#18 本屋にて

昨日。本屋で立ち読みしていた。

最初、料理系の本棚。
そしたら、40代くらいとみえる女性が同じ棚を見に来た。
なんとなく気まずくて、移動する。

次、ミシマ社の本を特集してる本棚。
そしたら、またさっきの女性が同じ棚を見にきた。
負けてたまるかと少し粘ると、向こうが先に去った。
粘り勝ちだ。

その後、他の棚も眺めていると、さっきの女性がしゃがみながら本を読んでいるのを見た。
立ち読みならぬしゃがみ読みだ。
正直、少し変な人かな?と思った。

そして、また他の棚で立ち読みしてると、さっきの女性がなんと話しかけてきた。


「あのー、ごめんなさい。変な人じゃないんです。いや変な人ですよね。変なおばさんだと思って聞いてほしいんですけど…」

びっくりしたが、どうやら悪い人ではなさそう。

「お兄さんすごく繊細そうで、さっきから読んでいる本とかも全部いいなぁって思って、彼女になる人は幸せそうだなと思って、こういう人はどんなことを考えてるのかなあと思って…」

繊細そう。嬉しいような嬉しくないようなフレーズ。ただ、どうやら悪い意味ではなさそう。


「実は私、高校生の息子がいて、いま反抗期で…。お兄さんは、反抗期とかなかったですよね…?」


なるほど。それで、僕に意見を求めてきたのか。
今考えても、なんか面白くて笑ってしまう。
たまたま本屋で立ち読みしてる人に話しかけて、反抗期の息子についての悩みを相談する。

そういうことに関する本だって沢山あるはずで、その目の前で誰とも知らぬ男に相談する。

いや、素直にすごいと思った。
そういうこと、自分は絶対にできないと…。
しかも僕はそのとき、イヤホンもしてたのに。


ただその時は、やっぱりびっくりしてて、なんと答えたらいいか。

それで、「まあ、あれやれこれやれって言われたら嫌かもしれないですね〜」

とだけ言った。


今思えば、いくらでも言えることがあるのだけれど、いざという時になると本当に言葉が出ないものだ。

しかも今回はゲリラ的すぎた。


まあでも、あまり色々話してもどうせまとまらないし、1番思うことはさっきの言葉に詰まっている気もする。

一応、その女性も
「いやあ、ほんと参考になりました〜!」
とは言ってくれた。お世辞だとしても。


それにしても、不思議な出来事だった。

僕もあの女性を見習って、本屋で立ち読みしている気になる女性に話しかけてみようかと思った。

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むた
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