#8 氷少なめでお願いします。
「アイスコーヒー、氷少なめでお願いします。」
夏が来た。
すなわち、このセリフを言う季節だ。
今年は何回言うだろう。
「氷少なめでお願いします。」
もちろん、カフェで飲み物を頼む時の話だ。
氷少なめにする理由は、単純に冷たすぎてしんどいから。
最初の一口くらいはまだ良くても、だんだんしんどくなってくる。
なんせ、店内は冷え冷えなことが多い。
とはいえ、暑い外から入ってきたときに、ホットを頼む気もしない。
結果、「アイスコーヒー、氷少なめ」が生み出される。
あと、氷が溶けて薄くなったコーヒーが嫌だというのも、ある。
別に、言うことに対してすごく抵抗があるとかではない。
店側も、ある程度慣れた感じで対応してくれることが多い。
ただ、なんとな〜く、恥ずかしい。
と、いうよりは、毎回同じことを言うことの煩わしらという感じか。
コンビニで毎回、袋は大丈夫です。と言うあの感じに近い。
ただコンビニの場合、向こうから聞いてきたときに答えればよい。
それがまた、聞かれるのを待つかこっちから言い出すかという問題もあるのだけれど…。
まあそれは置いておいて、氷少なめだ。
言うのがすごく嫌というわけでもないし、別になんともないのだ。
でも、なんか、なんか、なのだ。
そこで、氷少なめを言わないで済む方法を考えてみよう。
1.ホットコーヒーにする
キンキンに冷えたアイスコーヒーを求めないのであれば、ホットを飲めと。
実際、一理ある。
店内に長くいる場合、逆に体が冷えてきたりするので、ホットでも結果的には良いのかもしれない。
でもやっぱり、入ってきたときにホットを頼む気分にはどうしてもなれない。
なにより、夏なので、アイスコーヒーを頼みたいのだ。
2.カフェラテにする
キンキンが嫌な理由は、なんか胃にキュルルと突き刺してくる感じが嫌なのだ。しんどい。
その点カフェラテは、牛乳がコーティングしてくれている分、幾らか胃に対する刺激もまろやかだ。
ただ、牛乳は牛乳で、体にすごく合っているとも言えない。
また、本当に美味しいコーヒーはやはりブラックで頂きたい気持ちがある。
カフェラテはカフェラテで美味しいのだが、また別の飲み物なのである。
3.氷少なめプレートを首からぶら下げる
「氷少なめでお願いします。」と書かれたプレートを首からぶら下げる。
あるいは、そうプリントされたTシャツを着る。
どちらにせよ、言葉にしなくても意思を伝えることができるだろう。
ただ、あまり余裕のない店員さんだったり、すごく真面目な店員さんだった場合、こちらの無言のメッセージを汲み取ってくれないかもしれない。
その場合、無言でプレートを指差してアピールするか、結局言葉にして伝えなくてはならない。
プレートまで下げたが故に、駆け引きが複雑になってしまっては本末転倒だ。
やっぱり、「氷少なめでお願いします。」を言わずに乗り切る方法は存在しないのかもしれない。
氷少なめを求める限り、そのセリフを何度でも言う覚悟が必要というかとかもしれない。
あるいは、ひとつのお店に通い詰め、顔を覚えてもらい、「氷少なめですよね?」と店員さんに言ってもらえるようになるか。
いやその場合、やはり店員さんによってバラつきがあるし、「こんなに通っているのに全然言ってくれない!」と無駄な落ち込みを生む可能性がある。言ってくれるかと期待して間を空けたが故、言うタイミングを逃してしまう可能性だってある。
それだけは、それだけは避けたい。
やはり、道はひとつ。何度だって挫けずに、
「氷少なめでお願いします。」
を言い続けるのみだ。
たとえ無視されようとも、軽蔑されようとも、踏みつぶされようとも、後ろ指を刺されようとも、何度だって、言い続けるのだ。
その試練を潜り抜けた者だけが、アイスコーヒー氷少なめに辿り着くことができるのだ。
そう思うと、むしろ誇らしささえ、感じることができるのではないか。