マグレヴ・メトロ【ルール読み】
マグレヴ・メトロ(maglev metro)の日本語版がケンビルから2022年に発売予定。鉄道ゲームの新時代と謳われる本作がどのような構造を持っているのか、購入検討のためBGGに公開されているルールを読んでみた。
以前より日本国内でも注目されており、既に日本語によるレビューも見受けられるが、恥を忍んで自分なりに理解したことを言語化し、まとめてみる。
注意:筆者は未プレイであり、本記事は公開されているルールから得た情報の整理と推測であるため、実際のプレイ感とは異なる可能性があります。
1.ピック&デリバリー×エンジンビルド ~ロボットと旅客~
線路敷設によるネットワーク構築とピック&デリバリーをメインに据えた中量級ゲームだ。重量級鉄道ゲームに見られる競売や株を通じた経営の要素はない。
特色は、現代ユーロ的なエンジン構築と組み合わせていること。すなわち、ピック&デリバリーの成果として、アクション数を増やしたり、輸送力を高めたりと、自身の能力を強化することができる。
エンジン構築ゲームの定石として、そのゲーム展開は①エンジン構築の序盤と②得点化の終盤との二段階に分けることができ、①から②への切り替えのタイミングの見極めが、戦略的に最も重要な判断となる。マグレヴ・メトロもこのようなゲームの変遷が意図的に設計されていると見受けられる。
(1)限られた乗客コマ
輸送対象となる乗客には、主にエンジン構築に用いるロボットが3色、主に勝利点に繋がる旅客が4色あり、いずれもデリバリーの成果として個人ボード上へ配置することで、エンジン構築又は得点化をすることができる。
個人ボード上に配置できる各コマの枠数は以下のとおり。
金・銀・銅のロボット:それぞれ8体分
ロボット(どの色でも良い):8体分
ピンク・薄紫の旅客:それぞれ6人分
赤・濃紫の旅客:それぞれ5人分
旅客(どの色でも良い):9人分
しかし、4人ゲームの場合、ロボットコマは各色18体、ピンク・薄紫の旅客は各14体、赤・濃紫の旅客は各11体しかない。プレイヤー1人当たりの乗客数を単純計算すると、個人ボードは半分くらいしか埋められないことになる。
エンジン構築を完遂することは不可能と考えて良いだろう。他方で得点化に必要な旅客にも限りがあり、先取りとなる。したがって、いつまでもロボット輸送を続けることはできず、いずれ見切りをつけるという判断が必要になる。
(2)旅客輸送の解放
初期配置の乗客はエンジン構築に用いる金・銀・銅のロボットだけであり、駅に乗客を追加配置する場合にはバックドローをするところ、ゲーム開始時のバッグには金銀銅のロボットしか入っていない。
旅客輸送は個人ボード上のエンジン構築による能力解放が必要であり、プレイヤーの誰かが旅客用の駅を敷設することによって初めて対応する色の旅客コマがバッグに投入される。
旅客の輸送には色別に対応する能力の解放が必要で、対応できない旅客コマのバックドローはハズレになってしまう。すなわち、自分だけが解放済みの旅客を投入することは、他プレイヤーのバックドローのメリットを下げ得るため、早めに旅客輸送を解放しておくインセンティブがあることも考えたい。
全四色の旅客が解放されるほど、バックに含まれる旅客は増え、ロボットが追加配置される確率は低くなるため、ゲームが進むほどエンジン構築はままならなくなる。
2.最適化パズル
前述のとおり、得点を生む旅客輸送に切り替えるタイミングが最重要の判断事項になるのではないかと想像するが、その前提となるエンジン構築も、更にその前提となる線路敷設=ネットワーク構築も、そう簡単に最適化できないパズルになっており、また他プレイヤーの動向を含むゲーム展開の見極めが求められると思われる。
(1)ネットワーク構築パズル
ピックした乗客を指定の駅に運ぶという点は従来の鉄道ゲームと同様。ただし線路は同じヘクスに重ねて敷くことができるので、ネットワーク構築の面で直接のインタラクションはない。
他方でネットワーク構築を複雑なパズルにしているのが、車両は基本的に方向転換ができないということだ(能力として解放した上でアクションとして実行する必要がある。)。
また乗客は先取りなので、他プレイヤーの動向も気にしなければならない。加えてゲーム展開に応じてネットワークを再構築することもできる。直接のインタラクションは薄いものの、他プレイヤーの動向を踏まえた状況の見極めが求められる。
(2)エンジン構築パズル
ロボットコマが限られているので、どの能力を強化するか、それ自体が悩みどころになる。
加えて、特に面白いと感じたのは、個人ボード上のロボットは再配置ができること、すなわち能力をゲームの状況に応じて改変することができるということだ。例えば最初は鉄道敷設能力に注力し、ある程度ネットワークが出来上がれば輸送力にステータスを振り直すことができる。ゲーム状況によって最適なステータス配分は変わってくるだろう。このステータス調整という時間軸のあるパズルは、類例はにわかに思い浮かばず、新しいプレイ感を生むかもしれない。
3.バックドローの引き運は?
エンジン構築も得点化も、欲しい乗客コマの色は特定されてくる。しかし駅への乗客の配置はバックドローである。バックドローの引き運がどのくらいゲームに影響してくるかが気になるところだ。
引き運を紛らわせる方法として対応できる旅客の色を増やすという方法が考えられる。しかし、ボーナスカードの条件によって対応できる色を増やすことができない場合があり得るし、集中戦略をとったプレイヤーの運が良かった場合に各色に対応する戦略で敵うのか疑問の余地がある。
またドローの数を増やすことで引き運を紛らわせることもできなくはない。しかし、自分がピックアップせず駅に乗客を残せば他のプレイヤーを利する(乗客配置アクションを省略できる)ことになるため、ドローの数を自分の輸送力と乖離させるのも抵抗がある。
移動力を高め、他のプレイヤーが残した乗客を回収して回るという戦略もあり得るだろうか。しかし、この戦略も他プレイヤーの集中具合と引き運に依存するように思われる。
加えて、運を紛らわす戦略を採ることができるかどうかも、そのようなエンジンを構築することができるか、すなわち対応する色のロボットをピックできるかに依存する。
実際のプレイレビューを見ても、運要素に言及するものはチラホラ見受けられる。
「最終的な勝ち負けはかなり引き運に引きずられるのは間違いない」(ひだりの灰色)
引き運を前提としつつもコントロール感を維持できるか、または運要素の大きさが中量級ゲームとして許容できるかは、実際にプレイして判断したい。
※画像は全てBGGから引用しました。
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