
診断士 豪一郎の『社長っ、共に経営を語ろう!』⑲
翻訳会社社長と中小企業診断士という二足のわらじを履く豪一郎。
「豪ちゃんは、アメリカ英語やな。」
スワンナプーム国際空港の出発ロビーのベンチに腰を下ろすなり、同行者I氏はそう言った。
商売柄、英語学習の相談はよく受ける。英語は道具に過ぎない。中国、インド、インドネシア等、所変われば英語も変わる。意思疎通ができれば、それでいい。大事なのは、伝えるべき内容、知識である。
が、豪一郎が大学生であった昔々は、きれいな英語、つまり「らしい発音」を身につけたいと多くの人が考えていた。豪一郎が、米語を身に付けたのは、そんな時代だった。
今の豪一郎は、「らしい発音」に興味はない。だが、TVのCMで流れる「アー・ユー・ホワイター」にはげんなりする。その発音ではリスニングはできないだろうと感じるからだ。「らしい発音」には、リスニング力という副産物があった。
「らしい発音」のコツは、語連結(リエゾン)と音声同化そして短縮である。
まずは、古典的な例を紹介しよう。
一定の抑揚を付けて「知らんぷり」と発声すると、アメリカ人には「Shit down, please.」と聞こえる。同様に、「掘った芋いじるな」は「What time is it now?」と聞こえる。
一つずつ見ていこう。
「Shit down, please.」は、「Shit」の「t」と「down」の「d」が語連結し、しかも日本語の「ら」に変身する。この「ら」は「R」でも「L」でもなく、正に「ら」なのだ。次に、「please」の「ase」がドロンと消える。これで、米語の「Shit down, please.」になる。
「What time is it now?」はどうか。「What」の「t」と「time」の「t」が一つの「t」として発音される。次に、「time」の「me」と「is」の「i」が、また「is」の「s」と「it」の「i」が連結し、「misit」となる。更に「misit」の「t」が消える。ただし、あたかも「t」があるかのように、ここで一拍入れ、「now」の「な」のみを発音するのだ。これで、米語の「What time is it now?」になる。
ついでに、「アー・ユー・ホワイター」も見てみよう。年配の方々は、「What」、「Why」、「Where」、を「ほワット」、「ほワイ」、「ほエア」と発音する。「White」も同様に「ほワイト」と発音すれば、上記のCMの様になる。この「Wh」の発音のコツは、腹式呼吸である。ここでは、「ホッホッホッタル来い」に助けてもらおう。おなかに力を入れて、のどの奥から声を出すつもりで、「ホッホッホッタル来い」と言ってみよう。この時の「ホッ」が「Wh」の発音なのだ。
「豪ちゃん、「らしい発音」の3つのコツについて、もっと詳しく教えてよ。」I氏は、前のめりになって豪一郎の話を聞いていた。
つづく
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