手紙
その人の手を、強く握った。
この世界のどこかの知らないあなたへ
あなたは今、幸せですか?なんて聞いたらあなたは
恵まれてるし、不自由じゃないから幸せなんだ
と言ってしまうでしょうか
あなたは今、つらいですか?と聞いたらあなたは、ちゃんと「つらいです」と言ってくれるでしょうか
周りを見れば、自分なんかよりもずっとずっと素晴らしい尊敬すべき人々がいて、すごく強い人々がいて、弱くて情けない自分が嫌になってもそれを変えることすらできないあなたに、もしもこの手紙が届くのなら
あなたがいるところはきっと、私もいる世界です。
恵まれてるはずなのに、なんでもできるはずなのに、なんにもできないまま、私もここにいます。
全く褒められるような人じゃないけど、誰の役にも立たないけど、こんなことしてる暇があるならきちんとしなさいって怒られたり笑われたりしてしまうかもしれないけど、それでも必死に何かを探そうとしています。
だから私は、何も知らない、会ったこともないあなたのことを探そうと思います。
もし私の言葉があなたのためになるなら、私はとても嬉しいです。
そんな宛先のない手紙を書いては破り捨てようとするその人の手を、
強く握って止めた。
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