番外編 エレゾオーベルジュ 意識高い系だがジビエは美味しい

北海道の十勝とは言っても帯広からは50キロくらい離れた十勝川河口付近の豊頃町大津に出来たオーベルジュ。運営主体のエレゾグループはエゾシカを中心にジビエを解体してレストランなどに出荷するとともに一部を加工して販売し、さらには東京でレストランも経営しています。以前のエゾシカ肉は臭みが強くてとても食べられなかったのですが、その先入観念が変わったのは5年ほど前に北海道静内町にある「あま屋」でエゾシカ肉のトマトしゃぶしゃぶを食べたときでした。そこで仕留めてから解体するまでの時間が非常に重要であることを知りました。
今回エレゾの代表からさらに詳しい話を聞くことが出来ました。販売するのは4歳までのエゾシカが対象で、暴れないようにライフルでは首から上を狙い、処理場に運び込むまでの時間は2時間以内に限っているとのことです。
解体処理方法を改善することによって付加価値をあげ、それによりさらにレストランなどの新たな需要も創出してハンターを雇用するとともに企業としての経営も両立させたのですから大したものです。そして人気があまりなくて余ってしまう部位を加工に回して無駄なくすべて消費するよう努力しているそうで方向性はまさにその通りと思いました。さらにスタッフの方が10名以上、ネット上の写真なども見るとさらに同じ数くらいのお子さんたちもいるようですが豊頃町大津というコンビニもない集落でしっかりと地域社会に溶け込んで暮らしているのも素晴らしいと思います。

レストランでの食事について
食事は6時半スタートでその時刻にレストランのシャッターが上がります。
ちょっと外でシャッターが開くのを待つというスタイルに違和感は感じました。冬も同じシステムなんでしょうか?当日は風が強かったので入口近くの写真説明時にスタッフの方が暖簾を必死に抱えて抑えていました。

シャッターが上がると暖簾がお目見え

暖簾をくぐって、エントランス部の廊下に掲げられた10枚ほどの写真を説明付きで鑑賞し、ウェイティングルームでビデオが流されます。
 写真は芸術的すぎるのか正直よくわからない。ビデオもドローンで波打ち際と狩猟用の車が映っていたのは覚えているが記憶にほとんど残っていない。ビデオの最後に代表と各部門の方の上半身裸の姿が映るのですがプロレスのポスターを連想してしまいました。
いよいよレストランに入室し、食事が始まります。写真は撮影できないのですが、SNSにはアップされた写真も出てますので参考にしてください。結構定番の料理が多いようです。
最初のエゾシカを使ったコンソメスープ「命のスープ」は濃厚で驚きました。
次のシャルキュトリを含めた前菜も新鮮で遠くまで来てよかったと思いました。材料の状態は毎日同じではないので微調整しながら作っているんですという責任者の方の説明も好感が持てました。地元で採れたサーモンもスモークが効果的で楽しめました。
残念に感じたのは普通は半年で出荷する豚を一年半飼育したというローストポークでした。筋繊維がしっかりしているとの説明でしたが、硬くて私にはそのおいしさがあまり理解できませんでした。(前日に食べた帯広「はげ天」の豚丼のように柔らかいのが好みなんですがやはり私の味覚がレベルの高さについていけないだけなんでしょうか?)
追記)先日偶然おそらく同系統の生産者さんによる同じく一年半飼育の豚肉のローストを別の店で食べる機会がありましたがジューシーでしっかりしていてとてもおいしかったです。一年半の時間をかける意味がよく分かりました。調理する場面も同じように見ていましたので味に対する評価の違いに関していくつか思い当たる点はありましたがここでは割愛。
最後はエゾシカのひれ肉とハツのステーキでしたが鹿肉のハツなど全くの初体験でしたので感激でした。ひれ肉もジビエらしくなく素直に味わえましたね。個人的にはパンとバターが欲しかったような・・・
翌日の朝食はポトフとハムのパニーニでしたが普通においしかったです。
全体的な印象としては代表はじめとするスタッフの方も基本穏やかで意見を押し付けるわけでもないので楽しいひと時を過ごすことが出来ました。
個性的なスタッフの方が多い印象でしたが離職率も低いという記事が本当ならその人たちを束ねている代表の力量、求心力は相当高いのではないかと思いました。

宿泊について
崖の上のレストランの隣に3棟の宿泊棟があります。ここに関しては問題点が多かったような気がします。

問題点1 遮光設備不備 
窓にはロールカーテンだけしかありません。建物に入ったとき、外の地面との高低差が割とあるため着替えの際などはこのロールカーテンを下まで全部下げないと外から丸見えです。
またロールカーテン自体の遮光機能も不十分です。ミラーレースのカーテンとかないと女性は困るんじゃないでしょうか。

問題点2 時計、テレビがない 
あえて時計もテレビもおかず非日常的な時間を過ごしてほしいという方針のようですが、時計がなかったらどうやって6時半ちょうどにレストランに行けるのかと突っ込みを入れたくなります。(スマホはありますが)
またWi-Fiは完備なのでパソコンがあればテレビの代用もほぼ可能です。
時計やテレビを置かないのことにこだわることはやめ、どのように過ごすかはお客さんに任せるべきではないでしょうか。

問題点3 断熱機能不足
裏のバルコニーに出る場所の扉は室内用としか思えない代物です。断熱機能も気密性も著しく低いように見えます。このドアでは冬は隙間風による音も大きそうなんですが。最近は断熱性に優れた窓もあるようですので北海道の家も必ずしも二重窓ではないのですがが部屋の窓も心もとなく見えました。

問題点4 座るとテラスから海が見えない! 
テラスからは崖上からの素晴らしい海の景色が楽しめるのですが、テラスの下側には風除けがあるので用意してある小さな椅子に座ると海が全く見えません。立って風除けに寄りかかると不安定なのであまり寄りかかることも出来ず何のためのテラスなのかという疑問がわいてきて残念でした。そもそものんびり外の風景を楽しめないのなら宿泊施設を風の強い崖の上に建てる必要があったのでしょうか?

テラス

その他照明や家具など細かいところは省きますが、全体的にトイレや風呂のバスタブ、備品、冷蔵庫内の飲料やお菓子などこだわりを感じる部分と並みの部分が混在していてちぐはぐな印象が強かったです。
何より場所がわからない!  これに関して最後に苦言を1つ。
まず、固定電話がないのは今の世の中仕方ないことですがナビに電話番号が入れられません。住所入れてもナビは豊頃町大津までしか案内してくれません。2024年春の段階ではGoogle Mapでもオーベルジュに向かう最後の道は載っていませんでした。スタッフに尋ねたところやはり途中で迷う人は多いようで大津の集落までしか来れない人が多いとのことでしたが、それに続いてなんと「そんな中でもたどり着いていただきたいんですよね」という信じられないお言葉が・・・ 
我々は崖の上の建物を視覚的に確認出来ていたので試行錯誤の末なんとかエレゾまでたどり着くことが出来ました。確かに最後左折するところに小さな看板がひとつありました。しかし冬の北海道は午後4時にはもう暗いのです。地吹雪の日もあるでしょう。そんなときに東京や関西からナビだけを頼りにレンタカーでエレゾを目指すお客さんもいるわけですからもう少し親切な道案内の方法を考えてもらいたいものです。
スタッフの何気ない一言から全体を断定することは危険ではありますが、そのような意識が全くなければ出てこない言葉だとは思いました。



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