私はあなたと。
一曲、どうしても喋りたい曲があった。
ずっと喋りたかった。
今までうまく言葉にできなくて、何度か没にして、
それでも諦めきれなかったので。
私の大好きな曲について今日は軽く綴ってみる。
私のYouTubeでの今年聴いた音楽ランキングで一位を飾った曲。
私を狂わせた曲。「あちこちデートさん」。
本楽曲は「The VOCALOID Collection 2024 Winter」(以下ボカコレ)ルーキー部門にて堂々一位を獲得した駄菓子O型さんの楽曲で、
夏にはプロセカにも追加がなされた。
ぶっちゃけ私はその時のボカコレルーキー部門で別の楽曲を応援していて、
ボカコレ開催中は一回軽く聴いた程度に留まっていた。
でも、その時に既にどこか惹かれていて、
改めてボカコレが終幕した際に聴き直した。
何故一度スルーしたのだろう。
そう強く思えるほどに惹かれる何かがあって、
その後数ヶ月はずっと聴いていたし、カラオケでも歌ったりした。
大前提、私は切ない恋愛曲を好き好んで聴く傾向がある。
しかしこの曲の歌詞はそこまで切なくない、
というより幸せそうな二人を描いたような歌詞ですらある。
この曲の真骨頂はメロディーとMVにある。
どこか不安定なメロディーと、物語の増幅を果たすMV。
それらに触れながら少し私の解釈を話してみたい。
まだ聴いたことがないという人は先に一度聴いてからnoteを読んでくださると嬉しいです。
右上にはバッテリー。
真ん中には時計。
左上には赤い丸。きっとこれはカメラ越しだろう。
音楽に紛れ込む生活音。
朝7時。喧しい目覚ましと、食器の音。
きっと何の変哲もない、ただの日常。
この曲のボーカル、「めろう」さんも、
歌い方としてリズムとは外れた歌い方をたまにする。
まるで誰かと喋っているかのようなリズム感と音程。
まるで映画のような、
そんな雰囲気を醸し出している1番のサビ。
場所と共にめろうさんが写っている写真が登場して、
「今度はどこに行きましょうね。」と。
新幹線で固いアイスに戸惑う姿も、
カレンダーに印をつけていく様も。
共にしたい衣食住も、
夢の中ですら一緒にいられる幸せも。
きっとそこにあったろう。
本当に、そうだったろうか。
それら全てが、
撮影者である彼、というより「元カレ」の思い出の想起なのではないだろうか。
全編、カメラ越しのMV。
写真越しでしか映らない彼女。
サビの写真も、きっと思い出の数々。
彼はずっと、彼女を収めていて、
その写真の数々が、テーブルに転がってゆくのみ。
「飽き」へ変わる隙に。
「チューをして。」とすら、素直に言えなくて。
言いかけて、どこか誤魔化したような言い方になってしまって。
固いアイスですら、彼を表す隠喩に捉えられて、
アイスがとろけるのを待っても、MVでは固いまま。
きっと彼女も、引いて待ったのに来てくれなかったのだろう。
「だから」が「聞いて」に。
明確な意思表示。彼女も思うところがきっとあったのだと思う。
今まで食べたものの羅列。
今までデートで着てきたものの羅列。
そのどれもが、彼にとっての思い出。
夢の中に彼が出てきたのに、
その彼すらもどこか彼女を見ていなくて。
怒りなんてとうに消えて、縋るような彼女。
最後の最後。彼女の俯くような顔が写る写真。
私はこの曲を、元カレ側の後悔の曲だと捉えている。
きっと彼は、彼女を別に嫌いではなかった。
でも、当たり前を当たり前と信じて疑わなかった。
だから、失ってしまった。
彼女はずっと、何かを抱えていた。
不満かもしれない。怒りかもしれない。
或いは、寂しさかもしれない。
失って初めて、存在の大きさを知る。
今までの自分の過ちを知る。
最初のシーン。二人分の食器が出ている場面は、
彼の後悔からの異様な行動なのではないかと思う。
お皿の小さい、推測では彼女側の視点にいるのは、
彼が思い出を引きずりすぎて彼女分のカトラリーを取り出してその場に立ち尽くしているから。
飲み物すら注いでしまって、正気じゃない姿。
このカトラリー、断捨離するんじゃないかな。
その為に外に出たんじゃないかと思う。
Bメロのドアの音はその証。
直後に映画のフィルムのような演出が入るのは、
そこから先が思い出の追憶だけということの合図。
きっと彼は1番サビで、
「あぁ、そんなことあいつは言ってたな。」だとか、
「そういやそんなところにも言ったっけか。」なんて思い出している。
この曲の歌詞のほとんどは、きっと鍵括弧がついている。
この歌詞のほとんどは、彼女が彼の前で言った言葉で、
それらを思い出している彼の構図に過ぎない。
「太陽系にも行ってみたい!」
「いやいや、行けるわけないって。まだ誰も行ったことないんだし。」
「でも貴方となら私は行ける気がするよ。」
なんて会話をしたことでも思い出しているのではなかろうか。
日常を日常だと感じ切って、
欠伸すら出てしまうような彼の姿を、
きっと別れた後の今の彼は後悔しているのだと思う。
当たり前は、決して当たり前じゃない。
きっと彼女が一番言っていた言葉。
それも別れ際にいつも言っていたような言葉。
その言葉がずっと、彼の頭から離れてくれない。
せめてバッテリーが切れるまでは、
彼女に、彼女との思い出に浸っていたかった。
そんな苦しさ、切なさ。
このカメラもカトラリーと一緒に手離してしまうのだろうか。
忘れられない記憶に、終止符を。
という、私の解釈でした。
恋愛曲といえば、
失恋した側の切ないものが描かれることが多いが、
この曲は失恋させた側の曲だと私は解釈していて、
その点がとても私に刺さった。
大好きな曲を、私の言葉で話せてよかった。
音楽と人は、強く結びつく。
その音楽を聴く度に、誰かのことが想起される。
まるでこの曲の彼のように、ふと頭に浮かんでしまうことがある。
そんなような辛さ、苦しさ、後悔、自責。
全てを大切にして、未来に繋げていかなければならない。