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Weather Machine(ウェザーマシン)【ルール読み】

毎年恒例、重量級ボードゲーマー御用達のラセルダ&イアンオトゥール@イーグルグリフォンの新作「Weather  Machine」。11月から始まるというキックスタータープロジェクトに備え、既に公開されているルールを読み込んだので、理解したことを言語化してまとめてみました。

ひと捻り加えられたワカプレや、アクションの循環構造と適度な複雑化は健在でしたが、得点経路にプレイヤー間の競争を生むボトルネックがあり、興味深いと感じました。

注意:筆者は未プレイであり、本記事は公開されているルールや他のプレイレビューから得た情報の整理と推測であるため、実際のプレイ感とは異なる可能性があります。

1.ロケーション選択の悩ましさ

(1)Voucher(アクションポイント)が生む循環構造

このゲームにおけるプレイヤーの主な入力は科学者コマの配置(ワカプレ)である。配置先(ロケーション)はサプライ、政府、教授のラボ及び研究開発の4カ所だが、サプライはリソース獲得などの補助的な場所(サプライロケーション)であり、生産性の拡大や得点獲得に直接繋がるのは政府、教授のラボ及びR&Dの3カ所(メインロケーション)である。ルール上、同じロケーションを連続して選ぶことはできない。

メインロケーションで実行できるアクションはいずれも特定のVoucherの消費を求められる。Voucherの主な獲得方法も科学者コマの配置だが、アクションに必要なVoucherと、その場所から得られるVoucherにズレがあるため、獲得したVoucherに従ってロケーションを巡回することが基本的な立ち回りになると思われる。

すなわち、以下に示す対応関係があり、政府→教授のラボ→R&D→政府……とメインロケーションを循環するように設計されていることがわかる。

政府 = ラボVoucherを獲得 → 政府Voucherを消費
ラボ = R&D Voucherを獲得 → ラボVoucherを消費
R&D = 政府Voucherを獲得 → R&D Voucherを消費

(2)複雑化

上記のアクションの循環を基本軸としつつ、単純に循環するだけでは終わらないパズルの複雑化が仕組まれている。以下では次の5種類の複雑化要素を見ていく。

①複数アクションマスの存在
②他プレイヤーへの後追いによる獲得Voucherのボーナス
③Lativ教授の後追いによる科学Voucherの獲得
④各アクションにおける先取り要素
⑤サプライロケーション

①複数アクションマスの存在

メインロケーションには横一列に三カ所の配置マスが設けられている。このうち、一番左のマスのみ、各ロケーションで実行できる2種のアクションを両方とも行うことができる(他のマスはどちらか1つを選ばなければならない)。したがって、Voucherの持ち合わせがあれば、一番左のマスを選ぶことが効率的である。

②他プレイヤーへの後追いによる獲得Voucherのボーナス

メインロケーションには横一列に三カ所の配置場所が設けられている。自分の配置した科学者コマよりも左側に他プレイヤーの科学者コマが配置されている場合、1人につき1Voucherを追加で獲得できる。全てのマスが空いている状況でわざわざ真ん中のマスを選ぶプレイヤーはいないと思われるが、左のマスは前述のとおりダブルアクションが許されており、埋まりがちになると思われ、また各プレイヤーの優先度や後述のLativ教授の動向によっては右マスだけ空いているというオイシイ場面も起こり得るだろう。

③Lativ教授の後追いによる科学Voucherの獲得

このゲームでは、プレイヤーの他に、NPCとしてLativ教授が各ロケーションを巡回している。どこかの工場長とは違って、教授はプレイヤーに科学Voucherを与えてくれるという恩恵がある。すなわち、②と同じように、自分の配置した科学者コマよりも左側にLativ教授コマが配置されている場合、対応するVoucherの代わりに科学Voucherを獲得することができる。科学Voucherは他のVoucherの代わりに消費できるほか、主要な得点源となるブレイクスルーアクションや実験のコストとして要求される貴重なものであるため、プレイヤーは教授の後を追ってロケーションを選びたくなる。

④各アクションの先取り要素

メインロケーションのアクションはいずれも先取り要素がある。限られたスペースへのボットの配置がそれであり、生産性の拡大や得点化にとって重要な位置を占めている。ロケーションの循環を崩してでもボット配置を優先したい場面が起こり得るだろう。

⑤サプライロケーション

各アクションはVoucherだけでなく、ボットやケミカルなど要求されるリソースがある。これらは各アクションのボーナスによっても獲得できるが、必要リソースはかつかつで足りなくなると思われる。また工場の拡張、手番順の変更などのアクションもあり、戦略的に何らかのタイミングでサプライロケーションに科学者コマを配置することは不可避だろう。そしてサプライロケーションはサプライVoucherの消費が必要になるが、メインロケーションと異なり、自分の配置した科学者コマよりも左側に他プレイヤーの科学者コマがある場合、1人につき1つ追加で何らかのVoucherを消費しなければならない。

以上のように、単純にメインロケーションを循環するだけでは済まされない複雑化要素が散りばめられており、他プレイヤーや教授の動向を見つつ、ロケーション選択の効率化していかなければならない。

2.ボット配置とセットコレクションによる得点

このゲームの得点獲得の方法を整理する。得点獲得の方法は次の6種類である。

①ゲーム中のウェザーマシンの実験による得点
②ゲーム中の論文出版による得点
③ゲーム中のプロトタイプ製造による得点
④ゲーム終了時のFundingトラックの進捗に応じた得点
⑤ゲーム終了時の目標タイルの達成に応じた得点
⑥ゲーム終了時のノーベル賞獲得による得点

これらの得点に必要なアクションの関係をチャートで簡潔に図示すると以下のとおりである。

部品売却、実験準備及び研究は、各メインロケーションのVoucherを1消費するアクションであり、ボットの配置を求められる。また、ここで各ロケーションに対応する研究トークンを獲得することができる。

研究トークンには5種類の気候マークが記されており、同じ気候マークの研究トークンを各ロケーションから取り揃えることで、論文出版アクションができるようになる(例外あり。)。また、論文出版によってブレイクスルートークンを1つ使用できるようになるが、ブレイクスルートークンはブレイクスルーアクションのコストとなっている。

各アクションや得点には他にも必要なリソースやVoucherの消費その他の条件があるが、ここでは割愛する。

6つの得点方法のうち4つが研究トークンのセットコレクションを前提としている。セットコレクションの前提となるのは、Voucher1アクションのボット配置による研究トークンの先取りである。どの研究トークンも5種類の気候マークが記されているが、政府研究トークンは各種2つ、ラボ研究トークンは各種3つ、R&D研究トークンは各種2つしかない。特殊トークンによる例外を除けば気候マークを揃えることができるのは2×5種類=10セットに限られている。

TPOにより取りたい研究トークンの気候マークは絞られてくる。すなわち、各アクションではリソースなどのボーナスも獲得できるが、何が得られるかはボットの配置場所によって異なる。また、①と③は配置済みのボット数が得点に影響するため若干のマジョリティ要素もある。特に、①ウェザーマシンの実験で得点化される気候の種類は、ラウンドごとに移動するウェザーマシンの位置に対応する気候であり、この気候に対応する場所には教授もボットを置こうとする。こうしてボットの配置場所には優劣が生じ、したがって研究トークンも少なからず取り合いになると思われる。

前述したメインロケーションの循環の中で、ボット配置及び研究トークンのセットコレクションを通じた得点化への布石をどれだけ効率的に行えるかという挑戦が、このゲームの醍醐味になるだろう。

※自作したチャートを除き、画像はすべてルールブックから引用しました。

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