今が最高におもしろい、ヤーレンズの話
この記事はタイトルの通り、今が最高におもしろいコンビであるヤーレンズという漫才師の話をする。
名前だけでもとは言わない。できれば観てから帰ってほしい。
そして言いふらしてほしい。
この記事は単純接触効果を狙っています。
①3分で観終わるヤーレンズ
リンクを貼る。
3分で観終わるヤーレンズ。
覚えてもらえたなら、正直、ここまでで十分である。
ヤーレンズはめちゃくちゃおもしろい。
以下は私から見た彼らとそれにまつわる感想。
お笑いシーンを知らない人間がヤーレンズに出会ったことを思うがままに書き連ねて生まれた約4000字だ。
総括したとて、論旨は「ヤーレンズおもしろい」のみ。
12月18日、これからM-1敗者復活戦あります。
ヤーレンズ出ます。
②知った経緯とひとまずの所見
きっかけは昨年のM-1グランプリ。そこから地下芸人と呼ばれる方々の存在を知った。
なるほど、これは知らない場所だ。楽しいぞ。
そう思ってからすることは「ライブ配信を観る」だった。
今まで知らなかった芸人を観られることも、ネタも、何もかもおもしろい。見識が深まっていくように感じた。
経験を買うのが好きなので、こういう瞬間は素晴らしい。
ヤーレンズは買った配信によく出ていた。
「おもしろいな〜」から「めちゃくちゃおもしろいな〜」、「あれ?この人たちあまりにもおもしろいのでは?」が早かった。
ずっとおもしろかったので、すっかりファンになっていた。
ライブの配信を買って、毎月トークライブを観て、毎週ラジオを聴いて、彼らを目当てに劇場に行くようになる。
リアルタイムでの追っかけは非常に興味深い。
観るたびにネタの印象がガラッと変わっていたりするので目が離せなくなる。
お笑いファンってこういうのが楽しいのかな。
なるほど。安定と変化の推移か。
うっすらとお笑いシーンを知っていく。
やっぱりいちばんおもしろくて好きなのはヤーレンズだった。
これは後々、ウワーってなる。
③引き出しの生成
ヤーレンズはよくわからないお喋りのような導入からシームレスな流れに乗る細かい応酬がおもしろい。
そんな、いつまでも観ていられるようなネタが多い。
うまく言い表せないがすごくヤーレンズっぽい動画のリンクを貼る。
形容し難いが、とてもそう思う。
つかみから話のまくらで9割で本ネタが1割。ヤーレンズっぽい。
東京に用事があったとき、1週間の滞在をいいように使って観られるだけ劇場に足を運んでみた。
一日に複数のライブを観るためにはじめて劇場をハシゴした。
東京に1週間もいたら、見ようと思えば、彼らの姿はめちゃくちゃ観られる。たぶん、このM-1の時期はそれはもうかなりの本数を観ることができるのだろう。
私は同じものを何度でも飽きずに観られるし食べられるし聴けるほうだが、それでもやっぱり何度目でも彼らはおもしろかった。なんなら回数を重ねたほうがおもしろかった。
かといって毎度同じネタをやっているかと言えば、そんなこともなかった。
まあまあ後ろの席でうるさくしないように観ていたが、どこにいても近かった。
たくさんのライブに出てさらにネタの調整をしているところを、たまたま観ることができたのも彼らが初めてだった。
自分の中に大きな引き出しができた。
代わりはいない。
彼らがたくさんのライブに出ていたから、そこで別の芸人をたくさん観た。他に好きなコンビもできた。
知らない世界を知る機会は貴重で、また興味を持つことも出来る、いい体験だった。
最高じゃん。なんて楽しくておもしろいんだろう。
⑤M-1グランプリ
そんな中で始まったM-1グランプリ。一年でいちばん大きい賞レースだ。
ここで勝ち進めば「売れる」ことに直結する。
当人たちはメディア露出が増え、単価が上がり、芸事のみでたくさんごはんが食べられる。
また我々コンシューマーはコンテンツとして彼らを楽しむ時間が増える。
お笑いコンビは売れると続くようなので、彼らには売れてほしかった。
特定のコンビのファンとして、はじめて緒戦から追った。
M-1用のネタはいつもよりずっと短い尺だが、観ても足りないことはなく、もはや洪水だった。
知っているヤーレンズのいいとこ取り。そんな印象だった。
いつしか先述のぼんやりした「売れてほしい」が「M-1でどうしても勝ち上がってほしい」に変わっていった。
おふたりが「売れたいね〜」とおっしゃっていたからだ。こんなにおもしろいのに彼らは売れていないらしい。
M-1でファイナリストになれば人生が変わるのは聞き及んでいたし、それをテレビでも見ていたはずだった。
今まで、その意味を理解していなかった。
「売れない芸人」が醸し出すちくちくした雰囲気にようやく目を向けることになる。
ツッコミ、出井さんの著書。売れる売れないの重さが書かれている。
こんなにおもしろいのに売れてないの?
なんで?
