診断士 豪一郎の『社長っ、共に経営を語ろう!』⑩
インターナルマーケティング
翻訳会社社長でありながら、中小企業診断士でもある豪一郎。
本日は、某勉強会での講師のお仕事である。『インターナルマーケティング』をテーマに、その解説および成功事例の紹介といった内容である。
ところで、このイベントは、講演会、ボーリング大会の2部構成である。参加者は同勉強会の新入会員およそ80名であり、主催は、同勉強会の新人勧誘委員会である。同委員会の委員長は、豪一郎が懇意にして頂いているM鋼材の専務I氏である。
講演を終え、ボーリング大会に参加中の豪一郎は、派手な着ぐるみに身を包み、汗びっしょりになって盛り上げるI氏の姿に腹を抱えて笑った。一方で、新人勧誘委員会スタッフの動き、その連携に、目を丸くしていた。これぞインターナルマーケティング、と豪一郎は感動していた。
さて、『インターナルマーケティング』とは、企業が従業員に対して行うマーケティングのことを言う。これに対し、企業が顧客に対して行う一般的なマーケティングは、エクスターナルマーケティングと呼ばれる。
美容院を例に考えると、立地が良く、居心地のいい店舗であっても、直接お客様に接する美容師のモチベーションが低く、暗い顔で接客されたらアウトである。また、美容師間に技量の差があり、来店の度に受けられるサービス内容にばらつきがあっては、けっしてリピーターは獲得できない。
『インターナルマーケティング』とは従業員へ働きかけて、質の高いサービスの提供を可能にし、それを顧客満足に繋げ、リピーターを増やし、最終的には企業の利益に繋げるという考え方に基づいている。
『インターナルマーケティング』の具体的内容は、以下の通りである。
① モチベーション(例:優秀社員の表彰)
② 能力開発(例:社外講習会への参加)
③ 標準化(例:マニュアル化、機械化)
さて、ボーリング大会に話を戻そう。イベントを盛り上げようとする、新人勧誘委員会の各スタッフのモチベーションの高さ、会場間の誘導の所作、手際の良さ。全スタッフのベクトルがピタリとあった様子に、I委員長のリーダーシップと、企業経営者としての能力の高さを感じる豪一郎であった。
『インターナルマーケティング』は、一般にサービス業で重要視される概念だが、どんな商品にもサービスの要素が含まれる。モノが商品であったとしても、何らかの付加的なサービスが伴う筈である。モノだけでは差別化が難しくなってきている今日、サービスこそが競争力の源泉と言えるのではないだろうか。それは、豪一郎の顧問先であり、VE提案を伴うべき中間財を製造販売するO製作所にも当てはまる筈だ。
マーケティングを真に機能させるには、営業担当者だけでなく、全企業活動(財務・人事・R&D・製造など)のベクトルを合わせる必要があるのだ。
さて、いよいよ来週は、O製作所の全役員との面談である。同社内に新人勧誘委員会のようなプロジェクトチームを作り、自ら率いてみたい。そんなことを考える豪一郎であった。
つづく