
診断士 豪一郎の『社長っ、共に経営を語ろう!』⑳
英会話の簡単なコツ
翻訳会社社長と中小企業診断士という二足のわらじを履く豪一郎。
タイ式マッサージ店のマッサージチェアに横たわり、同行者I氏に語り始めた。時折出てくる英単語に、マッサージ師が反応する。バンコクでは、どこでも英語で事足りる。観光客も増える筈だ。
さて、英語リスニング向上のコツは、語連結(リエゾン)と音声同化そして短縮である。日本語の発音やフレーズを流用でき、しかも日常の会話で頻繁に使われるフレーズを紹介しよう。
寿司屋ではお茶のことを「上がり」と言うが、「が」にアクセントをつけて発声すると、アメリカ人には、I got it!と聞こえる。「I(アイ)」のイが消えて、「got it」の「t」と「i」が連結し、しかも日本語の「り」と発音すれば、米語の「I got it!」の出来上がりである。「理解した、思いついた」等の意味で使われ、「I」を省略して、「Got it?」だけでも使われる。外国のお客様とのやり取りで、豪一郎が多用するフレーズである。Got it? わかりましたか?
次は、「んだ」である。東北弁で相づちを打つ時の言葉である。東北の人は、かなり難解な英語の発音も比較的簡単にやってのけると聞いたことがある。ポイントは、「んだ」に象徴される鼻音にある。
商談でも多用されるimportant(重要)という単語などに、この鼻音が使われる。発音のコツは、imporの「r」をしっかり巻き舌で発音したら、東北弁の「んだ」の「ん」だけを付けるのである。この「ん」は、否定形の単語に応用が利く。たとえば、didn’t、couldn’t、hadn’tといったところか。
最後は、副詞について話そう。英語で会話する際、より細かな感情やより詳細な状況を伝えるのに不可欠なのが副詞である。使い慣れたフレーズに、状況に応じて適切な副詞を付加するだけで、会話がより高度になるのだ。たとえば、Completely。これを付けるだけで、一歩踏み込んだ説明ができるはずだ。ところが、日本人はこの単語の発音が一般に苦手である。日本人は、コンプリートリーと「ト」を発音してしまう。アメリカ人がこの単語を自然に発音すると、コンプリーリーと「ト」が聞こえなくなってしまうのだ。この発音のコツは、簡単である。「コンプリー」まで発音したら、すぐ舌先を歯茎に強く押し付け、「リー」と発音すればいい。アメリカ人と同様に「t」を消してしまうのだ。この発音方法が応用できる単語としては、Exactly、fortunately、accuratelyなどが挙げられる。
「どう、おもしろい!?」
さっきまで興味深げに聞き入っていたI氏は、派手に寝息を立て始めた。足裏マッサージが心地良いようだ。豪一郎は、マッサージチェアに横たわったまま、脇に置いた鞄から顧問先のO製作所への『経営改善報告書』を取り出し、SWOT分析のA3用紙を拡げた。そろそろ経営の話に戻そうか、と豪一郎は呟いた。
つづく
いいなと思ったら応援しよう!
