#9 緊張は、「生きてる!」感じがする
面接に行った。
どこに?パン屋に。
僕は、本屋に履歴書を送ろうとして、志望理由を考えていた。
ふとパン屋の求人を探していたら、ピンときた。
そして、応募した。
面接に来てください、とメールが来た。
その3日後、それが今日であり、面接の日である。
パン屋に行くと、2階へと案内される。
すると、ご主人であろう男性が現れた。
そして、開口一番、
「飲食の経験はある?」
まず、あなた誰ですか?
そして、私を誰かわかってます?
と、思いながら、かろうじて学生時代バイトで飲食の経験はあったので、それを話す。
色々話したあと、履歴書を見せてもらえるかな、と言われる。
その後も色々話し、結果は連絡すると言われ、面接は終了した。
店主の方は、やはり職人の顔をしていた。
特に、怖いわけではない。
ただ、愛想良く笑ったりはしない。
でも不思議と、変な緊張感がない。
いや多少は、緊張しているのだけれど、なんというか、すごくフラットな感じ。
嘘がない感じだ。
無駄に愛想よくしたり媚をうるでもなく、高圧的に威圧してくるでも、ない。
割と淡々と、時々笑ったりしながら、でも芯があるような感じで、話をされる。
正直な感想は、けっこういいかも、と言う感じだ。
なんというか、威圧的な人は絶対にイヤだ。
だからといって本音を隠して愛想良くしている人も、何かの拍子でバーンと怒ったりする。それもイヤだ。
店主さんは、そのどちらでもなかった。ように感じた。
もちろん、怒ったらそれなりに怖そうではあるのだが、なんだろうな。
理不尽に怒りをぶつけたりはしてこなそうな、感じがした。
印象に残ったのは、
「やるんだったら、自分で店やりな」
としきりに言っていたこと。
ここにずっといても、給料もそんな良くないし、と。
自分が今、描いているのは。
やっぱり、自分の店は、やってみたいんです。
でもそれは必ずしも、たとえばパン屋でなくても良くて。
コーヒー屋でも、本屋でも、なんでも。
とにかく、自分が良いと思うものを、提供できる場があれば、それで良くて、
色んなものを組み合わせるのも良いなと思っているし、
たとえば知り合いの方がつくった野菜とか雑貨とか絵とか、そういうのも置けたら良いなと思うし。
ひとつのものだけをやった方がなんとなく職人っぽくてカッコ良い気もするけど、何が売れるかというのは、自分でコントロールできない部分もある。
ひとつのものを作ることにこだわりすぎて、それで売り上げがたたなくても、継続できなくなっちゃう。
だったら、色んなことをやって、その中で全体として売り上げが立って、回っていく。それでいいんじゃないか。
もちろん、自分がイヤなこととか違うと思うことは、しない。
でも自分が1番やりたいことだけではお金が回らないなら、2,3番目にやりたいことでお金も回しながら、やりたいこと全部やっちゃう。
その方が、ある意味安定で、楽しいのでは?
まあとにかく、興味のあることを片っ端からやってみるしかないね。
結局、そこに行き着く。
で、それらがどう繋がってくかは、流れに任せてみよう。
それにしても、いわゆる面接、というものはかなり久しぶりだったので、する前は少し緊張した。
その緊張は、イヤなものではなくて、なんかこう、生きてる!って感じるタイプの。
大事な試合や試験の前の、緊張、みたいな。
そういう意味での緊張って、生きるうえでは結構大切かもしれない。
リラックスは大切なんだけど、ところどころで気持ちの良い緊張があると、こう生きてる!って感じがする。
だから、新しいことをやってみる、とかもそうだね。
予想がつかないから、怖かったり、不安になったりもするけど、それは娯楽なんだね。
ジェットコースターに乗る前に、感じるあの感じ!
僕はいつからかジェットコースターをあまり怖いと思わなくなったのだけど、思えば、怖いと思ってた昔のほうが、ある意味ジェットコースターを楽しんでいたかもしれないと思う。
それくらい、怖い!って、結構な、娯楽。
とはいえ、ずーっとそんな感じでいたら疲れちゃうから、たまのスパイス的な感じで、怖い!的な感情があるといいのかも。