そう思ってから更に積極的に観るようになった。
ずっと観ていたからか、パーソナライズされたトレンドはとにかく彼らの名前を出した。
サジェストには「仕上がってる」の文字。
そう言われていたし、私も仕上がっていると思った。
仕上がっているとは思うしそう言っていたが、何をもって仕上がりとするのかはわからなかった。
しかし、何度も観て、これは仕上がっていると感じた。
仕上がっていると言いたいだけだったのかもしれないが、あの姿は仕上がっていた。
華もあった。強くてかっこよかった。
最初に載せたM-1予選のネタ動画は、余裕があるのに隙がない、あまりにもおもしろいヤーレンズだった。
⑥めちゃくちゃになる
ヤーレンズは準決勝に進んだ。過去最多応募数である7261組の中から選ばれた27組の中の一組がヤーレンズ。
これはすごく大事だし何回も声を大にして言いたい。
この準決勝進出はとんでもないことである。
ウワーって言って喜んだ。
そして、そこから9組に絞られる。
その発表が行われる生配信を観た。
読み上げられるエントリーナンバーとコンビ名。
結果として、その9組には入らなかった。
このまま敗者復活戦に行き、視聴者投票で1位になれば決勝進出となる。
そこで勝ち上がる姿はいくらでも想像できる。できるが、発表時、ストレートで行かないんだ……と呆然とした。
これは誰がいいとか悪いとかおもしろいとかおもしろくなかったとかではなく、どのコンビが決勝に駒を進めても納得だった。決して負けたとは思わなかった。
ただ、選ばれなかったことにはおいおい泣いた。
悲しいでも悔しいでもないし、本心から結果に対してちっとも不満はなかった。
なので、ただよくわからないまま、べしょべしょに泣いた。
ずっとよくわからない私はとりあえず「やだ〜〜〜!!」と叫んだ。
肩入れしていた。
賞レースに全力をかけている芸人のファンが毎年こんな思いをしているのかと思うと、
「えっこれめちゃくちゃ大変じゃない?たった1年くらいのファンなのに、こんな気持ちになる?」
と、ここでもウワーとなった。
これはえらいこっちゃ。
勝手にファンになっているのにな。人生、重てえ。
でもヤーレンズはずっとおもしろい。
12月18日、これからM-1敗者復活戦あります。
ヤーレンズ出ます。
⑦これから
おふたりはトークライブ等でよく自身の立ち位置をお話されている。
聞けば聞くほど、芸事でごはんを食べるのは難しいことらしいことだけは伝わった。
こんなにもおもしろいので、なんとかなってほしすぎた。
出ているライブの「お目当ての芸人」や「備考欄」に名前を書くとバックが多くなるらしいと聞いたので、ささやかながらやってみている。
裏方のことはまったくわからないので、意味があればうれしい。
なんとかなってほしいって簡単に言えるけど、こればっかりはどうしようもできないしな。配信とかライブとか、好きで観てるだけだし。たまたま応援という言葉がちょうどよくてそこに乗っかっただけなんだけど、心底おもしろいと思って観てるから、このまま、微力ながらも背中を押してたらどうにかなってないかな…の気持ちと、うるせ〜〜〜〜おまえは黙ってライブ観てろ!!おもしろかったらおもしろかったですって書くだけでいいんだよ!の気持ちがせめぎ合う。
M-1以前からトークライブに来ているファンは古参を名乗っていいらしい。
古参だなんておこがましくて大声ではとても言えそうにないが、私は近しい人たちに吹聴しまくる。
ヤーレンズのファンだからおもしろいのはずっと知ってたわ。
遠方に住んでいるため、ひょいひょい劇場に通うことはできない。
なので、これはしばらく経ってから気付くのだが、彼らは他の芸人よりも圧倒的にネタ時間が長いらしい。
他の芸人が5分尺でやっているところを倍はやっていたりする。
そこで守るべきネタ尺があることを知る。
彼らは10分以上舞台に立ち続けていることもあれば、7分のときも5分のときもあった。でもほとんどが10分近かった。
「ヤーレンズさん時間押してます!」「巻いてください!」という声や雰囲気を感じ取る。
劇場に足を運んだとき、他コンビの倍はやってないか…?とハッとし、時計を確認すると本当に10分経っていた。
他のコンビはやっぱり5分くらいだった。
尺が長いことを実感したところ、ある会場で30分ぶっ続けでやっている姿を直接目にすることになる。
30分。
はじめに載せたM-1三回戦のネタは3分である。単純に桁がひとつ増えた。
私はそんな尺の漫才を観たことがない。
30分もやっていたらだらだら喋っていそうだが、掛け合いのテンポは早い。その間、私はおもしろすぎてずっと笑っていた。
こんなにたっぷりの尺でやってくれるんだ!くらいの感覚だったので、時計を見てぞっとした。
ここまでくるともはや恐怖を覚える。
替えのきかない引き出しの中に入るのは、やっぱりヤーレンズだけだった。
ヤーレンズのファンになった瞬間を覚えている。
下手側にいるボケの楢原さんが、客席を一瞥しながら「笑ってね〜」と胡散臭そうな笑顔で言ったときだ。
たった一言、たったひと挙動だが、肩入れする瞬間なんてこんなもんなのである。