FRB:2023年12月FOMC(連邦公開市場委員会)記者会見①説明部分(日本語訳)

2023年12月12日~13日にかけて実施されたFOMC(連邦公開市場委員会)後の記者会見の日本語訳です。
分量が多いため、①冒頭のパウエル議長による説明部分②質疑応答の2つに分割して掲載します。今回は①です。
(質疑応答がかなり長いため、質疑応答を更に分割する可能性をご容赦ください。)
見やすさを考慮して、日本語訳のみ掲載します。原文は、以下をご覧ください。

FRB(Fed)公式ページはこちら。
https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20231213.pdf

なお、公表文では文末を「だ・である」としましたが、記者会見は「です・ます」とします。
誤字等あれば、随時修正します。


こんにちは。私の同僚(FOMCメンバー)と私は、引き続き、アメリカ国民のため、最大雇用及び物価安定を促進するというデュアルマンデート(2つの責務)に正面から向き合っています。

年末に近づきましたので、デュアルマンデート目標に向けたこれまでの進展を振り返るべき状況です。インフレは高水準から緩和しており、失業の大幅増加には繋がっていません。これは非常に良いニュースです。しかし、インフレは依然高すぎる状況で、インフレ抑制の進展は保証されておらず、先行きのパス(経路)は不確実です。来年を見据えて、私たちはインフレの2%目標回帰に完全にコミットするとアメリカ国民に確約したいと考えています。物価安定の回復は、全てに利益をもたらす力強い労働市場を持続的なものにするために必要不可欠です。

昨年の早い時期以来、FOMCは金融政策のスタンスを極めて大きく引き締めてきました。政策金利を5.25%引き上げ、証券保有残高を迅速に削減し続けてきました。私たちの行動は、政策金利を制限的な領域に突入させており、金融引締め政策が経済活動及びインフレの下方圧力であることを意味します。また、金融引締めの全ての効果はまだ確認されていないと思われます。

本日、政策金利を据え置くこと及び証券保有残高の削減を継続することを決定しました。ここまでの、不確実性及びリスクと向き合ってきた長い道のりを踏まえ、委員会は注意深く対応を進めています。今後得られるデータ、今後の見通し及びリスクバランスの全体を基に、追加されうる金融引締めの程度及び期間を決定する予定です。金融政策について更に言及する前に、簡単に経済成長について振り返りたいと思います。

直近の経済指標からは、経済活動の伸びは第3四半期の強いペースから大幅に減速しました。しかしそれでも、GDPは、供給状況の改善及び力強い消費者需要に支えられ、今年全体で2.5%程度の推移です。夏にかけてのいくぶんかの上昇以降、主に住宅ローン金利の上昇を反映して、住宅セクターの経済活動は横ばいとなり、昨年の水準を依然十分下回っています。金利上昇は企業の設備投資の重しともなっているようです。経済見通しサマリー(SEP)では、委員会参加者はGDP成長率の評価を上方修正しましたが、来年に1.4%まで低下すると予想しています。

労働市場は依然逼迫していますが、供給及び需要環境は引き続き、よりよいバランスに近づいています。過去3か月を通して、雇用は月平均204,000件増加しており、堅調なペースではあるものの、今年の早い時期を下回るペースです。失業率は3.7%の低水準にとどまっています。堅調な雇用増加は、労働供給の増加によってもたらされてきました。労働参加率は昨年来、特に25~54歳で上昇し、移民についてはコロナ禍以前の水準まで戻りました。

名目賃金上昇は緩やかになっており、求人数は減少しました。労働需給ギャップは縮小したものの、労働需要は依然利用可能な労働供給を上回っています。FOMC参加者は、労働市場のリバランス(調整)が続き、インフレの上方圧力を緩和すると見込んでいます。SEPでの失業率見通し中央値は、今年末の3.8%から来年末の4.1%に若干上昇しています。

