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時刻表に乗る番外編 路線あれこれ #07   根室本線①

根室本線

根室本線(ねむろほんせん)
●概要
滝川(たきかわ)ー根室(ねむろ) 446.8㎞
開業:大正10年(1921年) 滝川ー根室全通
部分廃止:令和6年(2024年) 富良野ー新得 81.7㎞
富良野線(ふらのせん)
●概要
旭川ー富良野 54.8㎞
開業:明治38年(1905年) 釧路線として開業

道東の中心とを結ぶ重要路線としての整備

 明治33年(1900年)北海道官設鉄道十勝線として、下富良野(現富良野)ー鹿越【①】36.85㎞が開業したところから建設がスタートしました。釧路側は明治34年(1901年)北海道官設鉄道釧路線として、釧路ー白糠【②】27.84㎞が開業。富良野側、釧路側から順次路線を伸ばし、明治38年(1905年)には北海道官設鉄道から、官設鉄道へ移管されました。明治40年(1907年)には旭川ー下富良野(現富良野)ー釧路309.15㎞が全通し釧路線と名乗りました。大正2年(1913年)に滝川ー下富良野(現富良野)57.61㎞が開業し、旭川ー下富良野(現富良野)を富良野線として分離し、滝川ー釧路を釧路本線と改称しました。その後は釧路から根室方面に順次路線を伸ばし、大正10年(1921年)滝川ー根室447.24㎞が全通し、路線名称も根室本線と改称されました。
 根室本線は、明治44年(1911年)には道内初の急行列車(函館ー旭川ー釧路(旭川以遠は普通列車))が設定されるほどの道内最重要路線としての地位を確立しました。旭川経由であったため、全区間で25時間45分を要した列車ではありましたが、、。滝川経由となってからは、22時間程度の所要時間に落ち着きました。

明治44年(1911年)7.1改正 の時刻表
急行 釧路行き(旭川からは普通列車)
函館発18時30分ー札幌着5時0分ー旭川着8時52分ー釧路着20時15分
連結車両 1.2.3等車 1等寝台車

大正2年(1913年)12.16改正 の時刻表
急行 釧路行き(下富良野からは普通列車)
函館発19時10分ー札幌着6時0分ー釧路着17時36分
連結車両 1.2.3等車 1等寝台車

大正11年(1922年)11.1改正 の時刻表
急行 釧路行き
函館発23時15分ー札幌着7時30分ー釧路着20時10分
連結車両 1.2.3等車 1等寝台車 2等寝台車 食堂車

大正14年(1925年)根室本線関係路線図

詩人たちからみた根室本線

旭川ー釧路(釧路線)【A】 明治41年(1908年)1月21日
 午前六時半、白石氏と共に釧路行一番の旭川発に乗つた。程なくして枯林の中から旭日が赤々と上つた。空知川の岸に添うて上る。此辺が所謂最も北海道的な所だ。
 石狩十勝の国境を越えて、五分間を要する大トンネルを通ると、右の方一望幾百里、真に譬ふるに辞なき大景である。汽車は逶迤たる路を下つて、午后三時半帯広町を通過、九時半釧路に着。

石川啄木「石川啄木全集」5巻日記Ⅰ

根室ー別当賀(根室本線)【B】 昭和13年(1938年)
 午後三時の汽車で立つ。雨はあがり、汽車は広い草原を更に半島の東の方へ走り出すのだが、次第に迂廻して、草原に大きく半円を描いて西へ向きなおる。鉄路の端というものはこうなっているのかと、面白く思う。
 やがて、左手に太平洋が見える。島が二つ、周囲が切り立っていて上部は平で草ばかりの美しい島が岸に近く見える。地図で見ると水晶島という名だ。汽車は、寒い処から逃げ出すとでもいった格好で、やや下り気味の草原を一さんに走る。

伊藤整「根室」

本別ー池田(網走本線)【C】 大正15年(1926年)10月12日
 本別といふ駅で軍人が多勢乗り込んで来た。師団長にその幕僚といふ一行らしかつた。第七師団の演習が十勝平野で行はれてゐる由を聞いてゐたが今この辺でやつてゐたのだ。この分では今夜の宿など困りはせぬかと案じてゐるうち、池田着。サーベルの音に混つて我等も降りた。駅いつぱいの兵隊である。

