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時刻表に乗る番外編 路線あれこれ #02   宗谷本線②

《昭和戦前時代》

 昭和時代に入ると、函館ー稚内路線は樺太経営の為にますます重要度を増し、北海道の中心である札幌を経由しない列車も現れました。これは、北海道内で新規路線が続々と開業してきた関係(札幌を経由しないほうが距離が短いルートができた)もありますが、今では考えられないことです。
 また、スピードアップも図るため、昭和5年(1930年)には全区間が急行に格上げされ、函館から稚内は18時間2分に短縮されました。
 大正時代の最初の急行が22時間59分かかっていたわけですから、ルート変更があったとは言え格段のスピードアップといえるでしょう。
 上野を14時30分発の青森行き急行に乗車した客は、青森と稚内で2度連絡船に乗り換え、樺太の中心地豊原に到着するのは上野を発った翌々日の19時25分という気の遠くなるような旅路ではありますが‥。

昭和戦前時代の時刻表
昭和3年(1928年)9.10改正

急行 稚内港行き(列車番号203)
函館発12時15分ー札幌経由せずー旭川着22時52分ー稚内港着6時56分
連結車両:2.3等車 和食食堂車 2等寝台

昭和12年(1937年)6.1改正
急行 稚内港行き(列車番号1)
函館発13時20分ー札幌着19時44分ー旭川着22時38分ー稚内港着6時48分
連結車両:2.3等車 和食食堂車 2等寝台 3等寝台

普通 稚内港行き(列車番号205)
函館発23時40分ー札幌経由せずー旭川着12時36分ー稚内港着20時42分
連結車両:2.3等車 2等寝台

昭和15年(1940年)10.10改正
急行 稚内桟橋行き(列車番号1)
函館発13時25分ー札幌着19時55分ー旭川着23時5分ー稚内港着6時42分
連結車両:2.3等車 和食食堂車 2等寝台 3等寝台

普通 稚内行き(列車番号305)
函館発23時47分ー札幌経由せずー旭川着12時36分ー稚内港着20時46分
連結車両:2.3等車 2等寝台 3等寝台

 いずれにせよ、宗谷本線は北海道内で、主要なルートのひとつであり、列車番号もトップナンバーの1が使われるなど、最も重要視されていたルートであることは間違いなさそうです。稚内行き急行に連結されていた2等寝台車には特別室が設置されており、要人の固定需要もあったようです。
 しかし、時代は戦争へと突入してゆき、昭和20年(1945年)3月までに、急行は全廃されてしまいました。

《戦後の時代》

 戦争が終わると、宗谷本線は樺太連絡という戦前の重要であった使命がなくなり、優等列車が走らなくなりました。
 主な役目は、沿線の炭鉱からの貨物輸送に転換していきます。そのため、大動脈としての地位は揺るがないものがあったのでしょう。
 昭和36年(1961年)7.1の改正でようやく準急「宗谷」が札幌ー稚内に設定されます。「宗谷」は3か月後には急行に格上げされ、他の北海道主要路線とようやく肩を並べることになりました。

宗谷本線を走った主な優等列車
急行 宗谷     (函館)札幌ー稚内(平成12年(2000年)特急に格上げ)
急行 サロベツ   札幌ー稚内(平成12年(2000年)特急に格上げ)
急行 礼文     旭川ー稚内(平成12年(2000年)廃止)
寝台急行 利尻   札幌ー稚内(平成12年(2000年)特急に格上げ)
特急 スーパー宗谷 札幌ー稚内 → 特急 宗谷 に名称変更
特急 サロベツ   札幌ー稚内 → 旭川ー稚内
寝台特急 利尻   札幌ー稚内(平成19年(2007年)事実上の廃止)

令和6年(2024年)7月
特急 宗谷 稚内行き(51D)
札幌発7時30分ー旭川着8時58分ー稚内着12時42分(5時間12分)

特急 宗谷
[使用写真]フリー素材 https://www.photo-ac.com/
撮影者:u***********************pさん

天北線を走った主な優等列車
急行 天北 札幌ー浜頓別ー稚内(平成元年(1989年)廃止)

宗谷本線の見所
・天塩川
司馬遼太郎「オホーツク街道」より(宗谷本線、幌延付近を走行中)
『札幌を午前十一時三十二分に出て、午後四時をすぎるころには、薄暮になった。
 車窓の右側には、低い山地がつづいている。はてもなく林がつづき、白い起伏がつづいている。
 左側は、天塩川に沿っている。
「川が凍っていますね」
 車掌さんにきいてみた。
「凍っています。三月になると、川の水が融けるんです」
 といってから、
「このあたりには、人が住んでいません」
 といった。』

名寄付近の天塩川
[使用写真]フリー素材 https://www.photo-ac.com/
撮影者:中村 昌寛さん

 天塩川は亜寒帯の川であり、冬季は川が一面凍る時期があります。司馬さんが見たのもそのような風景だったのでしょう。

・利尻富士
抜海ー南稚内の区間では、日本海に浮かぶ利尻富士を存分に眺めることができます。

利尻富士
[使用写真]フリー素材 https://www.photo-ac.com/
撮影者:u***********************pさん

次回へつづく


〔参考文献〕
・JR時刻表2024 7月号 (株)交通新聞社
・全国鉄道地図帳 昭文社
・駅名来歴辞典 国鉄・JR・第三セクター編 石野哲著 JTBパブリッシング
・日本鉄道旅行歴史地図帳 北海道 [監修]今尾恵介・原武史 日本鉄道旅行地図帳編集部[編] 新潮社



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