿が脳内に像を結びます。オンデマンドで毎日のように観ていますからね、『武田信玄』、お二人が関わってくるエピソードが次々と思い起こされて、涙が溢れてきました。我ながら、けっこうな武田オタクっぷりです。
 ぐすぐすと鼻を啜りながら石段を下り始めた時、タクシーが来るのが見えました。墓所に行く前に電話をしておいたのです。ここまでのところ、タイムロスもほぼなく、順調です。
 かくして、タクシーは一路武田八幡宮へ。旅先でタクシー使うのは不安もつきまといますが、今回も幸いなことに、非常に感じの良い運転手さんでした。武田八幡宮までそこそこ時間がかかりましたが、車窓を流れてゆく景色が素晴らしすぎて、気になりませんでした。山梨の魅力の一つは、まちがいなく雄大な山々の姿です。
 武田八幡宮もかなりの山の中でした。運転手さんの携帯番号を教えていただき、一人、境内へと足を踏み入れます。と、ある看板がー。

ちょっと怖い

警告を目にすると緊張します。ちょっとばかり怖気づきましたが、作業員の方たちもいるし(補修工事でもしていたのか)、きっと大丈夫信玄公がお守りくださるはず!という根拠のない確信とともに、本堂へと向かいました。建物がいくつかあって、石段もかなり急でした。幸い熊の気配を感じることもなく、一通り回ってからお守りを買い、運転手さんに電話しました。10分ほどで戻れそうとのことです。ぼーっと立っていると、作業員の男性(60代くらい?)が「旅行ですか?」と話しかけてきました。口調も印象も感じが良かったので、「そうです」と普通に答えると、「大村美術館、時間があれば行くといいですよ、あそこは良いです」と勧めていただきました。申し訳ないことに、スケジュールの都合で寄れなかったのですが、運転手さんといいこの方といい、皆さん本当に親切で、山梨がますます好きになった次第です。お世話になりました。
 戻ってきたタクシーに乗って韮崎駅へ。富士山がよく見える駅とのことですが、本当によく見えました、天気があまり良くなかったのが残念です。

富士山は雲に隠れていた

この韮崎駅、市街地と比べるとホームがかなり高くて、ホームドアもないため、高所恐怖症の自分は電車が来るまで椅子に座りっぱなしでした(汗)。あまり、街中の方は見ないようにしました。

韮崎平和観音

 次の目的地は恵林寺です。昨年も訪れたこのお寺は、信玄公の菩提寺であり、信玄公が敬愛する快川紹喜(かいせん・じょうき)国師の眠る場所でもあります。実際には師が言われたものではないらしいですが、「安禅不必須山水 滅却心頭火自涼」は常に快川国師とセットで語られます。
 塩山駅に着いた時はちょうどお昼の時間でしたので、バスの時間まで余裕もあったので、駅前の食堂でランチをとることにしました。馬モツ煮込み定食なるメニューがあったので、馬肉好きの自分、チャレンジすることにしました。

馬モツ煮込み定食

定食についてくる小鉢が若干塩味きついような気がしましたが、馬モツ煮込みは美味しかったです。
 昼食を終え、1年ぶりの恵林寺にやってまいりました。信玄公の菩提寺であるにもかかわらず、周辺はひっそりしています。信玄公の月毎日にはお店も出るのでしょうか。善光寺が門前町も含めて賑わっていたことを思うと、寂しいかぎりです。

恵林寺

快川国師について、恵林寺公式ウェブサイトには以下のような説明が載っています。

天正10年(1582年)、武運つたなく、最後の当主勝頼と共に甲斐武田家が壮絶な滅亡を遂げたのち、山梨に侵入してきた織田信長の軍勢は恵林寺を取り囲み、国師以下、兵火を逃れて恵林寺に身を寄せていた老若上下、僧俗を問わず百名近く、一説によれば120名ほどが山門の楼閣上に押し込められ、放たれた火によって焼き殺されました。