若山牧水「北海道行脚日記」

 名だたる歌人たちが、北海道の風景に圧倒され、表現しうる限りの表現でその印象を文章に残そうとしている姿が垣間見えます。(A,B,Cは地図上に表記しましたので、どのあたりの話かご確認ください)
 特に、石川啄木が記録している石狩十勝国境付近は狩勝峠があり、日本三大車窓の一つに数えられています。石川啄木が通過した際は、現在とはルートが異なる旧線でした。高原を大カーブを描きながら進み、車窓には雄大な景色が広がっていたことでしょう。

根室本線の見所

・狩勝峠(落合ー新得)
 前項でも触れましたが、狩勝峠は、石狩国と十勝国の国境にある峠で、昭和41年(1966年)に現在の新線が開通するまでは、新得から狩勝トンネルまでは25‰の急勾配と急カーブが連続し、蒸気機関車時代には雄大な景色の中を2台の機関車が煙を上げて一歩ずつ坂を上る姿が、多くの鉄道ファンを魅了しました。石狩側にはスイッチバックの信号所も存在しました。

狩勝峠から見た十勝平野
[使用写真]フリー素材 https://www.photo-ac.com/
撮影者:ひかる3号さん

・厚内ー尺別【D】 
太平洋を望みながら、荒涼たる湿原の中を走る区間です。
・別寒辺牛湿原(厚岸ー糸魚沢)【E】 
ラムサール条約湿地の厚岸湖・別寒辺牛湿原の湿原には塩分が含まれている特徴があり、そのため秋になるとアッケシソウ(サンゴソウ)が見ごろとなります。
・根釧原野(厚床ー別当賀)【F】 
オホーツク海と太平洋の分水嶺となる根釧原野の段丘の尾根を行くと、道東らしい雄大な景観が広がります。

根室本線を走った優等列車たち

普通 からまつ 小樽ー釧路 昭和55年(1980年)廃止
急行 ぬさまい 帯広ー釧路 昭和55年(1980年)廃止
急行 十勝   札幌ー帯広 昭和43年(1968年)急行狩勝に統合
急行 そらち  小樽ー富良野など 昭和47年(1972年)廃止
急行 摩周   函館ー釧路 昭和39年(1964年)特急おおとりに統合
急行 まりも  函館ー根室 昭和43年(1968年)急行狩勝に統合
急行 まりも  札幌ー石勝線ー釧路 平成5年(1993年廃止)
特急 まりも  札幌ー石勝線ー釧路 平成20年(2008年廃止)
急行 阿寒   札幌ー根室 昭和43年(1968年)急行狩勝に統合
急行 狩勝   札幌ー釧路 平成2年(1990年)快速に格下げ
急行 ノサップ 釧路ー根室 平成元年(1989年)快速に格下げ
特急 とかち  札幌ー石勝線ー帯広 
        平成3年(1991年)スーパーとかちに改称
特急 スーパーとかち 札幌ー石勝線ー帯広
        令和2年(2020年)とかちに改称
特急 おおぞら 函館ー滝川ー釧路
        札幌ー石勝線ー釧路 
        平成13年(2000年)スーパーおおぞらに改称
特急 スーパーおおぞら 札幌ー石勝線ー釧路
        令和2年(2020年)おおぞらに改称

特急 おおぞら
[使用写真]フリー素材 https://www.photo-ac.com/
撮影者:nozomi500さん

令和6年(2024年)7月号の時刻表
特急 おおぞら1号(4001D) 釧路行き
札幌発6時48分ー石勝線経由ー帯広着9時18分ー釧路着10時56分
所要時間 4時間8分
連結車両 全車指定席 グリーン車

次回へつづく


〔参考文献〕
・JR時刻表2024 7月号 (株)交通新聞社
・全国鉄道地図帳 昭文社
・駅名来歴辞典 国鉄・JR・第三セクター編 石野哲著 JTBパブリッシング
・日本鉄道旅行歴史地図帳 北海道 [監修]今尾恵介・原武史 日本鉄道旅行地図帳編集部[編] 新潮社
・鉄道ジャーナル 2021年4月号




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