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時刻表に乗る番外編 路線あれこれ #10   室蘭本線

室蘭本線

室蘭本線(むろらんほんせん)
●概要
長万部ー東室蘭ー岩見沢 209.3㎞
(支線)東室蘭ー室蘭 8.1㎞
開業:昭和3年(1928年) 全通
胆振線(いぶりせん)
●概要
伊達紋別ー倶知安(くっちゃん) 83.0㎞
(支線)京極ー脇方 7.5㎞
開業 昭和16年(1941年) 全通 
部分廃止 昭和45年(1970年) 京極ー脇方 7.5㎞廃止
廃止 昭和61年(1986年) 廃止→バス転換
万字線(まんじせん)
●概要
志文ー万字炭山
開業 大正3年(1914年)
廃止 昭和60年(1985年) 廃止→バス転換

北海道を支える基幹路線としての役割

 室蘭本線は明治25年(1892年)北海道炭礦鉄道として、室蘭(現東室蘭)ー岩見沢134.54㎞が早くも開通しました。明治30年(1897年)には室蘭を輪西(現東室蘭)に改称し、室蘭を西側4.67㎞の位置に新設しました。そして、明治39年(1906年)には官設鉄道に買収されます。

大正14年(1925年)室蘭本線関係路線図

 その後、室蘭より西側に延伸していた長輪線(おさわせん)を編入し、昭和6年に室蘭本線として、長万部ー岩見沢の現在の形に落ち着くことになります。
 室蘭本線の役割はなんといっても、夕張炭鉱や万字炭鉱から室蘭港への石炭輸送が大目的であり、さらに、旭川、稚内方面の旅客輸送(軍事輸送)にも大きな役割を果たしました。
 室蘭本線の室蘭ー岩見沢は、明治30年(1897年)に開通していますが、その当時はまだ青函航路は開通しておらず、本州ー北海道のメインルートは青森ー室蘭航路、森ー室蘭航路が主力でした。
 大正3年(1914年)の記録では、森ー室蘭航路では、150t前後の船が年間15,070人、貨物21,925個を運んでいます。また、青森ー室蘭航路は最盛期の大正時代半ばには、1000t前後の船により、年間5万人を運んだという記録も残っています。
 その後の本州ー北海道道央を結ぶメインルートは東北本線+函館本線に移り、それぞれ2本の急行が青函航路を挟んで互いに接続していました。
 室蘭航路+室蘭本線経由のルートはいわば裏街道的な存在となり、東北本線での接続は普通列車しかなく、普通列車利用客と貨物は室蘭ルート、優等列車利用客は青函航路からの小樽経由函館本線ルートと現在とは全く逆の旅客や貨物の流れであったそうです。
 そんな室蘭本線ですが、現在ではほぼ全線が複線化され、函館から札幌への特急列車は全て室蘭本線経由となっています。

室蘭本線を走った優等列車たち

Yankee Limited  上野ー東室蘭ー札幌 昭和29年(1954年)廃止→洞爺と命名
急行 洞爺    函館ー東室蘭ー札幌 昭和31年(1956年)すずらんに統合
急行 すずらん  函館ー東室蘭ー札幌 昭和60年(1985年)廃止
急行 石狩    函館ー東室蘭ー札幌 昭和43年(1968年)廃止
急行 たるまえ  函館ー東室蘭ー札幌 昭和43年(1968年)すずらんに統合
急行 ちとせ   室蘭ー札幌  平成2年(1990年)廃止
急行 アカシヤ  函館ー東室蘭ー札幌 昭和43年(1968年)すずらんに統合
急行 洞爺    洞爺ー東室蘭ー札幌 昭和47年(1972年)ちとせに統合
特急 北斗    函館ー旭川
         函館ー札幌
特急 スーパー北斗 函館ー札幌  令和2年(2020年)北斗に統合
特急 ライラック 室蘭ー旭川
特急 すずらん  室蘭ー札幌

特急 北斗
[使用写真]フリー素材 https://www.photo-ac.com/
撮影者:中村 昌寛さん

令和6年(2024年)7月号 時刻表
特急 北斗1号(1D)
函館発6時2分ー東室蘭着8時23分ー札幌着9時48分
連結車両 全車指定席 グリーン車

室蘭本線関係路線図(令和6年(2024年現在)
凡例:ピンク(現存),青(廃止)

胆振線・万字線

 胆振線【①】は脇方からの鉱石輸送のために建設された軽便鉄道をルーツにもつ路線です。大正8年(1919年)に倶知安ー京極13.36㎞が開業し、その一年後、大正9年(1920年)に京極軽便鉄道として、脇方までが開業し、鉱石輸送を開始しました。
 昭和3年(1928年)には胆振鉄道が京極ー喜茂別10.78㎞を開業。昭和16年(1941年)に伊達紋別方面から路線を伸ばしてきた胆振縦貫鉄道が伊達紋別ー京極69.5㎞を全通させ、胆振線の原型ができあがり、昭和19年(1944年)に支線も含めた全線を官設鉄道が買収しました。
 札幌発札幌行きの循環急行「いぶり」が函館本線ー胆振線ー室蘭本線を経由したり、倶知安機関区に配備された、前照灯を二つ備えた専用装備の蒸気機関車9600形が鉄道ファンの注目を浴びたりしました。
 しかし、後年は国鉄再建法の第二次特定地方交通線に指定され(輸送密度508人/日)、昭和61年(1986年)に廃止されました。
 万字線【②】は、まさに万字炭鉱からの石炭輸送のために建設された路線で、昭和53年(1978年)に貨物輸送が廃止されると、国鉄再建法における第一次特定地方交通線に指定され(営業キロ23.8㎞、輸送密度346人/日)、昭和60年(1985年)には廃止されてしまいました。まさに、日本の高度経済成長を支えた石炭産業のためにだけ存在したような路線でした。

室蘭本線の現在地

 室蘭本線は、北海道新幹線の並行区間ではなく、室蘭ー札幌ー旭川(岩見沢ー旭川は函館本線)という、北海道の中心都市を結ぶ、北海道内一の主要路線といえるでしょう。当然、JR北海道単独で維持可能な区間となっています。
 しかし、沼ノ端ー岩見沢【③】は同じ室蘭本線とはいえ、まったく別路線のようなローカル線の位置づけになってしまっており、平成28年(2016年)発表の資料でもJR北海道単独では維持することが困難な路線(輸送密度200人/日以上2000人/日未満)となってしまっています。
 北海道の他の路線にも言えることですが、JR北海道にすべてを丸投げするのではなく、国や北海道を含めた関係地方自治体、その他関連団体の力なくしてはやっていくことが難しいことは、国鉄が分割民営化された時からわかっていたことでした。分割民営化からはや30年以上経ちましたが、今こそ、全力で何らかの手を打たなくては本当にすべてが失われてしまいます。
 私も含めた、日本国民一人一人が危機意識を持って真剣に考えなければならない課題に今直面しているのだということを改めて認識させられました。

室蘭本線編 了


〔参考文献〕
・JR時刻表2024 7月号 (株)交通新聞社
・全国鉄道地図帳 昭文社
・駅名来歴辞典 国鉄・JR・第三セクター編 石野哲著 JTBパブリッシング
・日本鉄道旅行歴史地図帳 北海道 [監修]今尾恵介・原武史 日本鉄道旅行地図帳編集部[編] 新潮社
・鉄道ジャーナル 2021年4月号




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