インフレは昨年を通して緩和しましたが、依然として2%の長期的目標を上回っています。消費者物価指数やその他のデータに基づき、総合PCEは11月までの12か月で2.6%上昇したとみられ、価格変動の大きい食品及びエネルギーを除くコアPCEは3.1%上昇したとみられます。

過去数か月のインフレ低下は歓迎しますが、インフレが目標に向かって持続的に低下していることを確信できる、より多くの証拠を確認することが必要です。

家計、企業及び予想家への幅広い調査や、金融市場から得られる指標を見ると、長期インフレ期待は十分低位に抑えられたままのようです。SEPでも明らかなように、2%インフレにたどり着く過程には時間がかかると予想しています。SEPでの見通し中央値は今年は2.8%、来年は2.4%に低下、そして2026年に2%に到達しています。

Fed(連邦準備制度理事会)の金融政策行動は、アメリカ国民のため最大雇用及び物価安定を促進するという責務によって導かれます。高インフレは、特に、食料、住宅及び交通といった必需品の高コストを賄うことが困難な人々に対して、購買力を損なうため、重大な困難を強いることを、同僚と私は強く認識しています。私たちは、高インフレによる両方の責務に対するリスクに非常に、非常に注意を向けており、インフレの2%目標への回帰に強くコミットしています。

先ほど述べたとおり、昨年の早い時期以降、政策金利を5.25%引き上げ、証券保有残高を1兆ドル超削減してきました。金融政策の引締めスタンスは、経済活動及びインフレの下方圧力です。委員会は本日の会議で、FF金利の目標レンジを5.25~5.50%に維持し、証券保有残高を大幅削減するプロセスを継続することを決定しました。

政策金利が今回の引締めサイクルのピークに達している、あるいは近い状況であろうと考える一方、経済は、パンデミック以降、多くの点で予想家にとって驚くべき状況で、2%目標に向けた進展は保証されていません。もし適切ならば、政策を更に引き締める用意があります。インフレを持続的、長期的に2%とするために十分制限的な金融政策スタンスを成し遂げるよう、また、インフレがこの目標への過程にあると確信できるまで政策を制限的に維持するよう、私たちはコミットしています。

SEPでは、FOMC参加者が、最も可能性が高いと各自が判断する先行きシナリオに基づき、FF金利の適切なパスについて各自の評価を記載しています。参加者は金利を更に引き上げることが適切だろうと考えていない一方、金利引上げの可能性も排除していません。見通しどおり経済が成長した場合、参加者の見通し中央値では、FF金利の適切な水準は2024年末に4.6%、2025年末に3.6%、2026年末に2.9%であり、長期水準(longer-term)を引き続き上回っています。

これらの見通しは、委員会の決定事項や計画ではありません。経済が見通しほど成長しなければ、金融政策のパス(経路)は最大雇用及び物価安定の目標を促進するために適切となるよう調整されるでしょう。

不確実性及びリスク、また、私たちがどこまで来たかについては、委員会は注意深く対応を進めています。今後得られるデータ、経済活動及びインフレの見通しへの示唆及びリスクバランスの全体を基に、会合ごとに決定事項を判断し続けます。長期的2%のインフレに回帰するために適切な、追加されうる金融引締めの程度及び期間を決定するにあたって、委員会は、金融引締めの累積効果、金融政策が経済活動及びインフレに影響を及ぼすタイムラグ、及び金融・経済の成長を考慮します。インフレを2%まで低下させるため、長期インフレ期待を十分低位に抑制し続けるため、私たちはコミットし続けます。物価安定の回復は、最大雇用及び長期的な物価安定を成し遂げる土台作りに必要不可欠です。

最後になりますが、私たちの行動が国中のコミュニティ、家庭、企業に影響を及ぼすことを理解しています。私たちが行う全てのことは、公の使命に捧げられます。Fedにいる私たちは、最大雇用及び物価安定目標を達成するため、可能なことは全て行います。

ありがとうございます。質問をお願いします。


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