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飯富

武田信玄公の崇拝者なので、当然、武田家臣団にも並みならぬ思い入れがある。7月、飯富虎昌・昌景兄弟の墓がある天澤寺に行き、二人の墓に泣きながら手を合わせたのだが、一説によれば、実際の墓は違う場所にあるという。『甲州怪談』によれば、それは身延市にあるらしいのだが、検索しても検索してもそれらしい情報にはヒットせず、かくなるうえは、身延市に赴いて聞きこみをするしかなさそうだ。もちろん、今日の明日というわけにはいかないのだが。
『甲州怪談』は、竹書房から発行されているご当地怪談シリーズの一冊で、このシリーズは何冊か持っているのだが、『甲州怪談』のみ、書店のカバーではなく、別途購入した和紙の文庫本カバーをつけてある。信玄公を敬愛する自分にとって、山梨は特別だからだ。『甲州怪談』、なかでも気に入って(?)いるのが、『飯富(いいとみ)』という一編。語り手は「晃司さん」という男性で、彼の職場の後輩で霊感に優れる「安藤さん」という男性をメインに話が進む。そこに飯富虎昌・山縣昌景兄弟の名前が登場してくるのだ。

「いやいや、そんな有明処ではなくて、永久寺と並びの八幡様ですよ。もっとも——あの辺りで最強なのは飯富家の場所ですけどね。ここは武将やその家臣かなぁ。武将団かなぁ。そういうものの魂が張り付いていますんで」
 オカルト全開の話だが、武田信玄関係は、晃司さんも好きで色々と読み漁っている。
「飯富っていうと、武田信玄の宿老の飯富虎昌のことか」
「あぁ。御存じでしたか。僕は詳しくないんですけど、多分、その飯富虎昌っていう方と、その弟君と家臣の方かなぁ? あの辺りでは最強の魂の集まりだと思いますよ。特に弟君の力は凄まじいです。邪なものを寄せ付けませんよ」

『甲州怪談』より「飯富(いいとみ)」
(神沼三平太)竹書房

「弟君(山縣昌景公)の力が凄まじく、邪なものを寄せ付けない」、このくだりを読んだら、飯富兄弟、特に山縣昌景公のファンである自分は行きたくなるに決まっている。ひとえに、大河ドラマ『武田信玄』によるところが大きいのだが、篠田三郎氏が演じる山縣昌景公も、児玉清氏が演じる飯富虎昌公も、実に魅力的だった。山本勘助を主役に据えた『風林火山』も、『武田信玄』とは違った面白さがあったが、やはり『武田信玄』だ。そもそも、『風林火山』に山縣昌景公は登場していなかった気がする。滝田栄氏主演の『徳川家康』には登場していたし、『信長 KING OF ZIPANGU』にも出ていた。第38回「長篠の戦い」で討ち死にするのだが、「申し上げます!! 山縣三郎兵衛さま、討ち死になさいました!!」の台詞を耳にした時は、胸がえぐられる思いだった。山縣昌景公の出番があった大河は、自分の記憶にまちがいがなければ、この3作だ。武田信玄をメインに描いた大河ドラマとしては、他に『天と地と』があるが(主役は上杉謙信だが)、作品を観る術がないので、確認できず……と思いきや、wikiで調べところ、本作品においても、山縣昌景公は飯富三郎兵衛尉の名前で登場していた。演じた方は河原崎健三氏、『武田信玄』にも出演された俳優さんである。
 次回は、長篠・設楽原古戦場跡地を巡ろうと思っていたのだが、『甲州怪談』を読み返して、山梨愛が再燃した次第だ。本当に、どうしよう。


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