鑑定機関について(3)
前回の内容、いま読み返してみるとえらい読みにくいっすね。
書いてるうちにあまりに長くてぐだぐだになってたからなあ。
微反省。
さてそろそろ飽きがきてるかと思いますが、まぁ書き始めちゃったので最後まで書きます。
「鑑定機関について」の3回目。今回は補足的な戯言です。
トレーディングカードの鑑定を行ってるところはいくつかありますが、一般的にコレクターの信頼をある程度得ているところは「PSA」と「BECKETT」の2つくらいでしょう。
「PSA」は元々はベースボールカードの鑑定を行っていた、コレクタブルカードの鑑定専門の機関です。カードのグレードは10段間でシンプルに表され、最大評価である「10」がついたカードは通常の数倍の値段にて取引されています。
「BECKETT」も同様の会社ですが、こちらは鑑定以外にも幅広くビジネスを行っております。代表的なものに雑誌の発行とか。カードのグレードはPSAと同じく10段階で表されますがこちらは小数点以下1ケタに「0.5」が存在します。「9.5」とかそんな感じで。実質20段間評価とも言えるのかな?
さらにこちらは裏面にこのスコアの内訳とも言える4つのスコアが記載されています。内訳の4つは以下のとおり。
[Centering] 印刷位置。きちんと中央に寄っているか。
[Corners] カードの縁の状態。
[Edges] カードの角の状態。
[Surface] カードの表面の状態。
なので、BECKETTの評価は総合評価だけではなく、個々の数値も重要となっています。
さて、ここまで読まれた方は「BECKETTすげー」と思ってると思われます。
ま、実際気分がいいんですけどね。BECKETTの鑑定済カードを見ると。
すごくすっきりするんです。細かな評価があって、それプラス総合評価が明確に数字で出ると。
でも私は、BECKETTはオススメいたしません。私が鑑定に出すならPSA以外の選択肢はありません。
なぜなら…
■知名度
PSAのほうが圧倒的に知名度があります。
アメリカのオークションサイトeBayのトレーディングカード・コーナーで、「PSA」と「BECKETT」を検索してみれば一目瞭然です。
■信頼度
まあこれはどちらもミスはありますが。
しかし、前回散々「PSAはミスをする」とか「PSAはニセモノカードまで鑑定しちゃったり」と書いてた私が言うのもアレですが、それでもPSAのほうが信頼度が高いんです。
BECKETTの鑑定済みカードは一見すばらしいです。たくさん数字かいてますしいかにも信頼できそう。
でも世間の評価は賛否両論です。非常に高く評価している人もいれば、BECKETTの評価済みケースを開封して、PSAで再鑑定するような人もいます。
原因はいろいろありますが、鑑定結果が不安定なんです。また、総合的な「10」はなかなかでませんが、内訳の数字を見ると9.0とか9.5、あげくには10がけっこう飛び出すんです。10ってのは「100%完璧」ですよ。そんな「完璧」の評価をぽんぽん出すところが信頼できますか?
また総合評価のつけかたも問題です。
BECKETTの総合評価は、なんらかのロジックもしくは計算式を用いて4つのサブスコアから算出されていると思われますが……これってよく考えると少々おかしな話です。考えて見てください。表面が完璧(10)、位置も完璧(10)。…でも、角と縁がそれぞれ傷有り(8.0)だとした場合……このカード評価は「9.0」もしくは「9.5」でしょうか?
