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なかなかハードな脱炭素社会へのみち

なかなかハードな脱炭素社会へのみち

公共建築物はちゃんとしたゼロエネルギービルにできないのはなぜか。

ここでは、ZEBと書かずに、ゼロエネルギービルと書いた。ZEBファミリーはいろんなものが多く、訳が分からないから、ちゃんとカタカナで書いてみた。

【無駄に多いZEBファミリーのカテゴリー】
基準量を1とした時の、削減率をBEI1.0という。そこからの削減量でファミリーがきまる。
ZEBは省エネしたぶん、創エネしたものをいう。これは世界共通。
以下がドメスティックルール。海外では聞いたことがない。
BEI=0が「ZEB」
BEI=0.25 のものは「nearly ZEB」
BEI=0.5のものは「ZEB ready」

ZEBoriented は大規模になると作りにくいと、規制が緩和され、10000㎡以上の場合に使われる。ホテル、病院、百貨店、集会所などBEI=0.7が要求され、事務所、学校、工場などがBEI=0.6が必要となる。なんだ。このわかりにくさは、、、。
もういろんなクラスの乱立である。筆者も訳が分からなくなり、資料をみながら書いている。
グローバルスタンダードはZEB=ゼロエネルギービルであり、それ以上でもそれ以下でもない。
現在、EUでは、ほとんど国で新築する建物(住宅以外)はゼロエネルギービルである。
なんで、日本はこんなややこしいことをいつもするのだろうか。私はただの煙に巻く作戦なのではないかと思う。

日本では、このややこしい制度のおかげでそもそもZEBなど作るのはとんでもなく難しいと思われている。また、日本でZEBを調べると、それを管理している団体があるが、これがまた、ここの申請を通すのが恐ろしく手間がかかる。

実はエネルギーまちづくり社も登録はしているが、その手続きの煩雑さに驚いた。

【2030年以降の建物のあり方】
住宅でもそうであったように、国交省の要求するレベルはどうしてこんなに低いのかというレベルである。あり方検討会で、ほとんど議論されなかったものの、2030年から建物のBEIはオリエンテッドのレベルまで、すなわち、事務所、学校、工場などはBEI=0.6、ホテル、病院、集会所などBEI=0.7 以下でないと建てられなくなった。

ある委員はだいぶ頑張ったねーとおっしゃっていたが、そうだろうか。

実はこれいつも私たちが、一般の人と行う学校の断熱改修と同じレベルである。3階の教室の天井にグラスウールを200㎜詰め、窓を内窓をつけたレベル。
啓発事業として、一般人が2、3日でできるレベルなのである。
正直、クラクラしてきた。
こんなことで、ゼロエネルギービルに届くはずがないじゃん。


本当に「脱炭素」やる気があるのかというレベルです。

【ESG投資が進む民間】
これからグローバル企業が取引する会社は、地球環境について、責任を負える企業になる。
アップルやGoogleが、自分たちもそうしているように、下請け企業にもRE100(再生可能エネルギー100%でつくること)を求めるように、多くの企業は環境に配慮したビルに配慮しないと行けなくなる。その点でLEED認証のビルとかはこれから求められるようになるだろう。
そのコストは、企業にとっては必要経費、新しい不動産のあり方が求められてくる。

【公共建築はどこから】
小学校で断熱改修のワークショップをやってきた。まずは、断熱が環境に大きく作用することを一般の人にわかってもらいたくて、やっている。
実は学校は、長期の休みがあり、使用時間も短い。無断熱だったところにエアコンが急に入って、正直無駄だらけだ。そういう点では、意味がある。また、全国で小学校で20,000校、中学校で10,000校、高校で5,000校ある。そういう意味で、始める価値はあるが本当は、24時間、そこで住んでいる人がいる福祉施設、病院から手をつけるのが、重要だ。
そもそも、日本の自治体は公共施設を持ち過ぎている。補助金で気軽につくることができるからだが、それをどうやって維持、マネジメントしていくかと観点がなさすぎる。いわゆるファシリティマネジメント(FM)的な観点である。

【公共建築の発注の仕方を工夫しよう。】
自治体が賢くなる方法は2つある。

①きちんと脱炭素(省エネルギー)できる仕様書をつくること
②ゼロエネルギービルにするシミュレーションをした下案を作り、費用を算出して規模を決めること。

以上の2点ができれば、公共建築物の脱炭素化、すなわち、ゼロエネルギービル化は現実的に進んでいく。

住宅と違って、設計事務所やゼネコンは温熱のシミュレーションをすれば良い。
ここが不思議なところで、日本の建築に関わる人たちの縦割りが結構、悪い影響を及ぼす。設備設計は、建築が決まって、それを成立させるために計算をする人になっているので、ランニングコストに責任を持たない。そうなると、怖いのはエアコンが効かなかった時のクレーム対応だけに神経質になる。結果として、余裕のある設計をして大きい機械を入れる。機械はジャストサイズで運用するのが、最も省エネルギーだからだ。
まずは、この垣根をとって、設備を合理的に減らすために、建築へのフィードバックが行われるようにしなくてはならない。
また、必須なのが、1年間でこの建物がどのくらいのエネルギーを使うかのシミュレーションをできるようにしなくてはいけない。
実は、このことはクライアントが最も気になる、エネルギーコストなのだ。維持費が不当にたかけれれば、公共施設のマネジメントは成り立たない。

そして、その1年間のシミュレーションを仕様書に書くことが求められる。
きちんとした知識を持つ営繕の専門家がいれば、それで済む話なのである。


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