安禅不必須山水(安禅は必ずしも山水をもちいず)
滅却心頭火自涼(心頭を滅却すれば 火も自ずから涼し)

という言葉は、炎に包まれて落命するこの最後の瞬間に、国師が唱えたものだといわれています。

(中略)

今日、恵林寺では、かつて荘厳な山門の楼閣が聳えていたであろうその場所に建つ現在の三門脇に、ささやかな供養塔がひっそりと佇んでいます。そして、あまり人の注意を集めることもないこの供養塔だけが、快川国師を偲ぶ唯一の遺構となっているのです。この供養塔に刻まれる「天正亡諸大和尚諸位禅師諸喝食各々霊位」という刻字が、かつての恵林寺の悲劇と、従容として過酷な運命を引き受けた国師と弟子たち、大勢の僧侶たちの無言の願いを今に伝えているのです。

「恵林寺」公式ウェブサイトより抜粋
https://erinji.jp/history/快川国師

織田信長に屈することなく、自身の信念を貫き通して劫火のなかに消えた快川国師。「心頭を滅却すれば 火も自ずから涼し」、この言葉を胸中に唱えながら供養塔の前に立つと、身も心も引き締まる思いでした。恵林寺には清冽な気が満ちているように思えます。

心静かに快川国師を偲ぶ

供養塔に手を合わせながら、またしても涙が。鼻をぐずぐずさせながら、雨降る中を明王殿へと向かいました。信玄公のお姿を模したという武田不動尊を拝み、『冥歩禅(みょうほぜん)』という暗闇の拝観路に入りました。

『冥歩禅』は、信玄公の霊廟である『武田不動尊明王殿』をお詣りいただいた後、一度、真っ暗な闇の中を歩きながら自分自身の心に向き合い、祈りの思いを確かなものにした上で、再び光の満ち溢れるこの世界に戻ってきていただくための瞑想路です。

「恵林寺」公式ウェブサイトより抜粋
https://erinji.jp/news/202110052414

高所恐怖症の私、暗所恐怖症でもあるため、途中スマホの光を頼りにしてしまいました。まだまだ修養が足りない(?)ようです。次回訪問した際には、暗闇を最後まで歩こうと思います。

毎月12日にのみ開かれる信玄公と武田24将の墓所

次回は2年後の訪問を予定しています。12日に合わせて訪れたいですね。というのは、明王殿には信玄公と武田24将の墓所があり、信玄公の月命日である12日にのみ、一般公開されるのです。一度でもここで祈ることがでかなら、心残りが一つ減ります。

さようなら恵林寺、また訪れる日まで

こうして、2度目の恵林寺訪問は終わりました。明後日からは灰色の日常に戻りますが、快川国師のお叱りを受けないような生き方をしていきたいです。
 ホテルに戻り、大浴場で身を清めた後は、お楽しみの夕食です。メインは、高原レタスと甲州ワインビーフのしゃぶしゃぶでしたが、写真撮るの忘れてしまいました。コースはすべて美味しかった。

牛肉握りとマグロ握り

牛肉握りといえば、前回山梨を訪れた時は、中途半端な時間に肉寿司を食べてしまい、せっかくのコースを完食できませんでした。都内と比較してリーズナブルなので、つい食べたくなるのです。今回は自制したので、夕食は2日とも完食できました。

肉寿司(2023年、甲府駅セレオ内の店にて)
赤ワインハイボール(同上)

「赤」と聞くと、山縣昌景公を連想してしまいます。赤が大好きな私ですが、日本史なら「武田の赤備え」、世界史なら、「レッドバロン(赤い男爵)」の名で知られるマンフレート・フォン・リヒトホーフェンが大好きです。運命だな、これは。iPhoneプロダクトレッド、新作も出してほしい。
 天気には恵まれませんでしたが、山梨の2日目もこうして無事に終わりました。明日は旅行最終日(涙)早めにチェックアウトして、円光院にまいります。信玄公ご正室の三条の御方様の菩提寺です。

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