私なら「8.0」をつけます。だって確実に「8.0」としか評価できない問題点があるんですから。
カードの評価というのは減点法なんです。たとえ3つの要素である位置・縁・表面が完璧(10.0)でも、角に大きな問題(5.0)があったらそのカードの評価は「5.0」なんですよ。カードの問題点、悪いところを探し出すのか「カードの評価」。私はそう思ってます。
■流通
上記の理由も手伝って、いま現在でもBECKETT鑑定カードはあまり流通してません。
流通してないということは価値が低いんです。
安く手に入る代わりに、安くしか売れないんです。
でも日本人にはよく売れるんですよね。仕入れるのにはいいかも。
もちろんPSAにも問題点は多いです。
基本的にエラーカード&ミスプリントは鑑定の対象外(最近ちょっと緩和されてきました)、エキスパンション名のミスも発生します。また「8かなー? 9かなー?」というボーダーラインのカードのグレードは、その鑑定をした人の一存で決まる(8.5などの微妙な数がない)ので結構納得のいかない鑑定結果をよこすこともあります。
でもそれらは、見方を変えるとある種すべて「仕方のない」こととも言えます。
エラーカード&ミスプリントは「正規のカードではない」。すなわち評価はゼロでも文句が言えません。
エキスパンション名についてはもっと勉強しろ!としか言えませんが、さしあたって大きな問題になることは少ないです。そもそもBECKETTも発行年月日とかセットとか間違ったりもするし。
小数点以下の微妙なスコアがないということは、それだけはっきりとした結果を返すこととも言えます。
8か9かのボーダーなら「9」が欲しいのが本音ですが、それを「8」とする場合があるということはそれだけ厳しく見た結果とも言えます。
ま、この話を突き詰めると「ナゼ鑑定をするのか?」という話になっちゃいますね。
結局のところみんないい数字が欲しいんです。売るほうも、買うほうも。
人間「数字」と「権威」に弱いからね。
ショップ側もソレを期待して、その「数字&権威」を得るためにわざわざ鑑定依頼をしてから販売してるので、どっちもどっちと言っちゃそれまでですが。PSA9が付けば「NearMint」として売る1.7〜1.9倍の値段で売れるからなあ。普通に「NearMint」として売ってるものもPSA8〜9レベルのものなのに…。
「満足」が欲しい方は、裏面にいい数字をたくさん書いてくれるBECKETTをドウゾ。なんか色々な数字が書いてあり、その中には通常なかなか出ないようないいスコアも書いてあるので、楽しい一時がすごせます。
「完全」が欲しい方は、PSAと一緒にマゾな鑑定地獄へドウゾ。
なっかなか10とか出しませんよコイツ。永久に終わらないコレクション地獄が楽しめます。
さて、次回はいよいよ「鑑定編」の最後。
自分でもそろそろ飽きてきたよ、この話。
免責(?)
この記事はリバイバル記事です。元の記事は、とっくの昔に更新停止したDiarynoteのブログです。このNoteの内容は昔に書いた内容をコピペしてますが、ところどころ修正してたりします。で、たまに当時は書けなかったことや裏話を追記しています。まあ、基本的には手抜きです。楽なことは大事。
2023年追記
本記事は、私の認識違いがあった部分があるので、Noteに転載するにあたってあちこち修正をいたしました。ご指摘をいただいた皆様に感謝感謝。
この記事を書いたのは2006年11月なのですが、なんとそれから3年半もたった2010年6月に、以下のような刺激的なコメントをいただきました。
どうやらコレクターさんの神経を逆撫でしてしまったようです。
まあ、すでにBGSで集めているコレクターさんにとっては、かなり不愉快な記事だったんでしょうね。申し訳ない限りです。
なお、2006年に書いた文中ではBGSに批判的な立場を取っていますが、私は今も当時も、BGSの鑑定には一定の敬意はもっております。特に、PSAではカバーしきれていなかった部分をきちんと見ていること、評価の基準となる内訳を公開したことかなり画期的でした。また「PSA9とBGS9」や「PSA10とBGS10」と同じ「総合評価10」同士を比べるのなら、BGSのほうがより厳格に点数をつけています。とくにカードのセンタリングなど。
これについては、今になって私が色々と見解を述べても言い訳臭く聞こえると思うので、上記のコメントに対しての私の返信も張り付けております。
……本文以上に尖ってますね。あまりにも信者信者したコメントが来たので、面白くておもちゃにしてたんでしょうね。本当に性格悪いですからね、この"零"って生き物は。
まあ、コメントにも書いていただのですが、この時期(2010年)、BeckettはMTGの鑑定を完全に停止していました。噂によると、メインの担当者が辞めちゃって鑑定できなくなっちゃったんだってさ。
その後に鑑定は無事に再開されたのですが、この噂の真偽はともかく、安定して鑑定を提供できないというのは、システム的に問題があるように感じます。社内にSOPはなかったのでしょうかね。中止になったのはMTGだけで、ポケモンなどの鑑定はそのまま続けていたので、単純な人手不足とも考えにくいです。BGSでコレクションをしていた人は相当ハラハラしたことでしょう。少なくとも私は、いつサービスが終了になるかわからない鑑定機関でコレクションをしたいとは思いませんし、お客様にも勧められません。
なお、ツッコミが来る前に先に述べておくと、2023年である今現在となると、MTG分野でのPSA鑑定は完全に落ちぶれています。まあ、PSAがいろいろとやらかしたというのもありますが、新興のGraderがかなり出てきたことや、鑑定を再開したBGSが安定して勢力を伸ばしていったこと、eBayでの高額カード販売に「鑑定」がシステム的に組み込まれたことなどが理由となるかと思います。
PSAはスポーツ関係だとまだまだ強いんですけどね。これについては、追記という形ではなく、「鑑定機関(4)」の記事の後に、あたらしく記事をまとめることにします。