成果主義の落とし穴 No,6 「愛社精神崩壊」の真実
善意から始まった成果主義の導入が、日本の職場を予期せぬ方向へと変質させています。営業部の田中さんの事例は、その本質的な矛盾を映し出しています。成果を上げれば上げるほど次期のノルマが跳ね上がり、その悪循環に社員たちは疲弊。かつて協力的だった職場は、情報の囲い込みや最低限の仕事で済ませる風潮が広がっていきました。
さらに深刻なのは、30年にわたり愛社精神を持ち続けた製造部の斉藤さんのような「真面目な社員」が居場所を失っていく現実です。高い成果を上げることが、むしろ同僚からの反感を買う要因となっています。
コロンビア大学のカッペーリ教授は、成果主義が従業員と会社の信頼関係を根本から覆すリスクを指摘。ある中堅企業の人事部長も「成果主義で得たものは数字だけ。失ったものは信頼と誇り、そして社員たちの心だった」と語ります。日本企業の強みであった信頼と誇りの共有が、今まさに問われているのです。